孫子兵法家の孫子ブログ

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見るだけで孫子の兵法が分かる?

2019-2-12

 なんと、読むのではなく「見るだけ」で孫子の兵法が理解できるという本が宝島社から出た。「見るだけノート」シリーズというのが宝島社のヒット企画らしく、売れていると言う。そのシリーズの孫子兵法版「ビジネスに使える! 孫子の兵法見るだけノート」という本だ。


 なんと、その監修者が、孫子兵法家、長尾一洋。私だ。ここでは、なぜこの本の監修が私のところに来たかということについて考えてみたい。実際の意図はよく分からないが、推察するに、本書が孫子をビジネスに応用することを提案する本だからだろう。孫子のビジネス応用、企業活用とくれば、孫子兵法家だ。
 孫子は、

『我は専りて一と為り、敵は分かれて十と為らば、是れ、十を以て其の一を攻むるなり。我寡なくして敵衆きも、能く寡を以て衆を撃つ者は、則ち吾が与に戦う所の者約なればなり。』

 と教えてくれている。自軍は、一点に兵力を集中させ、一方の敵軍は、分散して10隊に分かれたとすると、敵の10倍の兵力(敵が自軍の10分の1の兵力)をもって攻めることができる。我が軍の兵力が全体としては少なく、敵軍の方が多かったとしても、その小兵力で大兵力を打ち破ることができるのは、個々の戦闘において、兵力を集約させ、集中して敵に当たるからである、と言うのだ。
 孫子の兵法を解説する人は他にもたくさんいる。だが、そうした人たちは単に古典としての孫子を現代語訳したり、まさに戦争のための戦略として解説したりで、ビジネスに結び付くものでなかったり、孫子だけでなく論語や老子や韓非子なども解説したりして力が分散してしまっている。孫子のビジネス応用にフォーカスした人は私しかいないのだ。いや、知らないだけでいるかもしれないが少ないことは間違いない。だからこうした依頼が来る。戦わずして勝てる。
 そして、今回は執筆したわけではなく監修だ。書かなくて良い。楽チンだ。要するに、編集スタッフの力を借りて本が出来上がり、孫子の兵法を世に広めるという孫子兵法家の目的が果たされたことになる。
 孫子は、

『智将は務めて敵に食む。敵の一鍾を食むは、吾が二十鍾に当る。』

 と、敵のリソースを利用することを勧めている。敵地に遠征する際に、優れた将軍は、敵地での食料調達を考えるものだと言うのだ。敵の穀物を一鍾食べることは、自国から運んだ二十鍾に相当するくらい価値があると説いた。
 「ビジネスに使える! 孫子の兵法見るだけノート」の監修を引き受けるということは、他の孫子専門家(要するに孫子兵法家の敵)が、この本を監修する機会を奪うことでもある。自分のリソースはあまり使わずに本を出し、それによって敵が進出、侵攻してくるのを防ぐという意味もあるわけだ。そもそも、宝島社と言えば、私の「マンガでわかる! 孫子式 戦略思考」を出してくれている出版社だ。こちらはマンガだが、孫子の入門書という点では同じ分野と言える。競合する領域に他の孫子専門家を入り込ませてはいけない。
 だから孫子は、

『善く戦う者は、人を致して人に致されず。』

 と言うのだろう。戦上手は、敵を思うがままに動かして、決して自分が敵の思うままに動かされるようなことはしないものだと。
 だが、見方を変えれば、監修ということは、本書の編集チームに私の名前がうまく使われてしまったとも言えるわけで、孫子の兵法は奥深い。何しろ本書を作るには孫子の勉強もしないといけないから編集チームも孫子の使い手だ。さて、これはどちらが「人を致して」どちらが「人に致されている」のか・・・。ふふふ、「兵とは詭道なり」。

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