孫子の兵法

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孫子×DX DXとは詭道なり

2024-02-17

 DXに取り組んでみよう、進めて行こうと思った時に、多くの企業は「あるべき論の壁」「常識の壁」にぶち当たる。特に、デジタル人材もいない中小企業は、世の多くのDX論、DX本、DXコンサルタントの説く、画餅のような空理空論にやられてしまうことになる。
 DXの壁とは、IT系のコンサルタントやシステム事業者(要するに、DXの専門家を名乗っている人たち)が説く、DX成功のためにはこれが必要だと言う3つの条件を真に受け、信じてしまうことである。
 DX専門家曰く、DXを成功に導くためには、
1.経営者のコミットメント(決断と積極的関与)
2.経営者が示すデジタル活用した将来ビジョン
3.デジタル人材(DX推進リーダー)の確保
が必要だそうだ。それができたら苦労しないよ、という話である。こんなことが条件だと言われたら、大企業でもほとんどがチーン!となってお終いだ。
 そうしてガッカリさせておいて、「だからこそ弊社がお手伝いするのです」「私どものコンサルタントが支援します」「何でしたらデジタル人材の派遣も出来ます」と売り込む。そのために、敢えて出来もしないことを言っているのではないかと思う。たぶん。。。そうとしか思えないほど、絵空事だ。
 まず、1の経営者のコミットメントについては、そもそも経営者がDXに取り組もうと意思決定しないと事は進まないので、一応決断はするかもしれないが、まだ自社のDXによって何がどうなるかも分からないのだから半信半疑に決まっているし、積極的に関与することが余計な口出しになったら、却って邪魔ですらあったりもする。
 そして、2だが、経営者がデジタルに詳しくなく(普通はそうだ)、DXの成果にも半信半疑な状態で、デジタル活用した将来ビジョンなど描けるはずがない。まだ分からないのだ。そんなに簡単にビジョンが描けるようなら、他社も同じようなことをやって、結局大したことにはならない。この辺りは、コンサル会社が事例を持って来て「お任せください」とか言いそうな部分だ。事例の真似をするだけだから横並びにしかならない。
 最後に決定的なのが、3のデジタル人材の確保。既に、IT業界やコンサル業界のせいでデジタル人材は引く手あまたになっており、一般の会社にそう簡単にデジタル人材が来るわけがない。ましてや中小企業であれば、可能性はほぼゼロで、もし仮にまかり間違ってデジタル人材が入社したとしても、「ITに詳しい便利屋さん」扱いされて、PCセッティングなどの雑用をさせられ、まともなデジタル人材なら、幻滅して辞めて行くだろう。何しろ自身のデジタル技術を発揮する出番がないのだから。
 この3つの条件は、大企業でもクリアするのが難しいし、日本企業の99.7%を占める中小企業ではほぼ不可能だ。だからこんなことが書いてある本を読んだり、セミナーを聞いたりしたら「うちみたいな中小には無理だな」「うちにはデジタルが分かる人材などいないから出来そうにない」と端から諦めてしまうことになる。
 こんな空理空論を真に受けて、「あるべき論の壁」「常識の壁」で意気消沈してはならない。こんなことは出来ていなくて当然であり、デジタル人材などいなくてもDXは進められる。ちょっとシステムに詳しいといった程度の中途半端なデジタル人材などいない方がマシなくらいだ。だから、デジタル人材がいない中小企業の人も、安心して「孫子×DX」の勉強をしてもらいたい。孫子の知恵でDXを実現すればいいのだ。
 孫子計篇にはこんな教えがある。
<計 篇>
 『兵とは詭道なり。故に、能なるも之に不能を示し、用いて之に用いざるを示す。』
◆現代語訳
 「戦争とは、相手を欺く行為である。したがって、戦闘能力があってもないように見せかけ、ある作戦を用いようとしている時には、その作戦を取らないように見せかける。」
◆孫子DX解釈
⇒自信がなくても自信があるように振る舞い、スキルが足りなくても十分なように見せかけよ。デジタル人材がいない中小企業のDXは一筋縄では成功しない詭道なり。

 何でも正攻法で行けばいいというものではないということ。常識とされているものを疑ってみることが重要なのだ。
 経営者は、DXの必要性さえ理解納得していれば、細かいことはよく分からなくても、とにかく「前に進め!」と号令すべし。半信半疑でもいいから、とにかく着手して、試行錯誤しながら自社のビジョンを描いていけば良い。DXだからと特別なことのように考えずに、普通に自社の将来像を描いてみれば良い。5年後10年後を考えれば自ずとデジタルの要素が入って来ることになる。時代の流れがそうなっているのだから。
 その時、社員に対して、自信がなくても自信があるように言っておこう。デジタル人材がいなくても大丈夫だと言い切ろう。社内にデジタル人材はいないのだから、社員もどうせ分かっていない。ここで大切なことは、カラ元気でもいいから将来への希望を示すことだ。
 敵を欺くにはまず味方からと言うではないか。DXを進めるためには、まず社内を良い意味で欺いて、前向きにさせること。デジタル人材もいない中小企業が、綺麗事の理想論を語っていても何の解決にもならない。
 「DXとは詭道なり」なのだ。

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