孫子の兵法

孫子
 言わずと知れた、最古にして最強の兵法、『孫子』。2500年も前の、中国春秋時代に呉の兵法家、孫武によって著された兵法をただ漢文の古典として読むのではなく、現代の企業経営や組織運営、ビジネス、仕事の仕方に置き換え、応用し、実践のための智恵として活用したい。これが孫子兵法家を名乗る私の使命感です。
 この孫子ブログ「経営風林火山」は、2500年もの間、洋の東西を問わず、評価され続けて来た珠玉の教え、孫子の兵法を21世紀に生きる智恵としてどう解釈すべきかを、その時々のトピックに絡めてお伝えするものであり、孫子兵法家、長尾一洋の独自解釈も思い切って盛り込んだブログです。
 長尾一洋オフィシャルサイトには、「ブログではない雑記」というものもあって、そちらではブログを書きたくないから雑記にしたと書いているのですが、その当時からはブログの位置づけも大きく変わり、SNSが全盛の今となっては、ブログだろうと雑記だろうと似たようなもので、あまりそこにこだわるのもどうかということで、こちらではブログとしております。そのため、雑記と同様に、コメントなどの機能はありません。お許しください。
 
孫子
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敵を侮ってはならない

2022-08-16

 ビジネスでも戦争でも同じだろうが、つい自社びいき、自国びいきで、「うちの会社があんな会社に負けるわけがない」「我が国があの国に負けるはずがない」などと過信と勢いで敵を軽く見がちなことがある。その方が威勢が良く、味方を鼓舞するには適当であったりもする。リーダーが戦う前から「いや、敵は強いぞ、こちらは負けそうだぞ」と部下に言っているようでは、わざわざ戦意喪失させるようなものだ。
 また、実際に自社の方が強くて大きいというケースもある。売上も社員数もこちらが優位だとなったら、それこそ「あんな会社に負けるはずがない」と考えておかしくないだろう。だが、孫子は、それでも決して敵を侮ってはならないと説いている。

『兵は多きを益ありとするに非ざるなり。惟だ武進すること無く、力を併せて敵を料らば、以て人を取るに足らんのみ。夫れ惟だ慮り無くして敵を易る者は、必ず人に擒にせらる。』

 孫子は、戦争においては、兵員が多ければ良いというものではないと断言している。彼我の戦力比較をシビアに行い、勝てない戦はしてはならないというのが孫子の基本であるが、ここでは兵力が勝っていればいいというものではないと説いているのだ。兵力を過信して猛進するようなことをしないのは当然だが、戦力を集中させ、敵情を読んで戦えば、仮に兵力が小さくても敵を屈服させるに充分であると言うのだ。そして、そもそも彼我の戦力分析もせずよく考えもしないで敵を侮り軽はずみに動くようでは、敵の捕虜にされるのが落ちであると念押しもしている。
 敵に対して怖気づいたり、とても勝てそうにないからと戦うことを諦めてしまうようなことでは、国王、将軍、リーダーは務まらないが、虚勢を張らず、常に謙虚に客観的な兵力分析を行い、戦略を練って、ここぞというところに戦力を集中させて戦えば、より強大な敵にも勝てるというのだから、弱小企業にも希望がある。
 「あんな会社、大したことないな」と高を括っていた新興企業が、あれよあれよという間に自社を追い越して成長して行ったということはないだろうか。私はある(笑)。孫子兵法家なのに、ある・・・。という反省を込めて、改めてこの節をお伝えしておく。孫子兵法、行軍篇の一節である。
 決して、敵を侮らないようにしよう。

情報やデータを活かさないのは不仁

2022-02-01

 新型コロナウイルスによるパンデミックが起こってからもう丸2年が過ぎているのに、相変わらず、人流抑制、外出自粛、接触回避を唱え、飲食店の営業を制限し続けているのは、いかがなものかと思う。このブログでもコロナ禍について何度か取り上げて来たが、最初は未知のウイルスが出現して、とりあえず接触を避ける、経済を止めてでも感染拡大を防ぐという対応も仕方なかっただろう。しかし、この2年間、世界中で知見が溜まり、治験が進み、データが集まり、症例が報告されて来たはずだ。「これさえ打てば日常に戻れる」と太鼓判を押していたワクチン接種も進んだではないか。感染拡大の波もすでに第6波だ。ウイルスは変異によって感染力が上がっても弱毒化していることは明らかだし、過去5回の波からいろいろと学んだこともあるだろう。
 にもかかわらず、結局やっているのは、営業自粛、テレワーク推奨、県外への移動制限・・・。そして、それに伴う巨額の補償。毎度、同じことの繰り返し・・・。
 国民を守るためにと言いながら、経済活動にダメージを与えつつ、膨大な支出を続けて、本当に国民のためになるのだろうか。甚だ疑問である。
 孫子は、戦争における膨大な出費と国民の疲弊に対してリーダーがどう向き合うべきかを説いている。

『孫子曰く、凡そ師を興すこと十万、師を出だすこと千里なれば、百姓の費、公家の奉、日に千金を費やし、内外騒動して、道路に怠れ、事を操るを得ざる者、七十万家。相守ること数年、以て一日の勝を争う。而るに爵禄百金を愛みて、敵の情を知らざる者は、不仁の至りなり。民の将に非ざるなり。主の佐に非ざるなり。勝の主に非ざるなり。』

 孫子が言うには、およそ10万の兵を集め、千里もの距離を遠征させるとなれば、民衆の出費や国による戦費は、一日にして千金をも費やすほどになり、官民挙げての騒ぎとなって、補給路の確保と使役に消耗し、農事に専念できない家が七十万戸にも達する。こうした中で数年にも及ぶ持久戦によって戦費を浪費しながら、勝敗を決する最後の一日に備えることがある。(数年にも及ぶ戦争準備が、たった一日の決戦によって成否を分ける)にもかかわらず、間諜に褒賞や地位を与えることを惜しんで、敵の動きをつかもうとしない者は、兵士や人民に対する思いやりに欠けており、リーダー失格だと言うのだ。そんなことではとても人民を率いる将軍とは言えず、君主の補佐役とも言えず、勝利の主体者ともなり得ないぞ、と。
 ここで大切なことは、数年に及ぶ緊急事態による国民の苦労と多大な出費を止めるためには、情報やデータが必要だということだ。そのために間諜を使う。今のコロナ禍においては感染症の専門家や厚労省だと考えれば良いだろう。だが、この専門家が機能していない。2年間の知見が活かされていない。仮に専門家が正しい提言をしているなら、それを活かさないのはやはりリーダーの責任だ。適切な専門家を使い、正しい判断をしなければならない。それが出来なければ、国民や現場で戦う兵士に多大な犠牲を強いることになる。まさに今のコロナ禍だ。
 そんなことが2500年前にもあったのだろう。孫子は続けてこう言った。

『故に明主・賢将の動きて人に勝ち、成功の衆に出づる所以の者は先知なり。先知なる者は、鬼神に取る可からず。事に象る可からず。度に験す可からず。必ず人に取りて敵の情を知る者なり。』

 優れたリーダーが勝利を収めるのは、如何に早く正確な情報を掴むかという「先知」ができているからだと。それは、鬼神に頼ったりして実現できるものではなく、祈祷や過去の経験で知ることができるものでもなく、天体の動きや自然の法則によってつかむわけでもない。必ず人間が直接動いて情報をつかむことによってのみ獲得できるものだと、孫子は教えてくれている。
 祈ったり、お願いしたり、現場の頑張りや国民の忍耐に頼るのではなく、プロを使って、正しい情報やデータを掴むべきである。リーダーは、それを活かして合理的に判断すべきなのであって、過去の踏襲や選挙のための人気取りや世間の空気に流されるようでは、結局そのツケを国民に払わせることになる。国民に対する「不仁の至り」である。
 そんなことは分かった上で、裏に狙いや陰謀があって敢えてやっているのかもしれないが、それはそれでまた「不仁の至り」だろう。データに基づかない情緒的な判断や人の恐怖心に訴える煽り誘導は、そろそろ終わりにしていただきたい。

電帳法対応でも孫子は水に象る

2021-10-28

 令和3年度の税制改正によって、電子帳簿保存法(略称:電帳法 正式名称:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律)が改正され、令和4年1月1日に改正電子帳簿保存法が施行される。現状、電子データで会計帳簿などを電磁的記録によって保存しようとすると、事前承認が必要で、紙の書類をスキャンして保存する際のルールも厳しく、おまけにコストがかかるタイムスタンプを付与しなければならないといった要件があって、電帳法に対応する企業はごく少数に限られている。だが、令和4年からは、大幅に要件が緩和され、タイムスタンプを付与しなくても良い方法が認められるようになるのだが、同時に一部が義務化される。
 これまでは「やりたかったらやっていいよ」というものだったのに、これからは「必ず対応せよ」というものになるわけで、電帳法に関わる業務をシステム化する事業者は法的に義務化され確実に拡大するマーケットを前にしていきり立って「電帳法対応」を訴えている。
 私、孫子兵法家が経営するNIコンサルティングでも、月額360円で経営を変えるグループウェア「NI Collabo 360」の中に、経費精算機能、支払管理(請求書管理)機能を標準装備している関係上、この電帳法改正に対応せざるを得なくなり、「電帳法対応」を小さな声で訴えている。なぜなら標準装備なので、電帳法対応しても1円も売上は増えないから(笑)。むしろ、1月からはこれまで税別で360円だった月額を税込360円に値下げするから、機能は増えて値段は下がる・・・。それはさておき・・・
 なぜ、これまで電帳法に対応して来なかったのに今回の改正で対応することにしたのかと言うと、これまではあまりにも運用ルールが煩雑でタイムスタンプのコストもかかって、証憑数の多い大企業ならまだしも中堅・中小企業では対応するメリットがなかったから。それが改正されて、ルールが緩和されタイムスタンプを付与しなくてもスキャンして原本の紙を廃棄することが出来るようになるというので、対応するわけだ。
 従って、「電帳法対応」はするが、タイムスタンプは付与しない。しかし、そもそも経理システムや経費精算などの専門システムを販売している事業者にはタイムスタンプがあり、その分当然コストは高くなるが「電帳法対応」を分かりやすくアピールできる。
 私は、せっかくタイムスタンプなしでも「電帳法対応」出来るように法改正されたのだから、そこを利用してより低コストで「電帳法対応」できるようにするべきだと思うが、派手さがない・・・。地味である。他社は、分かりやすくアピールし、TVCMなどもバンバンやっていると言うのに・・・。これではせっかくの善意が踏みにじられる。
そこで、孫子の兵法だ。前置きが長くなったが、ここからが本番。孫子は、

『兵の形は水に象る。水の行は高きを避けて下きに走る。兵の勝は実を避けて虚を撃つ。』

 と言った。軍の形は水に喩えることができる。水は高いところを避けて、低いところへと流れるが、同様に、軍も敵の兵力が充実した「実」の地を避けて、手薄になっている「虚」の地を攻めることで勝利を得るものだという教えだ。
 「電帳法対応」の領収書や請求書をスキャナ保存しタイムスタンプを付与するといった見映えがして分かりやすい領域には、多数の競合がひしめき合っている。これが孫子で言うところの高い場所であり、「実」である。そこを避けて、低い場所、「虚」を撃つのが孫子兵法家だ。ではその「虚」はどこにあるのか?
 見積書の発行及びその控えデータの保存である。
 どういうことか説明しよう。会計システムベンダーや経費精算や請求書処理業者が集まりひしめき合っているのは、電帳法における「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」という区分、領域だ。この領域が分かりやすいし電帳法の中心と言っても良いのだが、この2つの区分は義務化されていない。紙のままで保管しても良い領域である。今回の改正で義務化されたのは、「電子取引」である。国税庁によると電子取引とは、「取引情報(取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいいます。)の授受を電磁的方式により行う取引をいい(電子帳簿保存法2六)、いわゆるEDI取引、インターネット等による取引、電子メールにより取引情報を授受する取引(添付ファイルによる場合を含みます。)、インターネット上にサイトを設け、そのサイトを通じて取引情報を授受する取引等が含まれます。」とされていて、要するに紙という媒体を介さずにWEB上のサイトやメールでやり取りされる取引がすべて「電子取引」となる。
 この領域は、対象となる書類や証憑が特定されておらず何が来るか分からないので、特定の処理パッケージシステムがない。だから、とにかく何でも保管しますというサービスしかないのだ。ここが義務化されたのに・・・。
 さらにその中でも、扱いに困るのが、見積書の発行及びその控えデータの保存である。受け取る見積書は支払に回すから経理部門に行くが、発行する見積書は営業部、それも個々の営業担当者のPCに控えデータが入ったままだったりするはずだ。7~8割の企業では、Excel見積書が横行している。担当者がExcelで作成し、ロクに承認も経ずに、PDF化してメール添付で客先に提出したりしている。これが立派な「電子取引」に当たる。
 このExcelで作った見積書がどこにいつ提出されたかを経理部門で把握することが出来るだろうか?全体の総件数を把握することも出来ないから、一部が集まったとしてもヌケモレがどれだけあるかも分からない。そして、この領域はExcelが幅を利かせていて、一部、会計システムや販売管理などに付随的に作られた見積作成システム以外には専門システム会社はいないのだ。すなわち、敵がいない「虚」なのだ。
 孫子の兵法を駆使するならば、当然この「虚」を撃つべきである。孫子兵法家は、ここにSales Quote Assistant(SQA)という見積書作成支援システムを用意している。電帳法対応大戦争の血みどろの戦場に、ポッカリと空いた穴、敵がいない「虚」に狙いを定めて攻め込む武器が見積書作成支援システムなのだ。
 Excel見積書には、義務化以前に多くの問題があるから、電帳法対応を機にSales Quote Assistant(SQA)を導入して見積業務改革をすると良いだろう。「電帳法対応」と声高に訴えたりしないので、WEBサイトで研究していただきたい。

営業風林火山陰雷

2021-08-17

 孫子の兵法で1、2を争う有名な一節に「風林火山」がある。日本の戦国時代、無敵を誇った武田信玄が旗印として掲げたことで知られる一節だ。だが、元の孫子では「風林火山」で終わらず、「陰雷」が続く。

『其の疾きこと風の如く、其の徐なること林の如く、侵掠すること火の如く、動かざること山の如く、知り難きこと陰の如く、動くこと雷震の如し。』

 という一節である。風林火山部分は良く知られているので端折るが、続けて「陰のように実態を表に見せないことによって敵に味方の情報を与えず、動く時には雷のように突如として機動しなければならない。」と教えてくれている。「風林火山」には続きがあったわけだ。孫子に詳しい人には当り前のことだけれども、孫子に馴染みが無ければ、「風林火山」は聞いたことがあっても、それに続きがあることは知らないのではないか。
 といったことから、孫子の兵法を現代のビジネスに活かす孫子兵法家としては、「風林火山」が分かりやすいので、それを営業活動に活かす「営業風林火山」というものを提唱してきた。
「営業の速きこと風の如く、傾聴すること林の如く、提案すること火の如く、値引かざること山の如し。」
 という孫子の現代応用編だ。
 簡単に説明しておくと、まず、営業で大切なのがスピード。速きこと風の如く、何事も速くやること。顧客は忙しいのだ。こちらも暇な客を相手にしている暇はない。次に顧客の話を聴く。静かに聴く。素直に聴く。喋り過ぎない。気持ちよく話してもらうために、まるで森林浴でもしてもらっているかのような心地よい傾聴姿勢が必要だ。そして、顧客の話を聴き、相手の事情を理解したら、いざ提案である。顧客を理解してこそ提案が許されるわけだが、提案する時には、火の如く熱い提案をしたい。「お客様のためにお役に立つ」という熱い思いで提案せよ。しかし、いくら顧客の立場に立つ、顧客の心情を理解すると言っても、過度な値引きを要求されたり、過剰なサービスを強要されたりする場合には、値引かざること山の如し。ガンとして動いてはならない。値引きとは、最も安易で、最も簡単な販促方法であって、一度やり始めるとそこから抜け出せなくなる、というものだ。
 従来は、これで良かったし、「風林火山」で分かりやすかったのだが、この度、ラジオの番組でリクエストがあって、「陰雷」も加えてみた。それが「営業風林火山陰雷」だ。こうなった。
「営業の速きこと風の如く、傾聴すること林の如く、提案すること火の如く、値引かざること山の如く、コンタクトレスで陰の如く、イザ訪問すること雷震の如し。」
 ちょっと長くなって、キレがない感じにはなるが、「陰雷」部分を解説しておきたい。
 新型コロナウイルスの蔓延によって、営業活動には非接触の「コンタクトレス・アプローチ」が求められている。会えない難しさはあるが、逆に、リモートで、オンラインで、Zoomで、世界中に神出鬼没。まるで陰のように、実体はいないけれどもそこにいるという状態で営業活動が出来る。詳しくは拙著「コンタクトレス・アプローチ」をお読みいただきたいが、コロナ禍が長引いていつ終わるとも知れない中で必須となる営業アプローチだ。コロナが消えてもまた新しいウイルスが出て来る可能性もあるし、営業活動の敵である移動時間を劇的に減らせるメリットもあり「コンタクトレス・アプローチ」は今後も定着するだろう。
 だが、一切会えない、一切訪問しない、リモート限定となっては「インサイドセールス」であって、重要商談、高額商談はまとめ切れないし、「最後は会って話をしたい」「一度はどんな人か会っておきたい」と言われるシーンで対応出来なくなる。そこでイザという時にはリアル訪問も辞さない姿勢が必要となる。もちろん、それはイザという時であって、呼ばれて飛び出てホイホイ参上しますと言っていては効率が落ちる。そこでピンポイントで、狙いすまして、ここぞという時に、まるで雷が落ちるような勢いで一点集中で訪問すべし。
 これが「営業風林火山陰雷」だ。「営業風林火山」の進化バージョン、アップグレードだと考えて欲しい。2500年前の孫子の兵法を現代に応用する孫子兵法家も、さらにその時代の変化を受けて改善し、進化していると捉えていただくと良いだろう。

「孫子兵法家」商標登録

2021-05-14

 今から2500年前、紀元前に書かれた孫子の兵法を現代のビジネス、企業経営に応用しコンサルティングする人。それが孫子兵法家だ。「孫子研究家」でもなく「兵法研究者」でもなく「中国古典学者」でもない。研究したり解釈したりするだけでなく、孫子の兵法をビジネスの実戦に応用して成果を出す実務家であり実践者である人間を「孫子兵法家」と呼ぶ。
 誰が定義し、命名したのか?
 私だ。
 長年の経営コンサルティング経験と自社の経営実務、そして孫子の研究と実践を経た上で、海音寺潮五郎氏の小説「孫子」の中に、「兵学者」と「兵法家」の違いについて述べた一節を見つけて、自ら定義し命名した。その一節を引用しておこう。
「兵学者とは古来の兵法をよく誦んじ、古今の戦史をよく知り、兵制の変遷などを研究している者です。しかし、単にそれだけの人々です。兵法家は、機に臨み、変に応じて、最も適当した戦術の案出が出来るなら、古人の兵法など知らんでもよいのです。もちろん、古人の兵法を知っていてもよろしい、古今の戦史に通じていてもかまわない。ただ、それを実際に応用するにあたっては、独自の機略をもって自在の運用をしなければならないのです。それが兵法家です。」
 紀元前に書かれた古典の意味を知り、漢文を解釈し、日本語に訳すだけなら、私よりも詳しい人はいくらでもいるだろうし、中国文学者や古典研究家として立派な成果を挙げておられる方も少なくないだろう。だが、孫子兵法家である私はそんなところで戦ってはいない。彼らは立派な「兵学者」ではあっても、戦争をしているわけでもないだろう。
 私も戦争をしているわけではないが、ビジネス戦争をしている。日々自社の経営者として戦い、多くのクライアント企業の戦い方を指南している。そこに孫子の兵法を適用し応用し実践している。この孫子の兵法をビジネスの実戦に応用して成果を出すという点においては、誰にも負けない自負がある。だから「孫子兵法家」を名乗った。
 「勝手に決めるな」「誰がそれを認めたのか?」「自称に過ぎないだろう」と文句を言いたい人もいるだろう。では、聞くが、「孫子兵法家協会」という組織があり、「孫子兵法家認定試験」があって、その合格者が何千人、何万人もいたら「孫子兵法家」として認めるのか? 競合する同業者が何千何万といて差別化も出来ないようなことをして孫子の兵法を実践する人と呼べるとでも思うのか? 他人が決めた枠組みや定義に沿って、他人に認められないと自分を定義できないとしたら? そんなヤツは「孫子読みの孫子知らず」でしかない。
 孫子は、

『百戦百勝は、善の善なる者に非るなり。戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり。』

 と言い、

『善く戦う者は、人を致して人に致されず。』

 とも言っている。
 戦わずして勝つのが最善であり、相手に動かされるのではなくこちらの意図で相手を動かすのが孫子の兵法である。独自のカテゴリーを作り、独自の土俵で一人横綱になるのが、「孫子兵法家」としての正しい姿である。
 試しに、ネット検索で「孫子兵法家」を検索してみて欲しい。私のサイトがズラッと出て来るはずだ。これが戦わずに勝つ独自領域の作り方だ。この事実、この結果こそが、私が孫子の兵法を現代に応用する「孫子兵法家」である証明である。
 今回、そのダメ押しをするために、「孫子兵法家」を商標登録した。これがその証の商標登録証だ。

「孫子兵法家」商標登録

 独自領域を作って、それに名前をつけたら、商標や特許で法的にも保護して無駄な戦いを避けるべし。実体として負けていなくても、他社に商標を取られて権利侵害を訴えられたら、余計な戦いをしなければならなくなる。それを避ける知的財産権の保護も孫子兵法の実践である。
 ちなみに、孫子の兵法を独占する気もないし、孫子の兵法を現代のビジネスに応用することは非常に有用なので多くの人に実践してもらいたいと思っているから、「孫子兵法家」の使用を制限するつもりはない。是非使ってもらい、孫子兵法の普及啓蒙に取り組んでもらいたい。但し、「孫子兵法家」がNIコンサルティングの登録商標である旨の表記を忘れずに。勝手な乱用をしていると、いつ「孫子兵法家」から商標権の侵害で攻撃されるか分からないから気を付けてね・・・。無駄な戦いをするつもりはないけれども、やる時は徹底的にやるよ(笑)。

スプリンクラーで水攻めせよ

2021-04-15

 孫子の最後には火攻篇があり、火攻めのやり方について書かれている。わざわざ一篇を使って解説するくらいだから、火攻めを重要視していることは間違いないが、一方で水攻めや水そのものについて言及している箇所も孫子には多い。たとえば「激水の疾くして、石を漂わすに至る者は勢なり。」や「兵の形は水に象る。」もそうだし、「積水の計」などもある。火攻篇でも孫子は、

『火を以て攻を佐くる者は明なり。水を以て攻を佐くる者は強なり。水は以て絶つ可きも、以て奪う可からず。』

 として、水攻めにも言及している。火を攻撃の助けとするのは、明晰な頭脳や智恵であり、水を攻撃の助けとするのは、強大な兵力による。水攻めは敵を分断し孤立させることはできるが、敵の戦力を奪い去ることはできないという教えだ。
 水攻めは、敵の戦力を奪い去ることまではできなくても、分断させ、孤立させることはできるものであり、要は使いようである。そこでのポイントは、強大な兵力があること。これはダムや堰を作ったり壊したりする土木工事力が必要だと考えれば良い。
 さて、ここで、この土木工事力を現代のビジネスに置き換えた時にどう考えるかが問題だ。単に企業規模の差と考えてしまっては、間違いではないけれども、工夫の余地もなくなる。規模が大きければ勝つ、で終わり。それよりも、ダムの大きさと考えるべきである。ダムとはもちろん顧客のダム。データベースだ。これなら企業規模が小さくても工夫次第で大きくできる。
 顧客のダムは大きければ大きいほど良い。顧客データベースなのだから当然だ。企業規模、社員数の大きさに伴ってダムが大きいのは当り前だが、社員数も少ないのにダムを大きくできた場合には価値が高いが、次の問題が生じる。ダム湖が大きくなり、その中には魚(顧客)がたくさん泳いでいる。しかし、その魚に餌をやる人間が少なくて手が回らない、という問題だ。魚は放っておくと死んでしまう。放置顧客は離脱するということだ。そこで、少ない人数で大きなダムのお守りをするには、スプリンクラーを使って一気に撒き餌をすることを考える。
 そのための武器が、Approach DAMであり、メール配信のSprinklerオプションである。まさに孫子の兵法「積水の計」を実践するための武器であり、規模がモノを言う水攻めを効率的に行うために孫子兵法家が開発したシステムである。
 コロナ禍もあって、多くの企業が、新規の顧客開拓に苦労している。せっかく新規客と商談できても、すべてを受注・契約に持ち込めるわけではない。貴重な顧客をダムに貯めよう。ダムを大きくし、ダムの中で泳いでいる顧客のケアにはスプリンクラーを用意しよう。ダムが大きくなればなるほど、一回の工数で多くの顧客にアプローチでき、単位コストを下げることができる。これが孫子の「水を以て攻を佐くる者は強なり」という教えの実践だ。
 コロナ禍がいつまで続くかは分からないし、仮に収束しても、在宅勤務が増えたりしてかつてのように顧客とのコンタクトがとれなくなる可能性が高い。元より日本は人口減少でマーケットは縮小していくわけだから、放っておくと客は減る。顧客を貯める努力が必要であり、ダムを大きくする水攻めの重要性が増すことになるのだ。

緊急事態は巧久ではいけない

2021-02-24

 もはや新型と言うのも憚られるような、2019年から存在していると命名されているCOVID-19(新型コロナウイルス)だが、1月7日に発出された緊急事態宣言が長過ぎる件につき、孫子の兵法で斬ってみたい。
 当初1ヶ月とされた緊急事態宣言期間が延長されているわけだが、そもそも2ヶ月も継続する状態を「緊急」と呼ぶのか? ちょうど一年前くらいになるが、新型コロナの騒ぎが起こって学校を一斉に休校にした頃には「ここ1、2週間が正念場」と首相が訴えていたはずだ。昨年末には、第3波が来たとして「勝負の3週間」だから外出自粛に協力してくれと大臣が訴えていたではないか。ウイルスはゼロには出来ないのだから「ハンマー&ダンス」で、抑え込むハンマーと解放するダンスを繰り返しつつ医療崩壊を避けると専門家が言っていたではないか。
 「1、2週間」が正念場だ、瀬戸際だと言われれば我慢も出来る。「3週間」の勝負なら何とか戦おうという気にもなる。だがそれが、1ヶ月だと言われ、さらにズルズルと伸びて2ヶ月だと言われて、ハンマーで叩かれ続けていたら「兵を鈍らせ鋭を挫く」ことになるのが分からないのだろうか。改めて国や人民の命運を左右する立場の人間は、謙虚に孫子の兵法を学ぶべきである。
 孫子は、

『久しければ則ち兵を鈍らせ鋭を挫く。城を攻むれば則ち力屈き、久しく師を暴さば、則ち国用足らず。夫れ、兵を鈍らせ鋭を挫き、力を屈くし貨を殫くせば、則ち諸侯其の弊に乗じて起こる。智者有りと雖も、其の後を善くすること能わず。』

 と教えてくれている。「戦争を長期化させてしまうと軍を疲弊させ鋭気を挫くことになる。敵の本拠である城塞を攻めるようなことになれば、戦力を消耗させてしまうことになるし、長期間の戦争行動は国家財政の破綻を招くものとなる。もしそのような軍を疲れさせて鋭気を削ぎ、戦力を使い果たして財政も尽きることにでもなれば、周辺諸侯がその困窮に乗じて挙兵してくるような事態に陥る。そうなれば、もし智謀に長けた人材がいたとしても、もはや善後策を講じることはできない」と言うのだ。まさに今のコロナ対策の状況を指摘しているようではないか。
 そして、続けてこう孫子は言った。

『故に、兵は拙速を聞くも、未だ巧久なるを賭ざるなり。夫れ兵久しくして国を利する者は、未だ有らざるなり。』

 「だから、戦争には多少拙い点があったとしても速やかに事を進めたという成功事例はあるが、完璧を期して長引かせてしまったという成功事例はない。そもそも戦争が長期化して国家に利益があったなどということは、未だかつてないのだ」と。拙速を尊ぶべしという教えだ。
 ゼロになるはずのないコロナ対策をズルズルと長引かせ、膨大な対策費を出し、多くの人の心を挫いて疲弊させるようなことをしてはならない。もし、どうしても長期化させなければならない事情があるのだとしたら、それを説明し、人々を納得させなければならない。
 だが、延長する理由は「気が緩む」といった精神論に終始し、そもそも緊急事態だと言いながら人の接触や会食を減らすことの有効性すら疑われているではないか。昨年4月の1回目の緊急事態宣言は、何しろ初めてのことだし仕方ない面もあるだろう。だが、3月の終わりには感染のピークを迎えていて、緊急事態宣言が出された時には収束に向かっていたというデータが明らかになっている。緊急事態宣言で外出が減ったから収束したのではなく、すでにウイルスが何らかの要因で感染スピードを落としていたところに緊急事態宣言を後出ししただけだと言える。
 問題はこの一回目の知見があるにも関わらず、今年もまたピークが過ぎようとしている頃に緊急事態宣言を出し、それが分かってもさらに延長しようとしていることだ。感染者も減り重症者が減って来ているのに医療が逼迫しているなら、コロナ病床を増やすことを緊急に行うべきだろう。
 おまけに昨年一年間、2020年の日本全体の死亡者数は減っている・・・。肺炎で死んだ人は例年と比べてかなり減っているが、従来は普通に肺炎で亡くなっていたであろう人(ほとんどが高齢者)が、たまたまコロナ感染して肺炎で亡くなったからではないのか? それでもトータルの死亡者数が増えているなら、コロナウイルスの脅威を叫ぶ必要もあるだろうが、トータルで死亡者数は減っているのだから、少なくとも日本では社会全体を停滞させるような脅威ではないだろう。
 と、感染症の専門家でも医者でもない孫子兵法家が、一般に公開されているデータを見ただけで、緊急事態宣言を出して接触を減らしていることの効果が、それによるマイナス効果よりも小さいことが分かるのに、敢えて長引かせようとするのは「兵とは詭道なり」で、素人には見えない深謀遠慮があるのだろうか。自殺者やうつ状態になる人が増えているのも、孫子の「兵を鈍らせ鋭を挫く」という指摘の通りであることを考えてみて欲しい。

経営は企業の大事なり

2021-01-19

 2020年は結局一年ずっと新型コロナ騒ぎだった。2021年になって気分一新!と行きたかったが、未だにコロナ禍が続いていて、緊急事態宣言もいつまで続くか先が見えない。他国と比べて感染者数も死亡者数も桁違いに低い日本で外出自粛と言うのだから、世界中から人を集めるオリンピックは今年もやはり出来ないのではないか。早々に中止と言えない大人の事情もあるのだろうが、それをアテにしている人や企業もあるだろうから、早めにアナウンスしてあげてもらいたい。
 こうした緊急事態、非常事態の時こそ、経営力というか経営者の力量が問われる。先が見えているなら誰でも先頭を歩ける。だが、先が見えない時にフォロワーを率いて先頭を歩くには相応の力が必要だ。非常時の典型例は戦争だ。戦争と言えば兵法。兵法と言えば孫子。やはりこういう時は孫子の兵法に学ぶべきである。
 孫子は、

『孫子曰く、兵は国の大事なり。死生の地、存亡の道、察せざる可からざるなり。故に、之を経るに五事を以てし、之を校ぶるに計を以てして、其の情を索む。』

 と、孫子兵法の冒頭で述べている。ここで言う「兵」とは戦争のことだが、これを「経営」と置き換えてみると良い。「経営は企業にとってその存亡を左右する重要事項であって、徹底して研究し考え抜くべきものである。その経営においては『五事七計』が重要となり、しっかり現状をつかむ情報力が必要である。」といった感じだ。
 同じ緊急事態でも、同じ戦時下でも、同じ不況下においても、経営者次第、経営次第で、企業の存亡は分かれる。不況になったらすべての企業が潰れるわけではない。コロナ禍で飲食店が苦境に陥っていると言ってもすべての飲食店が潰れるわけではない。経営次第、リーダー次第で勝ち残る企業と消え去る企業とに分かれるのだ。
 ここで有名な「五事七計」が出てくるが、企業経営を考える時に大切なのは「五事」である。「五事」に絞って考えてみよう。
 孫子は「五事」をこう説明した。

『一に曰く道、二に曰く天、三に曰く地、四に曰く将、五に曰く法。道とは、民をして上と意を同じくせしむる者なり。故に之と死すべく、之と生く可くして、民は詭わざるなり。天とは、陰陽、寒暑、時制なり。地とは、遠近、険易、広狭、死生なり。将とは、智、信、仁、勇、厳なり。法とは、曲制、官道、主用なり。凡そ此の五者は、将は聞かざること莫きも、之を知る者は勝ち、知らざる者は勝たず。』

 「五事」とは勝敗を左右する5つのポイントだが、その5つとは、「道」「天」「地」「将」「法」である。ここで差がつくとも言えるし、この5つのポイントを整備し強化すれば良いとも言える。順に説明しよう。
 道とは、民衆の気持ちを国王・将軍の意思に合致させる思想・理念・道理であり、これによって民衆全てが生死を共にする覚悟を持ち、国王・将軍の意向、命令に疑念を抱かなくなるというものだ。企業経営で言えば理念やミッションと考えれば良い。この緊急時・非常時に自社が存続する、生き残る、勝ち抜く意味は何か。そもそも存続に意義があるのか、を示せなければならない。それがなければ顧客も従業員もついて来てくれないだろう。「こんな会社潰れても仕方ないな、どうせなくなっても誰も困らないしな」で終わり。
 天とは、陰陽すなわち天地自然の理、季節の変化、寒暖の差であり、その変化への対応が適切であること。経営で言えば、時流、トレンド、タイミングの見極めである。冬になって気温と湿度が下がればウイルスの感染力が高まるのは自然の摂理であって、予め分かっていたことなのだから、そんなことで慌ててバタバタしているようではダメに決まっている。より重要なのは、このコロナパンデミックにより、顧客の購買行動や生活様式、働き方やビジネス手法がどう変化して行くかという流れを読むことだろう。コロナが収まってもウイルスはゼロにならないし、人々の動きも元には戻らないかもしれない。そうした時に自社はどうあるべきか、どう変化すべきかを考えられなければならない。
 地とは、地理的遠近、地形が険しいか易しいか、戦場の広狭、生死を分かつ地理的条件のことを指す。ビジネスにおいては競争環境、競合ポジショニングと考えれば良い。自社の置かれた状況は戦いに有利なのか、同業者が倒れていけば残存者利益があり逆にチャンスかもしれないといったことを考えてみよう。企業の競争は常に相対的なものだ。完璧でなくても、他社よりも相対的に上回っていれば勝てる。非常時には、どこで戦うかという戦場の選択(事業ドメイン)も重要となる。
 将とは、まさにリーダーのこと。リーダーの条件は、「智、信、仁、勇、厳」である。物事の本質を見抜く智、部下からの信頼、部下を慈しみ育てる仁の心、信念を貫く勇、軍律を徹底させる厳しさがあるかどうか。戦時下を乗り切るには勇気もいるし、時に厳しさも必要だろう。コロナ禍の緊急事態において非情な選択をせざるを得ないこともあるだろう。その時にも部下から信頼され納得してもらえるかどうか、リーダーの力量が問われている。
 法とは、組織編制、人事、兵站確保などの管理能力をいう。紀元前の組織でも、21世紀の組織でも、人の本質は変わらず、人事は重要である。どういう組織を作り、どういう規律を徹底させるか、リーダーの腕の見せ所である。兵站の確保は、資金調達と考えても良いだろう。非常時に精神論だけを振りかざして綺麗事を言いながら、肝心な金もないようでは誰も相手にしなくなる。
 この5つのポイント「五事」は、人の上に立つリーダーであれば、誰でも聞いたことがあり、知っていることだが、本当に理解して実践する者は勝ち、分かったつもりになって本当には理解していないようでは負けることになると孫子は説いた。
 2021年は始まったばかりだが、コロナ禍の緊急事態だ。年初に改めて自社の経営、経営者としての自分を振り返り、冷静に見て、この難局をどう乗り切るか考えてみていただきたい。

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