孫子の兵法

孫子
 言わずと知れた、最古にして最強の兵法、『孫子』。2500年も前の、中国春秋時代に呉の兵法家、孫武によって著された兵法をただ漢文の古典として読むのではなく、現代の企業経営や組織運営、ビジネス、仕事の仕方に置き換え、応用し、実践のための智恵として活用したい。これが孫子兵法家を名乗る私の使命感です。
 この孫子ブログ「経営風林火山」は、2500年もの間、洋の東西を問わず、評価され続けて来た珠玉の教え、孫子の兵法を21世紀に生きる智恵としてどう解釈すべきかを、その時々のトピックに絡めてお伝えするものであり、孫子兵法家、長尾一洋の独自解釈も思い切って盛り込んだブログです。
 長尾一洋オフィシャルサイトには、「ブログではない雑記」というものもあって、そちらではブログを書きたくないから雑記にしたと書いているのですが、その当時からはブログの位置づけも大きく変わり、SNSが全盛の今となっては、ブログだろうと雑記だろうと似たようなもので、あまりそこにこだわるのもどうかということで、こちらではブログとしております。そのため、雑記と同様に、コメントなどの機能はありません。お許しください。
 
孫子
仕事で大切なことは孫子の兵法がぜんぶ教えてくれる
小さな会社こそが勝ち続ける 孫子の兵法経営戦
これなら勝てる!必勝の営業術55のポイント
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まんがで身につく孫子の兵法
キングダム』で学ぶ乱世のリーダーシップ
「孫子の兵法」で勝つ仕事えらび!!
「孫子兵法家」商標登録

2021-05-14

 今から2500年前、紀元前に書かれた孫子の兵法を現代のビジネス、企業経営に応用しコンサルティングする人。それが孫子兵法家だ。「孫子研究家」でもなく「兵法研究者」でもなく「中国古典学者」でもない。研究したり解釈したりするだけでなく、孫子の兵法をビジネスの実戦に応用して成果を出す実務家であり実践者である人間を「孫子兵法家」と呼ぶ。
 誰が定義し、命名したのか?
 私だ。
 長年の経営コンサルティング経験と自社の経営実務、そして孫子の研究と実践を経た上で、海音寺潮五郎氏の小説「孫子」の中に、「兵学者」と「兵法家」の違いについて述べた一節を見つけて、自ら定義し命名した。その一節を引用しておこう。
「兵学者とは古来の兵法をよく誦んじ、古今の戦史をよく知り、兵制の変遷などを研究している者です。しかし、単にそれだけの人々です。兵法家は、機に臨み、変に応じて、最も適当した戦術の案出が出来るなら、古人の兵法など知らんでもよいのです。もちろん、古人の兵法を知っていてもよろしい、古今の戦史に通じていてもかまわない。ただ、それを実際に応用するにあたっては、独自の機略をもって自在の運用をしなければならないのです。それが兵法家です。」
 紀元前に書かれた古典の意味を知り、漢文を解釈し、日本語に訳すだけなら、私よりも詳しい人はいくらでもいるだろうし、中国文学者や古典研究家として立派な成果を挙げておられる方も少なくないだろう。だが、孫子兵法家である私はそんなところで戦ってはいない。彼らは立派な「兵学者」ではあっても、戦争をしているわけでもないだろう。
 私も戦争をしているわけではないが、ビジネス戦争をしている。日々自社の経営者として戦い、多くのクライアント企業の戦い方を指南している。そこに孫子の兵法を適用し応用し実践している。この孫子の兵法をビジネスの実戦に応用して成果を出すという点においては、誰にも負けない自負がある。だから「孫子兵法家」を名乗った。
 「勝手に決めるな」「誰がそれを認めたのか?」「自称に過ぎないだろう」と文句を言いたい人もいるだろう。では、聞くが、「孫子兵法家協会」という組織があり、「孫子兵法家認定試験」があって、その合格者が何千人、何万人もいたら「孫子兵法家」として認めるのか? 競合する同業者が何千何万といて差別化も出来ないようなことをして孫子の兵法を実践する人と呼べるとでも思うのか? 他人が決めた枠組みや定義に沿って、他人に認められないと自分を定義できないとしたら? そんなヤツは「孫子読みの孫子知らず」でしかない。
 孫子は、

『百戦百勝は、善の善なる者に非るなり。戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり。』

 と言い、

『善く戦う者は、人を致して人に致されず。』

 とも言っている。
 戦わずして勝つのが最善であり、相手に動かされるのではなくこちらの意図で相手を動かすのが孫子の兵法である。独自のカテゴリーを作り、独自の土俵で一人横綱になるのが、「孫子兵法家」としての正しい姿である。
 試しに、ネット検索で「孫子兵法家」を検索してみて欲しい。私のサイトがズラッと出て来るはずだ。これが戦わずに勝つ独自領域の作り方だ。この事実、この結果こそが、私が孫子の兵法を現代に応用する「孫子兵法家」である証明である。
 今回、そのダメ押しをするために、「孫子兵法家」を商標登録した。これがその証の商標登録証だ。

「孫子兵法家」商標登録

 独自領域を作って、それに名前をつけたら、商標や特許で法的にも保護して無駄な戦いを避けるべし。実体として負けていなくても、他社に商標を取られて権利侵害を訴えられたら、余計な戦いをしなければならなくなる。それを避ける知的財産権の保護も孫子兵法の実践である。
 ちなみに、孫子の兵法を独占する気もないし、孫子の兵法を現代のビジネスに応用することは非常に有用なので多くの人に実践してもらいたいと思っているから、「孫子兵法家」の使用を制限するつもりはない。是非使ってもらい、孫子兵法の普及啓蒙に取り組んでもらいたい。但し、「孫子兵法家」がNIコンサルティングの登録商標である旨の表記を忘れずに。勝手な乱用をしていると、いつ「孫子兵法家」から商標権の侵害で攻撃されるか分からないから気を付けてね・・・。無駄な戦いをするつもりはないけれども、やる時は徹底的にやるよ(笑)。

スプリンクラーで水攻めせよ

2021-04-15

 孫子の最後には火攻篇があり、火攻めのやり方について書かれている。わざわざ一篇を使って解説するくらいだから、火攻めを重要視していることは間違いないが、一方で水攻めや水そのものについて言及している箇所も孫子には多い。たとえば「激水の疾くして、石を漂わすに至る者は勢なり。」や「兵の形は水に象る。」もそうだし、「積水の計」などもある。火攻篇でも孫子は、

『火を以て攻を佐くる者は明なり。水を以て攻を佐くる者は強なり。水は以て絶つ可きも、以て奪う可からず。』

 として、水攻めにも言及している。火を攻撃の助けとするのは、明晰な頭脳や智恵であり、水を攻撃の助けとするのは、強大な兵力による。水攻めは敵を分断し孤立させることはできるが、敵の戦力を奪い去ることはできないという教えだ。
 水攻めは、敵の戦力を奪い去ることまではできなくても、分断させ、孤立させることはできるものであり、要は使いようである。そこでのポイントは、強大な兵力があること。これはダムや堰を作ったり壊したりする土木工事力が必要だと考えれば良い。
 さて、ここで、この土木工事力を現代のビジネスに置き換えた時にどう考えるかが問題だ。単に企業規模の差と考えてしまっては、間違いではないけれども、工夫の余地もなくなる。規模が大きければ勝つ、で終わり。それよりも、ダムの大きさと考えるべきである。ダムとはもちろん顧客のダム。データベースだ。これなら企業規模が小さくても工夫次第で大きくできる。
 顧客のダムは大きければ大きいほど良い。顧客データベースなのだから当然だ。企業規模、社員数の大きさに伴ってダムが大きいのは当り前だが、社員数も少ないのにダムを大きくできた場合には価値が高いが、次の問題が生じる。ダム湖が大きくなり、その中には魚(顧客)がたくさん泳いでいる。しかし、その魚に餌をやる人間が少なくて手が回らない、という問題だ。魚は放っておくと死んでしまう。放置顧客は離脱するということだ。そこで、少ない人数で大きなダムのお守りをするには、スプリンクラーを使って一気に撒き餌をすることを考える。
 そのための武器が、Approach DAMであり、メール配信のSprinklerオプションである。まさに孫子の兵法「積水の計」を実践するための武器であり、規模がモノを言う水攻めを効率的に行うために孫子兵法家が開発したシステムである。
 コロナ禍もあって、多くの企業が、新規の顧客開拓に苦労している。せっかく新規客と商談できても、すべてを受注・契約に持ち込めるわけではない。貴重な顧客をダムに貯めよう。ダムを大きくし、ダムの中で泳いでいる顧客のケアにはスプリンクラーを用意しよう。ダムが大きくなればなるほど、一回の工数で多くの顧客にアプローチでき、単位コストを下げることができる。これが孫子の「水を以て攻を佐くる者は強なり」という教えの実践だ。
 コロナ禍がいつまで続くかは分からないし、仮に収束しても、在宅勤務が増えたりしてかつてのように顧客とのコンタクトがとれなくなる可能性が高い。元より日本は人口減少でマーケットは縮小していくわけだから、放っておくと客は減る。顧客を貯める努力が必要であり、ダムを大きくする水攻めの重要性が増すことになるのだ。

緊急事態は巧久ではいけない

2021-02-24

 もはや新型と言うのも憚られるような、2019年から存在していると命名されているCOVID-19(新型コロナウイルス)だが、1月7日に発出された緊急事態宣言が長過ぎる件につき、孫子の兵法で斬ってみたい。
 当初1ヶ月とされた緊急事態宣言期間が延長されているわけだが、そもそも2ヶ月も継続する状態を「緊急」と呼ぶのか? ちょうど一年前くらいになるが、新型コロナの騒ぎが起こって学校を一斉に休校にした頃には「ここ1、2週間が正念場」と首相が訴えていたはずだ。昨年末には、第3波が来たとして「勝負の3週間」だから外出自粛に協力してくれと大臣が訴えていたではないか。ウイルスはゼロには出来ないのだから「ハンマー&ダンス」で、抑え込むハンマーと解放するダンスを繰り返しつつ医療崩壊を避けると専門家が言っていたではないか。
 「1、2週間」が正念場だ、瀬戸際だと言われれば我慢も出来る。「3週間」の勝負なら何とか戦おうという気にもなる。だがそれが、1ヶ月だと言われ、さらにズルズルと伸びて2ヶ月だと言われて、ハンマーで叩かれ続けていたら「兵を鈍らせ鋭を挫く」ことになるのが分からないのだろうか。改めて国や人民の命運を左右する立場の人間は、謙虚に孫子の兵法を学ぶべきである。
 孫子は、

『久しければ則ち兵を鈍らせ鋭を挫く。城を攻むれば則ち力屈き、久しく師を暴さば、則ち国用足らず。夫れ、兵を鈍らせ鋭を挫き、力を屈くし貨を殫くせば、則ち諸侯其の弊に乗じて起こる。智者有りと雖も、其の後を善くすること能わず。』

 と教えてくれている。「戦争を長期化させてしまうと軍を疲弊させ鋭気を挫くことになる。敵の本拠である城塞を攻めるようなことになれば、戦力を消耗させてしまうことになるし、長期間の戦争行動は国家財政の破綻を招くものとなる。もしそのような軍を疲れさせて鋭気を削ぎ、戦力を使い果たして財政も尽きることにでもなれば、周辺諸侯がその困窮に乗じて挙兵してくるような事態に陥る。そうなれば、もし智謀に長けた人材がいたとしても、もはや善後策を講じることはできない」と言うのだ。まさに今のコロナ対策の状況を指摘しているようではないか。
 そして、続けてこう孫子は言った。

『故に、兵は拙速を聞くも、未だ巧久なるを賭ざるなり。夫れ兵久しくして国を利する者は、未だ有らざるなり。』

 「だから、戦争には多少拙い点があったとしても速やかに事を進めたという成功事例はあるが、完璧を期して長引かせてしまったという成功事例はない。そもそも戦争が長期化して国家に利益があったなどということは、未だかつてないのだ」と。拙速を尊ぶべしという教えだ。
 ゼロになるはずのないコロナ対策をズルズルと長引かせ、膨大な対策費を出し、多くの人の心を挫いて疲弊させるようなことをしてはならない。もし、どうしても長期化させなければならない事情があるのだとしたら、それを説明し、人々を納得させなければならない。
 だが、延長する理由は「気が緩む」といった精神論に終始し、そもそも緊急事態だと言いながら人の接触や会食を減らすことの有効性すら疑われているではないか。昨年4月の1回目の緊急事態宣言は、何しろ初めてのことだし仕方ない面もあるだろう。だが、3月の終わりには感染のピークを迎えていて、緊急事態宣言が出された時には収束に向かっていたというデータが明らかになっている。緊急事態宣言で外出が減ったから収束したのではなく、すでにウイルスが何らかの要因で感染スピードを落としていたところに緊急事態宣言を後出ししただけだと言える。
 問題はこの一回目の知見があるにも関わらず、今年もまたピークが過ぎようとしている頃に緊急事態宣言を出し、それが分かってもさらに延長しようとしていることだ。感染者も減り重症者が減って来ているのに医療が逼迫しているなら、コロナ病床を増やすことを緊急に行うべきだろう。
 おまけに昨年一年間、2020年の日本全体の死亡者数は減っている・・・。肺炎で死んだ人は例年と比べてかなり減っているが、従来は普通に肺炎で亡くなっていたであろう人(ほとんどが高齢者)が、たまたまコロナ感染して肺炎で亡くなったからではないのか? それでもトータルの死亡者数が増えているなら、コロナウイルスの脅威を叫ぶ必要もあるだろうが、トータルで死亡者数は減っているのだから、少なくとも日本では社会全体を停滞させるような脅威ではないだろう。
 と、感染症の専門家でも医者でもない孫子兵法家が、一般に公開されているデータを見ただけで、緊急事態宣言を出して接触を減らしていることの効果が、それによるマイナス効果よりも小さいことが分かるのに、敢えて長引かせようとするのは「兵とは詭道なり」で、素人には見えない深謀遠慮があるのだろうか。自殺者やうつ状態になる人が増えているのも、孫子の「兵を鈍らせ鋭を挫く」という指摘の通りであることを考えてみて欲しい。

経営は企業の大事なり

2021-01-19

 2020年は結局一年ずっと新型コロナ騒ぎだった。2021年になって気分一新!と行きたかったが、未だにコロナ禍が続いていて、緊急事態宣言もいつまで続くか先が見えない。他国と比べて感染者数も死亡者数も桁違いに低い日本で外出自粛と言うのだから、世界中から人を集めるオリンピックは今年もやはり出来ないのではないか。早々に中止と言えない大人の事情もあるのだろうが、それをアテにしている人や企業もあるだろうから、早めにアナウンスしてあげてもらいたい。
 こうした緊急事態、非常事態の時こそ、経営力というか経営者の力量が問われる。先が見えているなら誰でも先頭を歩ける。だが、先が見えない時にフォロワーを率いて先頭を歩くには相応の力が必要だ。非常時の典型例は戦争だ。戦争と言えば兵法。兵法と言えば孫子。やはりこういう時は孫子の兵法に学ぶべきである。
 孫子は、

『孫子曰く、兵は国の大事なり。死生の地、存亡の道、察せざる可からざるなり。故に、之を経るに五事を以てし、之を校ぶるに計を以てして、其の情を索む。』

 と、孫子兵法の冒頭で述べている。ここで言う「兵」とは戦争のことだが、これを「経営」と置き換えてみると良い。「経営は企業にとってその存亡を左右する重要事項であって、徹底して研究し考え抜くべきものである。その経営においては『五事七計』が重要となり、しっかり現状をつかむ情報力が必要である。」といった感じだ。
 同じ緊急事態でも、同じ戦時下でも、同じ不況下においても、経営者次第、経営次第で、企業の存亡は分かれる。不況になったらすべての企業が潰れるわけではない。コロナ禍で飲食店が苦境に陥っていると言ってもすべての飲食店が潰れるわけではない。経営次第、リーダー次第で勝ち残る企業と消え去る企業とに分かれるのだ。
 ここで有名な「五事七計」が出てくるが、企業経営を考える時に大切なのは「五事」である。「五事」に絞って考えてみよう。
 孫子は「五事」をこう説明した。

『一に曰く道、二に曰く天、三に曰く地、四に曰く将、五に曰く法。道とは、民をして上と意を同じくせしむる者なり。故に之と死すべく、之と生く可くして、民は詭わざるなり。天とは、陰陽、寒暑、時制なり。地とは、遠近、険易、広狭、死生なり。将とは、智、信、仁、勇、厳なり。法とは、曲制、官道、主用なり。凡そ此の五者は、将は聞かざること莫きも、之を知る者は勝ち、知らざる者は勝たず。』

 「五事」とは勝敗を左右する5つのポイントだが、その5つとは、「道」「天」「地」「将」「法」である。ここで差がつくとも言えるし、この5つのポイントを整備し強化すれば良いとも言える。順に説明しよう。
 道とは、民衆の気持ちを国王・将軍の意思に合致させる思想・理念・道理であり、これによって民衆全てが生死を共にする覚悟を持ち、国王・将軍の意向、命令に疑念を抱かなくなるというものだ。企業経営で言えば理念やミッションと考えれば良い。この緊急時・非常時に自社が存続する、生き残る、勝ち抜く意味は何か。そもそも存続に意義があるのか、を示せなければならない。それがなければ顧客も従業員もついて来てくれないだろう。「こんな会社潰れても仕方ないな、どうせなくなっても誰も困らないしな」で終わり。
 天とは、陰陽すなわち天地自然の理、季節の変化、寒暖の差であり、その変化への対応が適切であること。経営で言えば、時流、トレンド、タイミングの見極めである。冬になって気温と湿度が下がればウイルスの感染力が高まるのは自然の摂理であって、予め分かっていたことなのだから、そんなことで慌ててバタバタしているようではダメに決まっている。より重要なのは、このコロナパンデミックにより、顧客の購買行動や生活様式、働き方やビジネス手法がどう変化して行くかという流れを読むことだろう。コロナが収まってもウイルスはゼロにならないし、人々の動きも元には戻らないかもしれない。そうした時に自社はどうあるべきか、どう変化すべきかを考えられなければならない。
 地とは、地理的遠近、地形が険しいか易しいか、戦場の広狭、生死を分かつ地理的条件のことを指す。ビジネスにおいては競争環境、競合ポジショニングと考えれば良い。自社の置かれた状況は戦いに有利なのか、同業者が倒れていけば残存者利益があり逆にチャンスかもしれないといったことを考えてみよう。企業の競争は常に相対的なものだ。完璧でなくても、他社よりも相対的に上回っていれば勝てる。非常時には、どこで戦うかという戦場の選択(事業ドメイン)も重要となる。
 将とは、まさにリーダーのこと。リーダーの条件は、「智、信、仁、勇、厳」である。物事の本質を見抜く智、部下からの信頼、部下を慈しみ育てる仁の心、信念を貫く勇、軍律を徹底させる厳しさがあるかどうか。戦時下を乗り切るには勇気もいるし、時に厳しさも必要だろう。コロナ禍の緊急事態において非情な選択をせざるを得ないこともあるだろう。その時にも部下から信頼され納得してもらえるかどうか、リーダーの力量が問われている。
 法とは、組織編制、人事、兵站確保などの管理能力をいう。紀元前の組織でも、21世紀の組織でも、人の本質は変わらず、人事は重要である。どういう組織を作り、どういう規律を徹底させるか、リーダーの腕の見せ所である。兵站の確保は、資金調達と考えても良いだろう。非常時に精神論だけを振りかざして綺麗事を言いながら、肝心な金もないようでは誰も相手にしなくなる。
 この5つのポイント「五事」は、人の上に立つリーダーであれば、誰でも聞いたことがあり、知っていることだが、本当に理解して実践する者は勝ち、分かったつもりになって本当には理解していないようでは負けることになると孫子は説いた。
 2021年は始まったばかりだが、コロナ禍の緊急事態だ。年初に改めて自社の経営、経営者としての自分を振り返り、冷静に見て、この難局をどう乗り切るか考えてみていただきたい。

コンタクトレス・アプローチと営業の見える化

2020-12-04

 「コンタクトレス・アプローチ テレワーク時代の営業の強化書」(KADOKAWA)の出版から出版記念セミナー、増刷記念セミナーの開催までの経緯をご紹介して来たが、おかげさまで多くの方にセミナー受講いただき、コンタクトレス・アプローチに取り組もうというクライアント企業も増えて来た。
 そうこうしている内に、コロナウイルスの感染第3波がやって来て、GoToキャンペーンが制限され、飲食店等の営業時間短縮要請なども出て、企業には改めてテレワークが推奨されている。こうなると、やはり営業活動において客先への直接訪問や出張はしにくくなり、在宅勤務となったら身動きがとれず、法人客が在宅勤務になったら訪問したくてもできなくなって、コンタクトレス・アプローチの出番となる。
 コロナの感染が広がって欲しいわけではないのに、コロナ騒動が大きくなることでコンタクトレス・アプローチの出番が増えるから、何だか感染拡大を喜んでいるように思われるかもしれないが、そんなことはないので誤解の無いようにお願いしたい。
 この調子では、年が明けてもコロナ騒動は続くことになるだろう。ワクチンもできて来るし、いずれ収束することにはなるだろうが、急にゼロになったりはしない。やはりコンタクトレス・アプローチができる状態にしておく必要があるし、このコロナ危機を機会として活かすことを考えて、コロナを言い訳にできる内にコンタクトレス・アプローチにチャレンジしていただきたい。
 そこで今回は、コンタクトレス・アプローチを進めて行く上で必要となる営業の「見える化」について考えてみたい。孫子は、

『君の軍を患わす所以の者三あり。軍の以て進む可からざるを知らずして、之に進めと謂い、軍の以て退く可からざるを知らずして、之に退けと謂う。是を軍を縻ぐと謂う。三軍のことを知らずして、三軍の政を同じうすれば、則ち軍士惑う。三軍の権を知らずして、三軍の任を同じうすれば、則ち軍士疑う。』

 と教えてくれている。「君主が軍隊に患いをもたらす3つの原因があることを知っておくべきである。まず1つ目に、軍が進撃してはならない状況にあるのを知らずに、進撃せよと命令し、軍が退却してはならない状況にあるのを知らずに、退却を命令するようなことでは、軍事行動を阻害し、拘束しているに過ぎない。2つ目に、軍の内情をよく知らないのに、軍内の統治を将軍と同じようにしようとすると、兵士たちはどちらの指示命令に従えば良いのか惑うことになる。3つ目に、軍における臨機応変の対応に通じていないのに、将軍と同じように現場で指揮を取ろうとすると、兵士たちは疑念を抱くようになる。」という意味だ。
 企業に置き換えて、ザックリ言えば、「現場のことも良く分かっていないのに社長があれこれ口出しをするなよ」ということになる。たしかに、現場のマネージャーもいるのに、現場の実態を見もせずに過去の経験に基づいて社長が具体的に口出しをすると現場は混乱し、中間のマネージャーは立場が無くなってしまう。
 一番良いのは、社長が黙って、マネージャーがしっかり現場を動かして成果を出してくれることだ。そうなったら、社長もいちいち口出しする必要もないし、黙っていろと言わなくても黙っているだろう。
 問題は、中間のマネージャーが育っていない、いても役に立っていない状態で、成果も出せていないとなった場合だ。多くの中堅・中小企業は人材の層が薄くてそうなっていることがほとんどだ。そこでどうするか。
 黙っていたら成果も出ず、経営が立ち行かないとなったら、口出しするに決まっている。あるべき論をいくら言っても会社が行き詰まったらそれで終わりだ。だから孫子も、君主は一切口出ししてはならないとは言っていない。現場の状況を見ず、現場の内情を知らず、現場の動きも分かっていないのに、口出しすると害悪だと言っているのであって、現場を見て、内情をつかみ、動きを理解していれば、口出しして問題なし。
 そこで必要になるのが営業の「見える化」だ。コンタクトレス・アプローチが中心になって、テレワークが当り前になればなるほどしっかり現場を「見える化」しなければならない。これまでは、営業の「見える化」を提案しても、規模が小さく営業担当者の数も少ないような場合には、「見えている」「分かっている」「直接話しているから大丈夫」と抵抗されることがあったが、これからは、小さくても少なくても、上司と部下もなかななか会わないし、出社もして来なければ動きも見えないから、敢えて「見える化」する努力が必要だ。「コンタクトレス・アプローチ」を読んだら、続けて「営業の見える化」も読んでもらいたい。改めて「営業の見える化」が大事であることを実感してもらえるはずだ。

『営業の見える化』『まんがでできる 営業の見える化』


 文字を読むのが嫌なら、マンガ版もある。すべての商談に同席するわけにはいかないのだから、何らかの手段で現場の状況を掴まなければならない。それを営業会議の口頭報告で済まそうとするようなことが一番ムダだ。適当なことを言ってごまかせるし、そこで発言したことが顧客別に整理されるわけでもない。ただ営業担当者個々の言い訳を聞き、仮にそれを議事録にしたとしても後で読み返す価値もないだろう。営業を「見える化」するとは、顧客を「見える化」することであり、戦略実行の現場を「見える化」することである。決して営業担当者の行動管理であってはならない。  テレワーク、コンタクトレスの時代にこそ「見える化」が必要となる。それが孫子の兵法を実行することでもある。

そして、重版出来!!

2020-10-20

 拙著「コンタクトレス・アプローチ テレワーク時代の営業の強化書」(KADOKAWA)の出版に当たり、一連のブログで孫子の兵法を使った「短期集中」の戦い方についてお伝えして来たが、一応その結果(戦果)として「重版出来」を勝ち取ったので、ご報告しておこうと思う。
 ちなみに、「重版出来」は、「じゅうはんしゅったい」と読む。このタイトルの漫画もありドラマ化もされたのでご存知の方もいるだろうが、普通は読めないな・・・。要するに、増刷した本が出来たよ!ということ。重版というのも一般には馴染みがないだろう。増刷のことだ。初版から2版3版と版を重ねるということで重版と言う。出版業界の人は文学好きが多いから、普通に言いたくないのかな?と思う。まぁそんなことはどうでもいい。
 8月12日に、この孫子ブログで、「勢いは険しくタイミングは短く集中」と題して、勢いを放出するタイミングは一気に短く集中させるべきだと書いた。孫子の兵法を用いて、そこから2ヶ月一気に集中して行くよと宣言したわけだ。
 次に、9月9日に「セールス・営業部門で1位ゲット」と題して、Amazonの「セールス・営業」ランキングで1位を獲得したことを報告した。途中経過の報告だ。「専りて一と為る」孫子の教えを実践しているという内容だった。
 そして、ついに、2ヶ月の短期集中攻撃の結果が出た。それが「重版出来!!」だ。初版だけで消え去る本も多い中、重版にこぎ着けたのは一先ず成功と言えるだろう。もうちょっと早くても良かったが、初版の部数が結構多めだったので、そこは已む無しとする。
 KADOKAWAさんから重版の見本が届いたので、証拠写真としてパシャリ。

『コンタクトレス・アプローチ ~テレワーク時代の営業の強化書~』


 ちょっと奥付が小さくなって読みにくいので、ZOOMしてパシャリ。ちなみに、奥付とは、著者名・発行者名・発行年月日などが書かれた箇所を指す。本の最後にあるヤツね。もう一つちなみに、ここでは第2版ではなく再版となっている。いろいろ言い方があってややこしい。初版が2020年8月20日。再版が10月10日。何とか2ヶ月は切った。

『コンタクトレス・アプローチ ~テレワーク時代の営業の強化書~』


 ということで、孫子兵法家として、孫子の兵法を現代のビジネスに応用している以上、結果を出さないわけにはいかないので、とりあえず重版になって良かった・・・。偉そうなことを言っておいて初版で終わったら恥ずかしいことになっていた。やはり、孫子の兵法は現代のビジネスにも応用できるので、皆さんにも是非しっかり学んでいただきたい。
 おかげさまで、「コンタクトレス・アプローチ テレワーク時代の営業の強化書」は短期集中攻撃が終わっても、そこそこ売れているようだし、6回もやった出版記念セミナーもまずまず好評だったので、そこからさらに踏み込んで、より戦略的に「コンタクトレス・アプローチ」を行っていくにはどうすれば良いかについて、「増刷記念セミナー」ということで、11月に改めてお伝えしようと思う。タイトルは「長期・継続的に成果を上げ続ける戦略的コンタクトレス・アプローチとは」。今度は、戦いを略す「戦略」がキーワードだ。3回開催するので是非ご受講いただきたい。もちろん、コンタクトレス(非接触)のWEBセミナー。出版記念セミナーを受講した人にも聴いてもらえば良いが、そもそものコンタクトレス・アプローチを説明する部分は被った内容になることをご承知いただきたい。
 コンタクトレス・アプローチを戦略的に行うためにはどうすれば良いのか、孫子兵法家が解説する。戦略的な内容だけに、経営者やマネージャークラスの方が聴いた方が良いだろう。
 とりあえず、今回は、重版出来のご報告をさせていただいた。感謝。

セールス・営業分野で1位ゲット

2020-09-09

 前回、このブログで「コンタクトレス・アプローチ」の出版に当たり「勢いは険しくタイミングは短く集中」で孫子兵法家らしく攻めると宣言した。ここで途中経過を報告しておこうと思う。
 なんと、「コンタクトレス・アプローチ テレワーク時代の営業の強化書」(KADOKAWA)は、Amazonの「セールス・営業」ランキングで1位を獲得した!!
 こちらがその証拠画像↓↓↓

『コンタクトレス・アプローチ ~テレワーク時代の営業の強化書~』


 「セールス・営業」という限られたカテゴリーの瞬間風速に過ぎないだろうとお考えの人もいるだろう。たしかにそうだ。カテゴリー領域は狭いし、ずっと1位が続いているわけではない。だがそれで上等だ。それこそが孫子兵法家の戦い方だと言ってもいいだろう。
 孫子は、

『我は専りて一と為り、敵は分かれて十と為らば、是れ、十を以て其の一を攻むるなり。』

 と、限られた領域に絞り込むことを教えてくれている。そもそも営業の本であり、営業に関心のない人が読んでも意味はないのだから、「セールス・営業」で1位ならそれで良し。絞り込んでこその孫子である。
 そして、元々「勢いは険しくタイミングは短く集中」戦略だから、瞬間風速で結構。一気に集中して結果を出す。それによって、このブログで、こうして1位になったぞという証拠画像を見せることができる。だらだらと2位とか3位とか4位とか、また2位とか・・・まぁまぁそこそこでしたというよりも、一気に「1位」と言える方が良い。
 発売から3週間ほどが経過して、出版記念セミナーも始まったので、改めて攻勢をかけて行こうと思う。一般書店さんでもまずまずな動きということなので、次の波を起こせるように、孫子兵法家としての手を打ちたいと思う。
 いずれにしても、Withコロナで客先訪問や出張に制約がある中で「コンタクトレス・アプローチ」は急務だろうし、これを単にリアル訪問をWEB商談、リモート商談に置き換えればOKと勘違いしている人も多いから、「コンタクトレス・アプローチ」をより多くの人に読んでもらい、出版記念セミナーも聞いてもらって、Afterコロナでコロナ感染リスクがなくなっても有効な営業改革につなげていただきたい。
 ちなみに、出版記念セミナーでは、本には書いていない新ネタも披露しているのでご興味のある方は是非セミナーもご受講いただきたい。当然のことながらオンラインのWEBセミナーでコンタクトレスだから、地方の方でもお気軽に聴いていただける。「コンタクトレス最高」。

勢いは険しくタイミングは短く集中

2020-08-12

 コロナウィルスの感染拡大による緊急事態で、客先訪問ができず立ち往生した営業部隊を救うために提唱した「コンタクトレス・アプローチ」がついに本になった。緊急事態だけに、KADOKAWAさんにも「疾きこと風の如く」対応してもらって、来週には店頭に並ぶはずである。緊急事態宣言は終わったが、まだまだ世間は感染拡大で大騒ぎだから、是非本書を読んで、これからのWithコロナ、Afterコロナをどう乗り切るか、しっかり考えていただきたい。

『コンタクトレス・アプローチ ~テレワーク時代の営業の強化書~』


 もちろん、孫子兵法家が出す本だから、安易にコロナ騒動に乗っかった軽いノリのものではなく、孫子の兵法に基づく考察によって生み出したものだ。コロナウィルスによるパンデミックというマイナスをプラスに活かすにはどうするかと考えたのも孫子

『智者の慮は、必ず利害を雑う。利に雑うれば、而ち務は信なる可し。害に雑うれば、而ち患いは解く可し。』

 という教えによる。害の裏には利があると考えるから患いを解くことができる。コロナだ、自粛だ、困った、参った、と騒いでいるだけでは何も解決しない。そこから生まれたのが「コンタクトレス・アプローチ」だ。
 だが、今回の本題はそこではない。
 孫子兵法家が本を出す以上、孫子の兵法を使わないわけにはいかない。緊急事態宣言でステイホームと言われた時から企画、執筆、編集、製本に至るスピード対応は、「風林火山」並みの機動力だったとも言えるのだが、それはもう終わった話だから、これからの話をしよう。孫子はこう言った。

『激水の疾くして、石を漂わすに至る者は勢なり。鷙鳥の撃ちて毀折に至る者は、節なり。是の故に善く戦う者は、其の勢は険にして、其の節は短なり。勢は弩を彍るが如く、節は機を発するが如し。』

  水の流れが激しくて岩石をも漂わせるのは、その水に勢いがあるからである。猛禽が急降下して一撃で獲物を打ち砕くのは、絶妙のタイミングだからである。したがって戦上手は、その戦闘に投入する勢いを大きく険しくし、その勢いを放出するのは一瞬の間に集中させる。勢いを蓄えるのは弩(弓)の弦を一杯に引くようなものであり、節(タイミング)とは、その引き金を引く時のようなものである、という教えだ。
 戦う時に大切なことは、勢いとタイミング。その勢いは険、タイミングは短でなければならない。水に勢いが加わると、土砂災害を生むことがあるようにとても危険である。逆に言えば、危険なほどの勢いが必要だということだ。
 さらにその勢いを放出するタイミングは一気に短く集中させる。そもそも勢いがあるところに持ってきて、さらにそれを短時間に集中させるということ。まるで線状降水帯ができて短時間に猛烈な雨が降るような感じだ。時に、人の命をも奪いかねない自然の猛威のような戦い方。それが孫子の教えだ。
 来週、書店に本が並んだら、ラジオ、新聞、雑誌、メルマガ等を使って怒涛の告知で勢いをつける。そして、そこから怒涛の出版記念セミナーを短期間に集中して行う。
 まず9月3日のKADOKAWAさんの出版記念セミナーだ。タイトルは、「会わずに売れる」テレワーク時代の営業術。19:00~21:00のリアルとオンラインを融合させたイベントになる。
https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/01g10n114cv3d.html
 翌週からは、弊社主催の出版記念セミナー「営業のニューノーマル『コンタクトレス・アプローチ』~非接触でも売れる営業手法とは~」を、9月8日、15日、23日、29日、10月8日、15日と一気に6回開催する。WEBセミナーだから全国どこからでもご参加いただける。この2ケ月弱の短期間に勢いを集中させて、「コンタクトレス・アプローチ」を広める戦略だ。
 ちょっとセミナー回数が多いかもしれない・・・ちょっと告知し過ぎかもしれない・・・のだが、岩をも押し流すには勢いが重要であり、それが短期集中でなければインパクトがないというのが孫子兵法の考え方である。
 さて、その結果がどうなるか。乞うご期待。その前にまず「コンタクトレス・アプローチ」をお読みください。

千里を一気に飛ぶコンタクトレス・アプローチ

2020-06-17

 長距離・長時間の移動は営業効率を著しく阻害する。泊りがけの出張対応ともなれば尚更だ。時間もかかるがコストもかかり、本人の疲労もあるだろう。加えて、今は新型コロナウイルスの影響で、客から「来るな」と言われ、法人営業だと「在宅勤務なので来てもらってもいませんよ」と言われる。在宅勤務中の自宅にズカズカ押し掛けるわけにも行かない。
 そこで、「コンタクトレス(非接触)アプローチ」だ。コンタクトレス・アプローチとは、「顧客へのリアル訪問(コンタクト)を減らして、逆にアプローチ数を増やすことでより大きな成果を上げる一連の営業行為」を言う。WEBを使って千里の道を一気に飛び、非接触で商談を進めるのだ。
 孫子は、

『千里を行きて労せざる者は、無人の地を行けばなり。攻めて必ず取る者は、其の守らざる所を攻むればなり。守りて必ず固き者は、其の攻めざる所を守ればなり。故に、善く攻むる者には、敵、其の守る所を知らず。善く守る者には、敵、其の攻むる所を知らず。微なるかな微なるかな、無形に至る。神なるかな神なるかな、無声に至る。故に能く敵の司命を為す。』

 と、教えてくれている。千里もの長距離を遠征しても疲労が少ないのは、無人のサイバー空間を移動しているからだ。まさに、微なるかな微なるかな、形も無く、目には見えない。神なるかな 神なるかな、車の音も、電車の音も、飛行機の音もしないのに、たしかにそこにやって来て、顔を見ながら話ができる。
 もし、孫武が、この21世紀に現れて、「コンタクトレス(非接触)アプローチ」を知ったら、「微なるかな微なるかな、神なるかな神なるかな」と感嘆し感動したことだろう。戦争に置き換えればサイバー攻撃のようなものか。姿かたちもなく、音もなく、攻撃され、データを抜かれたり破壊されたりする・・・。
 もちろん、「コンタクトレス(非接触)アプローチ」は平和利用であって、誰かを攻撃するわけではないし、4つのメリットがある。これを4Eと呼ぶ。
       ◇Environment        環境
       ◇Ecology               生態系
       ◇Efficiency             効率
       ◇Economic            経済的
の4つであり、資源を無駄遣いせず二酸化炭素の放出も抑えて地球に優しく、時間効率も良くてコストも引き下げられるということだ。ESGやSDGsに取り組んでいる企業は絶対に取り組むべきものだろう。
 そして、もちろん、Antivirus、ウイルス感染対策にもなる。だが、ウイルス感染対策はオマケみたいなものだ。ウイルス感染はやがて終息するだろうし、ワクチンが開発される時もやって来る。そうなってもコンタクトレス・アプローチを増やして行きたい。なぜなら4Eという大きなメリットがあるからだ。千里の道を一気に飛ぶことによるメリットだ。
 今現在、コロナウイルスの感染が騒がれている間に、コンタクトレス・アプローチを進めるべきである。客の側が、「来るな」「訪問しなくていい」と言ってくれていることを逆手にとって、コンタクトレス・アプローチを当たり前にする。これを他社に先んじて進めることが出来た会社が、このコロナ騒動を逸早く抜け出し、Afterコロナ時代に優位に立つことが出来るだろう。
 コロナで営業が出来ない、移動が出来ない、商談が進まない、と言い訳しているヒマがあったら、コンタクトレス・アプローチの体制を整えて、リアル訪問以上の成果をあげられるようにすべきである。それが孫子の「千里を行きて労せざる」兵法の実践である。

コロナウイルスとの戦い

2020-04-17

 新型コロナウイルスの感染がパンデミックとなり、世界中の経済活動も市民生活も停滞してしまっている。日本では緊急事態宣言が出て、外出自粛が叫ばれ、企業には休業か在宅のテレワークが求められている。直接的に休業を求められている業種はもとより、そうではない業種、業態であっても、この自粛・制限措置は回りまわって大きなマイナスをもたらすだろう。経営者は、嫌でも目に見えないウイルスとの戦いに挑まなければならない。
 さて、このこれまでに経験のない戦いにどう臨んだものか。
 孫子は、

『彼を知り己を知らば、百戦殆うからず。彼を知らずして己を知らば、一勝一負す。彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず殆うし。』

 有名な一節なので、解説の必要もないだろう。まず、目に見えない敵と戦うには、この敵のことを知ることだ。新型とはいえ、このコロナウイルスは感染拡大が始まってからすでに4ヶ月が経過していて、世界中のデータもある。このウイルスがどこでどう生まれたかは諸説あり、信じたくもないような話も多く、真相を知ることは出来ないが、そのウイルスによってもたらされているデータ、結果、研究成果は知ることが出来る。私は孫子兵法家であって、感染症やウイルスの専門家ではないので、ここに私の判断は書かないが、世間一般にテレビなどで言われているようなものとは違う判断をしている。様々な意見があり研究者も色々なので何を信じてどう判断するかは自分で考えるしかない。
 彼を知ったら、次に己を知ろう。果たして自社はこのコロナウイルスとの戦いに勝てるだけの戦力・体力があるかどうか。国や都道府県の指示や命令、また支援策によってどういう影響を受けるかを冷静に考えなければならない。
 孫子は、

『用兵の法は、十なれば則ち之を囲む。五なれば則ち之を攻む。倍すれば則ち之を分かつ。敵すれば則ち能く之と戦う。少なければ則ち能く之を逃る。若かざれば則ち能く之を避く。故に、小敵の堅なるは大敵の擒なり。』

 と言った。目に見えない新型コロナウイルスを十倍の力で封じ込めるだけの力がある企業はないだろうから、ここで考えておくべきは、場合によっては、逃げる、避ける、撤退、退却の判断も必要となるということだ。「ウイルスになんか負けないぞ」「コロナビールを飲んでアルコール消毒だ」などと根拠のない精神論で戦いを挑んではならない。小敵の堅なるは大敵の擒なりである。
 ウイルス感染がいつ収束するか、どういう状態になったら緊急事態宣言を解除するのか、見通せない。コロナウイルスそのものよりも、この時期が不確定という驚異が経営的には怖い。緊急事態宣言が仮に連休明けに解除となっても、ウイルスが完全にゼロになる終息にはならない。そうすると、人の動き、客の動きが変わって、商売として成り立たなくなる企業もあるだろうし、従来の業態のままでは存続できなくなるケースもあるだろう。一ヶ月耐えていれば元通りになるというなら良いがそうではないから、国や都がくれるという100万200万程度の一時金では焼け石に水だろう。
 コロナウイルスの感染ペースが低調になった後も、自社のビジネスの回復が見込めない場合には、無理して延命させずに早めに見切って撤退すべし。廃業も已む無し。従業員も会社都合の解雇になって失業保険がすぐに出る。どこかのタクシー会社が、「全員一旦解雇して、客足が戻ったら雇い直す」と約束して解雇したという話もあったが、それは失業保険詐欺だからダメ。それをやって良いのは、本当に廃業、撤退を決断した場合のみ。これを決断せずに、国の補助がどうなるのか、都道府県の救済策はどうなのかと、人からの支援をアテにしてズルズルと決断を遅らせてしまうと良くない。
 孫子は、

『先に戦地に処りて、敵を待つ者は佚し、後れて戦地に処りて戦いに趨く者は労す。故に善く戦う者は、人を致して人に致されず。』

 と教えてくれている。国や自治体に振り回されるのではなく、自分で考えて先回りせよ。それによって、人を致して人に致されずという状態にする。「国が~」「県が、都が~」「総理が~」「知事が~」と叫んでいても、助けてなどくれない。国や都道府県の言う通りにやっていたら必ず助かるというなら良いがそうではないだろう。要請や指示には出来る限り従うべきだが、生き残るかどうかの最後の一線は自分の頭で考えて線引きしなければならない。後になって「国のせいで~」「県のせいで、都のせいで~」「総理のせいで~」「知事のせいで~」と恨み言を言っても何にもならない。
 もちろん、コロナ騒動が長引いて、来年、再来年とウイルス感染が続いたとしても、生き残れるだけの体力、戦力、資金力があるという企業もあるだろう。だが、このウイルス感染の影響は広く遍く及ぶことになる。今はまだ影響を受けていなくても、広範囲に廃業、失業、倒産、失踪・・・・・が広がると必ず影響を受けることになるはずだ。ここは慎重に行きたい。
 孫子は、

『兵は多きを益ありとするに非ざるなり。惟だ武進すること無く、力を併せて敵を料らば、以て人を取るに足らんのみ。夫れ惟だ慮り無くして敵を易る者は、必ず人に擒にせらる。』

 とも教えてくれている。「戦争においては、兵員が多ければ良いというものではない。兵力を過信して猛進するようなことをせず、戦力を集中させ、敵情を読んで戦えば、敵を屈服させるに充分である。そもそも彼我の戦力分析もせずよく考えもしないで敵を侮り軽はずみに動くようでは、敵の捕虜にされるのが落ちである。」という教えだ。
 目に見えない敵を侮るべからず。ウイルス感染して肺炎になるよりも、目に見えない空気が、人の心や経済や社会生活を圧し潰すことになるのが怖い。
 これまでにない戦いだけに、孫子の兵法を活かしつつ、慎重に、油断せず、シビアに、経営判断をしていただきたい。

ESGにも孫子の兵法を活かす

2020-02-04

 ESGという言葉はご存じだろうか。環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の頭文字をとったもので、企業の持続的、長期的な成長のためには、従来の財務情報だけでなく、これらの観点でも企業を評価すべきであるとする考え方だ。持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)に続いて、このESGを取り上げ、孫子の兵法がSDGsだけでなく、ESGにも有効な教えであることを指摘しておきたい。
 ちなみに、このESGは株式投資の世界で良く使われる言葉である。ESG投資と言う。投資に際してその企業が地球環境や社会的責任について考えていて、企業統治が有効に機能し、地球環境保護や社会的責任を果たす具体的な行動がとられているかを評価するのだそうだ。素晴らしい考えであり、大いに結構なのだが・・・・。
 SDGsもそうだが、環境や社会の持続可能性に配慮していて、投資回収の最大化が図れるのか?疑問が残る。現在は、ESG投資のパフォーマンスが良いらしい。だがこれは、「これからはESG投資だ」「ESGの評価が高いところに投資する」「多くの機関投資家がESG投資するならESG銘柄が高騰するだろう」「であればESG投資だ」という「予言の自己成就」の結果に過ぎないのではないか。期待が期待を生み、株価が上がっている内は良いが、最後は企業業績がついて来るかどうかが問題となる。
 環境に配慮する企業であるとアピールするために、紙製ストローに切り替えたけれども、そもそも容器がプラスチック製のままだった・・・みたいなことをして、見た目だけ取り繕っていたのでは、ESGのスコアは上がっても業績は上がらないだろう。SDGsでも指摘したが、結局、地球のこと、環境のこと、社会のことを考えたら、個々の人や企業は抑制的にならなければならないだろうし、業績面やコスト面で節制が求められる。それが長期で見た時には持続性が高まることになって却ってリターンを大きくするのだと確信できるかどうか。現状の資本市場にそこまでのパラダイムシフトが起きているとはとても思えない。だが、地球環境や資源の問題が待ったなしであることもまた事実だろう。そこで孫子の兵法だ。
 環境(Environment)、社会(Social)については、SDGsとも被っているので、そちらを参考にしていただくとして、ここでは、ガバナンス(Governance)企業統治について考えてみたい。  そもそも、ガバナンスという言葉を持ち出したくらいだから、上場企業を対象としているものと思われるが、何のために上場審査をしているのかと言いたくなる。形をいくら整えても、いくら社外取締役を増やしても、監査委員会を設置しても、不正が起こる。日産のゴーンさんが有罪か無罪か、合法なのか非合法なのか知らないが、かなり勝手なことをしていたのは間違いないだろう。日産だけでなく三菱からもチェックされ、日産の上にはルノーがいて、さらにフランス政府が株主として目を光らせていても、それが出来てしまった。結果として日産のESGスコアは落ちただろうが、ゴーンさんが逮捕される前のスコアは高かったのでは?
 郵政グループ、かんぽ生命のガバナンスはどうだろう。民営化して上場もし、民間から経営者を招いて、総務省からの天下りもいて、牽制を効かせていたのではないのか。  東芝はどうだろう。日本に「委員会設置会社(現在の指名委員会等設置会社)」の制度が導入された2003年、真っ先に取り組んだのが東芝だ。「監視」と「執行」が分離され、ガバナンスの機能が高まるはずだったが、実際には社外取締役らの監視は機能せず、不正会計を見逃した・・・。
 日本企業だからダメなのだという指摘は当たらない。ルノー傘下の日産はフランス企業であり、ドイツのVWの排ガス不正など世界中で不正は起こっている。米国は言うまでもなし。形式的なガバナンスの評価など大して意味があるとは思えない。
 孫子は、

『善く兵を用うる者は、道を修めて法を保つ。故に能く勝敗の政を為す。』

 と言った。用兵に優れた者は、ものの道理、思想、考え方を踏まえて、進むべき道筋を示し、軍制やルール、評価・測定の基準を徹底させる。だからこそ、勝敗をコントロールし、勝利に導くことができるのだという教えだ。
 さらに、こうも言っている。

『令、素より行われ、以て其の民を教うれば、則ち民服す。令、素より行われず、以て其の民を教うれば、則ち民服せず。令の素より信なる者は、衆と相い得るなり。』

 軍令が、普段から徹底されており、軍律が確立されていれば、兵士は命令に従う。軍令が、普段から不徹底で、軍律が乱れていれば、命令に従うことはない。平生から軍令が徹底され、誠実にそれを守っている将軍であればこそ、兵士たちと上下の信頼関係を築くことができるのだという指摘だ。
 日産が、ガバナンスだコンプライアンスだといくら言っても、社員はトップにいるゴーンさんの平生の行いを見て、「何を言ってるんだ」と思っていたことだろう。
 要は、ガバナンスの基本は、上に立つ者の率先垂範であり、平生往生なのだ。要するに、当たり前のことであって、紀元前500年頃の孫子の時代から言われていることである。孫子の教えを経営者や幹部が学んで、実践すれば自ずとガバナンスは正されることになる。
 そして、この孫子の教えも忘れないようにしたい。

『主は怒りを以て師を興す可からず。将は慍りを以て戦いを致す可からず。利に合えば而ち動き、利に合わざれば而ち止む。怒りは復た喜ぶ可く、慍りは復た悦ぶ可きも、亡国は以て復た存す可からず、死者は以て復た生く可からず。故に明主は之を慎み、良将は之を警む。此れ国を安んじ軍を全うするの道なり。』

 君主は、一時の感情的な怒りによって戦争を起こしてはならない。将軍は、憤激に任せて戦闘に突入してはならない。国益に合っていれば、行動を起こし、利が無ければ思い止まるべきだ。
個人的な怒りの感情はやがて収まり、喜びの感情が湧くこともあるし、一時の憤激もまた静まって、愉快な気分になることもあるが、亡んだ国は立て直すことができず、死んだ者を生き返らせることもできない。だから聡明な君主は軽々しく戦争を起こさず慎重であり、優れた将軍は軽率な行動を戒めるのだ。これが国家を安泰にし、軍隊を保全する方法であるとの教えである。
 短期的な目先の利益や個人的な感情や利害で思い付きのようにビジネスをしてはならない。優秀な側近であれば、トップが暴走しようとしたら、それを諫めて止めさせろということだ。これが「国を安んじ軍を全うするの道」であり、持続可能性を高めることにつながる。
 ESGにも孫子の兵法を活かそう。

SDGsにも孫子の兵法を活かす

2020-01-28

 持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)略称SDGs(エスディージーズ)はご存じだろうか。派手なバッジをつけている人も増えて来たので、ご存じな方も多いだろう。2015年9月の国連総会で採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」で示された、持続可能な開発のための17のグローバル目標と169のターゲット(達成基準)からなる国連の開発目標である。
 目標が多過ぎて、とても実現など出来ないのでは?と心配になるが、地球にとっては良いことだろうから17の目標を参考までにご紹介しておこう。

1: あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる
2: 飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する
3: あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する
4: すべての人々への包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する
5: ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う
6: すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する
7: すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する
8: 包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある
  人間らしい雇用を促進する
9: レジリエントなインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る
10: 各国内及び各国間の不平等を是正する
11: 包摂的で安全かつレジリエントで持続可能な都市及び人間居住を実現する
12: 持続可能な生産消費形態を確保する
13: 気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる
14: 持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する
15: 陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、
  ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する
16: 持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、
  あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する
17: 持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する

 地球上のあらゆる人や国が平等かつ公平な状態に置かれ、持続可能な環境を保持するという、なんとも壮大な目標だ。
 目標は素晴らしいし、それが実現すれば良いとは思うが、このSDGsを達成するには、世界中の人や企業がよほど節制し、抑制的に行動しなければならないだろう。果たして、勝者が総取りして、弱者との格差を広げるグローバル資本主義にブレーキが掛けられるのだろうか? 米国からも株主資本主義ではなく、従業員、顧客、環境などへも配慮したステークホルダー資本主義に転換すべきとの議論が起こっているが、これがどこまで本気なのか。環境のために企業の収益が下がっても良いと本当に株主が言うのかどうか、大いに疑問ではある。
 だが、持続可能な地球であるためには、そうせざるを得ない。敵をなぎ倒し、自社だけが生き残れば良いとする獰猛かつ強欲な経営を許していては、SDGsなど達成できるはずがない。
 そこで、孫子の兵法である。2500年前のことだけに、地球環境を考えているわけではないが、自国の存続、すなわち持続可能性を最優先した教えが孫子の兵法である。自国の持続可能性を高めるためには敵国も保全し持続させよと説いた。

『孫子曰く、凡そ用兵の法は、国を全うするを上と為し、国を破るは之に次ぐ。』

 孫子は言った。基本的に、戦争においては、敵国を保全した状態で傷つけずに攻略するのが上策であり、敵国を撃ち破って勝つのは次善の策であると。
 さらに、

『軍を全うするを上と為し、軍を破るは之に次ぐ。旅を全うするを上と為し、旅を破るは之に次ぐ。卒を全うするを上と為し、卒を破るは之に次ぐ。伍を全うするを上と為し、伍を破るは之に次ぐ。』

 敵の軍団を無傷のままで降伏させるのが上策であり、敵軍を撃破するのは次善の策である。敵の旅団を無傷のまま手に入れるのが上策であり、旅団を壊滅させてしまうのは次善の策である。敵の大隊を無傷で降伏させるのが上策であり、大隊を打ち負かすのは次善の策である。敵の小隊を保全して降伏させるのが上策であり、小隊を打ち負かすのは次善の策であると言った。
 だから、

『百戦百勝は、善の善なる者に非るなり。戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり。』

 百回戦って、百回勝利を収めたとしても、それは最善の策とは言えない。実際に戦わずに、敵を屈服させるのが最善の策であると、戦わずして勝つという教えを残した。戦争だけを考えれば、敵を力任せに玉砕し、皆殺しにすることが出来れば良いのだが、その後のことを考えたら、敵をなるべく保全しておいた方が良い。なぜなら戦いは一度きりではなくその後も続くものだから。
 孫子はこうも言っている。

『上兵は謀を伐つ。其の次は交を伐つ。其の次は兵を伐つ。其の下は城を攻む。城を攻むるの法は已むを得ざるが為なり。』

 最上の戦い方は、敵の謀略、策謀を読んで無力化することであり、その次は、敵の同盟や友好関係を断ち切って孤立させることである。それができなければ、いよいよ敵と戦火を交えることになるが、その際に一番まずいのが敵の城を攻めることである。城攻めは、他に方策がない場合に仕方なく行う手段に過ぎない、と。
 なるべく戦わない。なるべく資源を無駄にしない。これが孫子の教えだ。不戦の兵法である。

『故に、善く兵を用うる者は、人の兵を屈するも、而も戦うに非るなり。人の城を抜くも、而も攻むるに非るなり。人の国を毀るも、而も久しきに非るなり。必ず全きを以て天下に争う。故に、兵頓れずして、利全うす可し。此れ謀攻の法なり。』

 だから、戦上手の戦い方は、敵軍を降伏させても、それは戦闘によってではなく、城を陥落させたとしても、城攻めによってではなく、敵国を滅ぼしたとしても、長期戦によってではない。必ず敵味方すべてを保全する形で天下に覇を競うことを考える。したがって軍の疲弊も少なく、戦利を完全なものにできるのだ。これが謀によって敵を攻略するやり方であると結論づけた。
 SDGsはまさに、謀攻の戦いである。国と国が戦闘によってではなく相手国を動かし、全世界を保全していく不戦の戦いなのだ。敵憎し、敵だからと殺し合うのではなく、敵をも貴重な資源と考えて、味方に取り込む方法を考える。勝者一人が全てを収奪するのではなく、勝者も敗者も良しとなるWIN-WINか、そもそも戦わず、勝者も敗者もなく全体を保全する。必ず全きを以て天下に争う。これが孫子の教えだ。
 目先の業績や株価、単年度の利益や報酬を考えれば、弱者を叩き潰して競合を壊滅させ、地球環境など考えずに資源を使いまくった方が良い。だが、人類の戦いは単年度で終わるわけではない。永遠に戦いは続いて行く。そこに戦国乱世が長く続くことを前提とした孫子が役立つ。
 ちなみに、敵をすべてなぎ倒し、中華統一を果たした秦は、短命で終わった。

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