孫子の兵法

孫子
 言わずと知れた、最古にして最強の兵法、『孫子』。2500年も前の、中国春秋時代に呉の兵法家、孫武によって著された兵法をただ漢文の古典として読むのではなく、現代の企業経営や組織運営、ビジネス、仕事の仕方に置き換え、応用し、実践のための智恵として活用したい。これが孫子兵法家を名乗る私の使命感です。
 この孫子ブログ「経営風林火山」は、2500年もの間、洋の東西を問わず、評価され続けて来た珠玉の教え、孫子の兵法を21世紀に生きる智恵としてどう解釈すべきかを、その時々のトピックに絡めてお伝えするものであり、孫子兵法家、長尾一洋の独自解釈も思い切って盛り込んだブログです。
 長尾一洋オフィシャルサイトには、「ブログではない雑記」というものもあって、そちらではブログを書きたくないから雑記にしたと書いているのですが、その当時からはブログの位置づけも大きく変わり、SNSが全盛の今となっては、ブログだろうと雑記だろうと似たようなもので、あまりそこにこだわるのもどうかということで、こちらではブログとしております。そのため、雑記と同様に、コメントなどの機能はありません。お許しください。
 
孫子
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まんがで身につく孫子の兵法
キングダム』で学ぶ乱世のリーダーシップ
「孫子の兵法」で勝つ仕事えらび!!
そして、重版出来!!

2020-10-20

 拙著「コンタクトレス・アプローチ テレワーク時代の営業の強化書」(KADOKAWA)の出版に当たり、一連のブログで孫子の兵法を使った「短期集中」の戦い方についてお伝えして来たが、一応その結果(戦果)として「重版出来」を勝ち取ったので、ご報告しておこうと思う。
 ちなみに、「重版出来」は、「じゅうはんしゅったい」と読む。このタイトルの漫画もありドラマ化もされたのでご存知の方もいるだろうが、普通は読めないな・・・。要するに、増刷した本が出来たよ!ということ。重版というのも一般には馴染みがないだろう。増刷のことだ。初版から2版3版と版を重ねるということで重版と言う。出版業界の人は文学好きが多いから、普通に言いたくないのかな?と思う。まぁそんなことはどうでもいい。
 8月12日に、この孫子ブログで、「勢いは険しくタイミングは短く集中」と題して、勢いを放出するタイミングは一気に短く集中させるべきだと書いた。孫子の兵法を用いて、そこから2ヶ月一気に集中して行くよと宣言したわけだ。
 次に、9月9日に「セールス・営業部門で1位ゲット」と題して、Amazonの「セールス・営業」ランキングで1位を獲得したことを報告した。途中経過の報告だ。「専りて一と為る」孫子の教えを実践しているという内容だった。
 そして、ついに、2ヶ月の短期集中攻撃の結果が出た。それが「重版出来!!」だ。初版だけで消え去る本も多い中、重版にこぎ着けたのは一先ず成功と言えるだろう。もうちょっと早くても良かったが、初版の部数が結構多めだったので、そこは已む無しとする。
 KADOKAWAさんから重版の見本が届いたので、証拠写真としてパシャリ。

『コンタクトレス・アプローチ ~テレワーク時代の営業の強化書~』


 ちょっと奥付が小さくなって読みにくいので、ZOOMしてパシャリ。ちなみに、奥付とは、著者名・発行者名・発行年月日などが書かれた箇所を指す。本の最後にあるヤツね。もう一つちなみに、ここでは第2版ではなく再版となっている。いろいろ言い方があってややこしい。初版が2020年8月20日。再版が10月10日。何とか2ヶ月は切った。

『コンタクトレス・アプローチ ~テレワーク時代の営業の強化書~』


 ということで、孫子兵法家として、孫子の兵法を現代のビジネスに応用している以上、結果を出さないわけにはいかないので、とりあえず重版になって良かった・・・。偉そうなことを言っておいて初版で終わったら恥ずかしいことになっていた。やはり、孫子の兵法は現代のビジネスにも応用できるので、皆さんにも是非しっかり学んでいただきたい。
 おかげさまで、「コンタクトレス・アプローチ テレワーク時代の営業の強化書」は短期集中攻撃が終わっても、そこそこ売れているようだし、6回もやった出版記念セミナーもまずまず好評だったので、そこからさらに踏み込んで、より戦略的に「コンタクトレス・アプローチ」を行っていくにはどうすれば良いかについて、「増刷記念セミナー」ということで、11月に改めてお伝えしようと思う。タイトルは「長期・継続的に成果を上げ続ける戦略的コンタクトレス・アプローチとは」。今度は、戦いを略す「戦略」がキーワードだ。3回開催するので是非ご受講いただきたい。もちろん、コンタクトレス(非接触)のWEBセミナー。出版記念セミナーを受講した人にも聴いてもらえば良いが、そもそものコンタクトレス・アプローチを説明する部分は被った内容になることをご承知いただきたい。
 コンタクトレス・アプローチを戦略的に行うためにはどうすれば良いのか、孫子兵法家が解説する。戦略的な内容だけに、経営者やマネージャークラスの方が聴いた方が良いだろう。
 とりあえず、今回は、重版出来のご報告をさせていただいた。感謝。

セールス・営業分野で1位ゲット

2020-09-09

 前回、このブログで「コンタクトレス・アプローチ」の出版に当たり「勢いは険しくタイミングは短く集中」で孫子兵法家らしく攻めると宣言した。ここで途中経過を報告しておこうと思う。
 なんと、「コンタクトレス・アプローチ テレワーク時代の営業の強化書」(KADOKAWA)は、Amazonの「セールス・営業」ランキングで1位を獲得した!!
 こちらがその証拠画像↓↓↓

『コンタクトレス・アプローチ ~テレワーク時代の営業の強化書~』


 「セールス・営業」という限られたカテゴリーの瞬間風速に過ぎないだろうとお考えの人もいるだろう。たしかにそうだ。カテゴリー領域は狭いし、ずっと1位が続いているわけではない。だがそれで上等だ。それこそが孫子兵法家の戦い方だと言ってもいいだろう。
 孫子は、

『我は専りて一と為り、敵は分かれて十と為らば、是れ、十を以て其の一を攻むるなり。』

 と、限られた領域に絞り込むことを教えてくれている。そもそも営業の本であり、営業に関心のない人が読んでも意味はないのだから、「セールス・営業」で1位ならそれで良し。絞り込んでこその孫子である。
 そして、元々「勢いは険しくタイミングは短く集中」戦略だから、瞬間風速で結構。一気に集中して結果を出す。それによって、このブログで、こうして1位になったぞという証拠画像を見せることができる。だらだらと2位とか3位とか4位とか、また2位とか・・・まぁまぁそこそこでしたというよりも、一気に「1位」と言える方が良い。
 発売から3週間ほどが経過して、出版記念セミナーも始まったので、改めて攻勢をかけて行こうと思う。一般書店さんでもまずまずな動きということなので、次の波を起こせるように、孫子兵法家としての手を打ちたいと思う。
 いずれにしても、Withコロナで客先訪問や出張に制約がある中で「コンタクトレス・アプローチ」は急務だろうし、これを単にリアル訪問をWEB商談、リモート商談に置き換えればOKと勘違いしている人も多いから、「コンタクトレス・アプローチ」をより多くの人に読んでもらい、出版記念セミナーも聞いてもらって、Afterコロナでコロナ感染リスクがなくなっても有効な営業改革につなげていただきたい。
 ちなみに、出版記念セミナーでは、本には書いていない新ネタも披露しているのでご興味のある方は是非セミナーもご受講いただきたい。当然のことながらオンラインのWEBセミナーでコンタクトレスだから、地方の方でもお気軽に聴いていただける。「コンタクトレス最高」。

勢いは険しくタイミングは短く集中

2020-08-12

 コロナウィルスの感染拡大による緊急事態で、客先訪問ができず立ち往生した営業部隊を救うために提唱した「コンタクトレス・アプローチ」がついに本になった。緊急事態だけに、KADOKAWAさんにも「疾きこと風の如く」対応してもらって、来週には店頭に並ぶはずである。緊急事態宣言は終わったが、まだまだ世間は感染拡大で大騒ぎだから、是非本書を読んで、これからのWithコロナ、Afterコロナをどう乗り切るか、しっかり考えていただきたい。

『コンタクトレス・アプローチ ~テレワーク時代の営業の強化書~』


 もちろん、孫子兵法家が出す本だから、安易にコロナ騒動に乗っかった軽いノリのものではなく、孫子の兵法に基づく考察によって生み出したものだ。コロナウィルスによるパンデミックというマイナスをプラスに活かすにはどうするかと考えたのも孫子

『智者の慮は、必ず利害を雑う。利に雑うれば、而ち務は信なる可し。害に雑うれば、而ち患いは解く可し。』

 という教えによる。害の裏には利があると考えるから患いを解くことができる。コロナだ、自粛だ、困った、参った、と騒いでいるだけでは何も解決しない。そこから生まれたのが「コンタクトレス・アプローチ」だ。
 だが、今回の本題はそこではない。
 孫子兵法家が本を出す以上、孫子の兵法を使わないわけにはいかない。緊急事態宣言でステイホームと言われた時から企画、執筆、編集、製本に至るスピード対応は、「風林火山」並みの機動力だったとも言えるのだが、それはもう終わった話だから、これからの話をしよう。孫子はこう言った。

『激水の疾くして、石を漂わすに至る者は勢なり。鷙鳥の撃ちて毀折に至る者は、節なり。是の故に善く戦う者は、其の勢は険にして、其の節は短なり。勢は弩を彍るが如く、節は機を発するが如し。』

  水の流れが激しくて岩石をも漂わせるのは、その水に勢いがあるからである。猛禽が急降下して一撃で獲物を打ち砕くのは、絶妙のタイミングだからである。したがって戦上手は、その戦闘に投入する勢いを大きく険しくし、その勢いを放出するのは一瞬の間に集中させる。勢いを蓄えるのは弩(弓)の弦を一杯に引くようなものであり、節(タイミング)とは、その引き金を引く時のようなものである、という教えだ。
 戦う時に大切なことは、勢いとタイミング。その勢いは険、タイミングは短でなければならない。水に勢いが加わると、土砂災害を生むことがあるようにとても危険である。逆に言えば、危険なほどの勢いが必要だということだ。
 さらにその勢いを放出するタイミングは一気に短く集中させる。そもそも勢いがあるところに持ってきて、さらにそれを短時間に集中させるということ。まるで線状降水帯ができて短時間に猛烈な雨が降るような感じだ。時に、人の命をも奪いかねない自然の猛威のような戦い方。それが孫子の教えだ。
 来週、書店に本が並んだら、ラジオ、新聞、雑誌、メルマガ等を使って怒涛の告知で勢いをつける。そして、そこから怒涛の出版記念セミナーを短期間に集中して行う。
 まず9月3日のKADOKAWAさんの出版記念セミナーだ。タイトルは、「会わずに売れる」テレワーク時代の営業術。19:00~21:00のリアルとオンラインを融合させたイベントになる。
https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/01g10n114cv3d.html
 翌週からは、弊社主催の出版記念セミナー「営業のニューノーマル『コンタクトレス・アプローチ』~非接触でも売れる営業手法とは~」を、9月8日、15日、23日、29日、10月8日、15日と一気に6回開催する。WEBセミナーだから全国どこからでもご参加いただける。この2ケ月弱の短期間に勢いを集中させて、「コンタクトレス・アプローチ」を広める戦略だ。
 ちょっとセミナー回数が多いかもしれない・・・ちょっと告知し過ぎかもしれない・・・のだが、岩をも押し流すには勢いが重要であり、それが短期集中でなければインパクトがないというのが孫子兵法の考え方である。
 さて、その結果がどうなるか。乞うご期待。その前にまず「コンタクトレス・アプローチ」をお読みください。

千里を一気に飛ぶコンタクトレス・アプローチ

2020-06-17

 長距離・長時間の移動は営業効率を著しく阻害する。泊りがけの出張対応ともなれば尚更だ。時間もかかるがコストもかかり、本人の疲労もあるだろう。加えて、今は新型コロナウイルスの影響で、客から「来るな」と言われ、法人営業だと「在宅勤務なので来てもらってもいませんよ」と言われる。在宅勤務中の自宅にズカズカ押し掛けるわけにも行かない。
 そこで、「コンタクトレス(非接触)アプローチ」だ。コンタクトレス・アプローチとは、「顧客へのリアル訪問(コンタクト)を減らして、逆にアプローチ数を増やすことでより大きな成果を上げる一連の営業行為」を言う。WEBを使って千里の道を一気に飛び、非接触で商談を進めるのだ。
 孫子は、

『千里を行きて労せざる者は、無人の地を行けばなり。攻めて必ず取る者は、其の守らざる所を攻むればなり。守りて必ず固き者は、其の攻めざる所を守ればなり。故に、善く攻むる者には、敵、其の守る所を知らず。善く守る者には、敵、其の攻むる所を知らず。微なるかな微なるかな、無形に至る。神なるかな神なるかな、無声に至る。故に能く敵の司命を為す。』

 と、教えてくれている。千里もの長距離を遠征しても疲労が少ないのは、無人のサイバー空間を移動しているからだ。まさに、微なるかな微なるかな、形も無く、目には見えない。神なるかな 神なるかな、車の音も、電車の音も、飛行機の音もしないのに、たしかにそこにやって来て、顔を見ながら話ができる。
 もし、孫武が、この21世紀に現れて、「コンタクトレス(非接触)アプローチ」を知ったら、「微なるかな微なるかな、神なるかな神なるかな」と感嘆し感動したことだろう。戦争に置き換えればサイバー攻撃のようなものか。姿かたちもなく、音もなく、攻撃され、データを抜かれたり破壊されたりする・・・。
 もちろん、「コンタクトレス(非接触)アプローチ」は平和利用であって、誰かを攻撃するわけではないし、4つのメリットがある。これを4Eと呼ぶ。
       ◇Environment        環境
       ◇Ecology               生態系
       ◇Efficiency             効率
       ◇Economic            経済的
の4つであり、資源を無駄遣いせず二酸化炭素の放出も抑えて地球に優しく、時間効率も良くてコストも引き下げられるということだ。ESGやSDGsに取り組んでいる企業は絶対に取り組むべきものだろう。
 そして、もちろん、Antivirus、ウイルス感染対策にもなる。だが、ウイルス感染対策はオマケみたいなものだ。ウイルス感染はやがて終息するだろうし、ワクチンが開発される時もやって来る。そうなってもコンタクトレス・アプローチを増やして行きたい。なぜなら4Eという大きなメリットがあるからだ。千里の道を一気に飛ぶことによるメリットだ。
 今現在、コロナウイルスの感染が騒がれている間に、コンタクトレス・アプローチを進めるべきである。客の側が、「来るな」「訪問しなくていい」と言ってくれていることを逆手にとって、コンタクトレス・アプローチを当たり前にする。これを他社に先んじて進めることが出来た会社が、このコロナ騒動を逸早く抜け出し、Afterコロナ時代に優位に立つことが出来るだろう。
 コロナで営業が出来ない、移動が出来ない、商談が進まない、と言い訳しているヒマがあったら、コンタクトレス・アプローチの体制を整えて、リアル訪問以上の成果をあげられるようにすべきである。それが孫子の「千里を行きて労せざる」兵法の実践である。

コロナウイルスとの戦い

2020-04-17

 新型コロナウイルスの感染がパンデミックとなり、世界中の経済活動も市民生活も停滞してしまっている。日本では緊急事態宣言が出て、外出自粛が叫ばれ、企業には休業か在宅のテレワークが求められている。直接的に休業を求められている業種はもとより、そうではない業種、業態であっても、この自粛・制限措置は回りまわって大きなマイナスをもたらすだろう。経営者は、嫌でも目に見えないウイルスとの戦いに挑まなければならない。
 さて、このこれまでに経験のない戦いにどう臨んだものか。
 孫子は、

『彼を知り己を知らば、百戦殆うからず。彼を知らずして己を知らば、一勝一負す。彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず殆うし。』

 有名な一節なので、解説の必要もないだろう。まず、目に見えない敵と戦うには、この敵のことを知ることだ。新型とはいえ、このコロナウイルスは感染拡大が始まってからすでに4ヶ月が経過していて、世界中のデータもある。このウイルスがどこでどう生まれたかは諸説あり、信じたくもないような話も多く、真相を知ることは出来ないが、そのウイルスによってもたらされているデータ、結果、研究成果は知ることが出来る。私は孫子兵法家であって、感染症やウイルスの専門家ではないので、ここに私の判断は書かないが、世間一般にテレビなどで言われているようなものとは違う判断をしている。様々な意見があり研究者も色々なので何を信じてどう判断するかは自分で考えるしかない。
 彼を知ったら、次に己を知ろう。果たして自社はこのコロナウイルスとの戦いに勝てるだけの戦力・体力があるかどうか。国や都道府県の指示や命令、また支援策によってどういう影響を受けるかを冷静に考えなければならない。
 孫子は、

『用兵の法は、十なれば則ち之を囲む。五なれば則ち之を攻む。倍すれば則ち之を分かつ。敵すれば則ち能く之と戦う。少なければ則ち能く之を逃る。若かざれば則ち能く之を避く。故に、小敵の堅なるは大敵の擒なり。』

 と言った。目に見えない新型コロナウイルスを十倍の力で封じ込めるだけの力がある企業はないだろうから、ここで考えておくべきは、場合によっては、逃げる、避ける、撤退、退却の判断も必要となるということだ。「ウイルスになんか負けないぞ」「コロナビールを飲んでアルコール消毒だ」などと根拠のない精神論で戦いを挑んではならない。小敵の堅なるは大敵の擒なりである。
 ウイルス感染がいつ収束するか、どういう状態になったら緊急事態宣言を解除するのか、見通せない。コロナウイルスそのものよりも、この時期が不確定という驚異が経営的には怖い。緊急事態宣言が仮に連休明けに解除となっても、ウイルスが完全にゼロになる終息にはならない。そうすると、人の動き、客の動きが変わって、商売として成り立たなくなる企業もあるだろうし、従来の業態のままでは存続できなくなるケースもあるだろう。一ヶ月耐えていれば元通りになるというなら良いがそうではないから、国や都がくれるという100万200万程度の一時金では焼け石に水だろう。
 コロナウイルスの感染ペースが低調になった後も、自社のビジネスの回復が見込めない場合には、無理して延命させずに早めに見切って撤退すべし。廃業も已む無し。従業員も会社都合の解雇になって失業保険がすぐに出る。どこかのタクシー会社が、「全員一旦解雇して、客足が戻ったら雇い直す」と約束して解雇したという話もあったが、それは失業保険詐欺だからダメ。それをやって良いのは、本当に廃業、撤退を決断した場合のみ。これを決断せずに、国の補助がどうなるのか、都道府県の救済策はどうなのかと、人からの支援をアテにしてズルズルと決断を遅らせてしまうと良くない。
 孫子は、

『先に戦地に処りて、敵を待つ者は佚し、後れて戦地に処りて戦いに趨く者は労す。故に善く戦う者は、人を致して人に致されず。』

 と教えてくれている。国や自治体に振り回されるのではなく、自分で考えて先回りせよ。それによって、人を致して人に致されずという状態にする。「国が~」「県が、都が~」「総理が~」「知事が~」と叫んでいても、助けてなどくれない。国や都道府県の言う通りにやっていたら必ず助かるというなら良いがそうではないだろう。要請や指示には出来る限り従うべきだが、生き残るかどうかの最後の一線は自分の頭で考えて線引きしなければならない。後になって「国のせいで~」「県のせいで、都のせいで~」「総理のせいで~」「知事のせいで~」と恨み言を言っても何にもならない。
 もちろん、コロナ騒動が長引いて、来年、再来年とウイルス感染が続いたとしても、生き残れるだけの体力、戦力、資金力があるという企業もあるだろう。だが、このウイルス感染の影響は広く遍く及ぶことになる。今はまだ影響を受けていなくても、広範囲に廃業、失業、倒産、失踪・・・・・が広がると必ず影響を受けることになるはずだ。ここは慎重に行きたい。
 孫子は、

『兵は多きを益ありとするに非ざるなり。惟だ武進すること無く、力を併せて敵を料らば、以て人を取るに足らんのみ。夫れ惟だ慮り無くして敵を易る者は、必ず人に擒にせらる。』

 とも教えてくれている。「戦争においては、兵員が多ければ良いというものではない。兵力を過信して猛進するようなことをせず、戦力を集中させ、敵情を読んで戦えば、敵を屈服させるに充分である。そもそも彼我の戦力分析もせずよく考えもしないで敵を侮り軽はずみに動くようでは、敵の捕虜にされるのが落ちである。」という教えだ。
 目に見えない敵を侮るべからず。ウイルス感染して肺炎になるよりも、目に見えない空気が、人の心や経済や社会生活を圧し潰すことになるのが怖い。
 これまでにない戦いだけに、孫子の兵法を活かしつつ、慎重に、油断せず、シビアに、経営判断をしていただきたい。

ESGにも孫子の兵法を活かす

2020-02-04

 ESGという言葉はご存じだろうか。環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の頭文字をとったもので、企業の持続的、長期的な成長のためには、従来の財務情報だけでなく、これらの観点でも企業を評価すべきであるとする考え方だ。持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)に続いて、このESGを取り上げ、孫子の兵法がSDGsだけでなく、ESGにも有効な教えであることを指摘しておきたい。
 ちなみに、このESGは株式投資の世界で良く使われる言葉である。ESG投資と言う。投資に際してその企業が地球環境や社会的責任について考えていて、企業統治が有効に機能し、地球環境保護や社会的責任を果たす具体的な行動がとられているかを評価するのだそうだ。素晴らしい考えであり、大いに結構なのだが・・・・。
 SDGsもそうだが、環境や社会の持続可能性に配慮していて、投資回収の最大化が図れるのか?疑問が残る。現在は、ESG投資のパフォーマンスが良いらしい。だがこれは、「これからはESG投資だ」「ESGの評価が高いところに投資する」「多くの機関投資家がESG投資するならESG銘柄が高騰するだろう」「であればESG投資だ」という「予言の自己成就」の結果に過ぎないのではないか。期待が期待を生み、株価が上がっている内は良いが、最後は企業業績がついて来るかどうかが問題となる。
 環境に配慮する企業であるとアピールするために、紙製ストローに切り替えたけれども、そもそも容器がプラスチック製のままだった・・・みたいなことをして、見た目だけ取り繕っていたのでは、ESGのスコアは上がっても業績は上がらないだろう。SDGsでも指摘したが、結局、地球のこと、環境のこと、社会のことを考えたら、個々の人や企業は抑制的にならなければならないだろうし、業績面やコスト面で節制が求められる。それが長期で見た時には持続性が高まることになって却ってリターンを大きくするのだと確信できるかどうか。現状の資本市場にそこまでのパラダイムシフトが起きているとはとても思えない。だが、地球環境や資源の問題が待ったなしであることもまた事実だろう。そこで孫子の兵法だ。
 環境(Environment)、社会(Social)については、SDGsとも被っているので、そちらを参考にしていただくとして、ここでは、ガバナンス(Governance)企業統治について考えてみたい。  そもそも、ガバナンスという言葉を持ち出したくらいだから、上場企業を対象としているものと思われるが、何のために上場審査をしているのかと言いたくなる。形をいくら整えても、いくら社外取締役を増やしても、監査委員会を設置しても、不正が起こる。日産のゴーンさんが有罪か無罪か、合法なのか非合法なのか知らないが、かなり勝手なことをしていたのは間違いないだろう。日産だけでなく三菱からもチェックされ、日産の上にはルノーがいて、さらにフランス政府が株主として目を光らせていても、それが出来てしまった。結果として日産のESGスコアは落ちただろうが、ゴーンさんが逮捕される前のスコアは高かったのでは?
 郵政グループ、かんぽ生命のガバナンスはどうだろう。民営化して上場もし、民間から経営者を招いて、総務省からの天下りもいて、牽制を効かせていたのではないのか。  東芝はどうだろう。日本に「委員会設置会社(現在の指名委員会等設置会社)」の制度が導入された2003年、真っ先に取り組んだのが東芝だ。「監視」と「執行」が分離され、ガバナンスの機能が高まるはずだったが、実際には社外取締役らの監視は機能せず、不正会計を見逃した・・・。
 日本企業だからダメなのだという指摘は当たらない。ルノー傘下の日産はフランス企業であり、ドイツのVWの排ガス不正など世界中で不正は起こっている。米国は言うまでもなし。形式的なガバナンスの評価など大して意味があるとは思えない。
 孫子は、

『善く兵を用うる者は、道を修めて法を保つ。故に能く勝敗の政を為す。』

 と言った。用兵に優れた者は、ものの道理、思想、考え方を踏まえて、進むべき道筋を示し、軍制やルール、評価・測定の基準を徹底させる。だからこそ、勝敗をコントロールし、勝利に導くことができるのだという教えだ。
 さらに、こうも言っている。

『令、素より行われ、以て其の民を教うれば、則ち民服す。令、素より行われず、以て其の民を教うれば、則ち民服せず。令の素より信なる者は、衆と相い得るなり。』

 軍令が、普段から徹底されており、軍律が確立されていれば、兵士は命令に従う。軍令が、普段から不徹底で、軍律が乱れていれば、命令に従うことはない。平生から軍令が徹底され、誠実にそれを守っている将軍であればこそ、兵士たちと上下の信頼関係を築くことができるのだという指摘だ。
 日産が、ガバナンスだコンプライアンスだといくら言っても、社員はトップにいるゴーンさんの平生の行いを見て、「何を言ってるんだ」と思っていたことだろう。
 要は、ガバナンスの基本は、上に立つ者の率先垂範であり、平生往生なのだ。要するに、当たり前のことであって、紀元前500年頃の孫子の時代から言われていることである。孫子の教えを経営者や幹部が学んで、実践すれば自ずとガバナンスは正されることになる。
 そして、この孫子の教えも忘れないようにしたい。

『主は怒りを以て師を興す可からず。将は慍りを以て戦いを致す可からず。利に合えば而ち動き、利に合わざれば而ち止む。怒りは復た喜ぶ可く、慍りは復た悦ぶ可きも、亡国は以て復た存す可からず、死者は以て復た生く可からず。故に明主は之を慎み、良将は之を警む。此れ国を安んじ軍を全うするの道なり。』

 君主は、一時の感情的な怒りによって戦争を起こしてはならない。将軍は、憤激に任せて戦闘に突入してはならない。国益に合っていれば、行動を起こし、利が無ければ思い止まるべきだ。
個人的な怒りの感情はやがて収まり、喜びの感情が湧くこともあるし、一時の憤激もまた静まって、愉快な気分になることもあるが、亡んだ国は立て直すことができず、死んだ者を生き返らせることもできない。だから聡明な君主は軽々しく戦争を起こさず慎重であり、優れた将軍は軽率な行動を戒めるのだ。これが国家を安泰にし、軍隊を保全する方法であるとの教えである。
 短期的な目先の利益や個人的な感情や利害で思い付きのようにビジネスをしてはならない。優秀な側近であれば、トップが暴走しようとしたら、それを諫めて止めさせろということだ。これが「国を安んじ軍を全うするの道」であり、持続可能性を高めることにつながる。
 ESGにも孫子の兵法を活かそう。

SDGsにも孫子の兵法を活かす

2020-01-28

 持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)略称SDGs(エスディージーズ)はご存じだろうか。派手なバッジをつけている人も増えて来たので、ご存じな方も多いだろう。2015年9月の国連総会で採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」で示された、持続可能な開発のための17のグローバル目標と169のターゲット(達成基準)からなる国連の開発目標である。
 目標が多過ぎて、とても実現など出来ないのでは?と心配になるが、地球にとっては良いことだろうから17の目標を参考までにご紹介しておこう。

1: あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる
2: 飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する
3: あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する
4: すべての人々への包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する
5: ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う
6: すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する
7: すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する
8: 包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある
  人間らしい雇用を促進する
9: レジリエントなインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る
10: 各国内及び各国間の不平等を是正する
11: 包摂的で安全かつレジリエントで持続可能な都市及び人間居住を実現する
12: 持続可能な生産消費形態を確保する
13: 気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる
14: 持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する
15: 陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、
  ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する
16: 持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、
  あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する
17: 持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する

 地球上のあらゆる人や国が平等かつ公平な状態に置かれ、持続可能な環境を保持するという、なんとも壮大な目標だ。
 目標は素晴らしいし、それが実現すれば良いとは思うが、このSDGsを達成するには、世界中の人や企業がよほど節制し、抑制的に行動しなければならないだろう。果たして、勝者が総取りして、弱者との格差を広げるグローバル資本主義にブレーキが掛けられるのだろうか? 米国からも株主資本主義ではなく、従業員、顧客、環境などへも配慮したステークホルダー資本主義に転換すべきとの議論が起こっているが、これがどこまで本気なのか。環境のために企業の収益が下がっても良いと本当に株主が言うのかどうか、大いに疑問ではある。
 だが、持続可能な地球であるためには、そうせざるを得ない。敵をなぎ倒し、自社だけが生き残れば良いとする獰猛かつ強欲な経営を許していては、SDGsなど達成できるはずがない。
 そこで、孫子の兵法である。2500年前のことだけに、地球環境を考えているわけではないが、自国の存続、すなわち持続可能性を最優先した教えが孫子の兵法である。自国の持続可能性を高めるためには敵国も保全し持続させよと説いた。

『孫子曰く、凡そ用兵の法は、国を全うするを上と為し、国を破るは之に次ぐ。』

 孫子は言った。基本的に、戦争においては、敵国を保全した状態で傷つけずに攻略するのが上策であり、敵国を撃ち破って勝つのは次善の策であると。
 さらに、

『軍を全うするを上と為し、軍を破るは之に次ぐ。旅を全うするを上と為し、旅を破るは之に次ぐ。卒を全うするを上と為し、卒を破るは之に次ぐ。伍を全うするを上と為し、伍を破るは之に次ぐ。』

 敵の軍団を無傷のままで降伏させるのが上策であり、敵軍を撃破するのは次善の策である。敵の旅団を無傷のまま手に入れるのが上策であり、旅団を壊滅させてしまうのは次善の策である。敵の大隊を無傷で降伏させるのが上策であり、大隊を打ち負かすのは次善の策である。敵の小隊を保全して降伏させるのが上策であり、小隊を打ち負かすのは次善の策であると言った。
 だから、

『百戦百勝は、善の善なる者に非るなり。戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり。』

 百回戦って、百回勝利を収めたとしても、それは最善の策とは言えない。実際に戦わずに、敵を屈服させるのが最善の策であると、戦わずして勝つという教えを残した。戦争だけを考えれば、敵を力任せに玉砕し、皆殺しにすることが出来れば良いのだが、その後のことを考えたら、敵をなるべく保全しておいた方が良い。なぜなら戦いは一度きりではなくその後も続くものだから。
 孫子はこうも言っている。

『上兵は謀を伐つ。其の次は交を伐つ。其の次は兵を伐つ。其の下は城を攻む。城を攻むるの法は已むを得ざるが為なり。』

 最上の戦い方は、敵の謀略、策謀を読んで無力化することであり、その次は、敵の同盟や友好関係を断ち切って孤立させることである。それができなければ、いよいよ敵と戦火を交えることになるが、その際に一番まずいのが敵の城を攻めることである。城攻めは、他に方策がない場合に仕方なく行う手段に過ぎない、と。
 なるべく戦わない。なるべく資源を無駄にしない。これが孫子の教えだ。不戦の兵法である。

『故に、善く兵を用うる者は、人の兵を屈するも、而も戦うに非るなり。人の城を抜くも、而も攻むるに非るなり。人の国を毀るも、而も久しきに非るなり。必ず全きを以て天下に争う。故に、兵頓れずして、利全うす可し。此れ謀攻の法なり。』

 だから、戦上手の戦い方は、敵軍を降伏させても、それは戦闘によってではなく、城を陥落させたとしても、城攻めによってではなく、敵国を滅ぼしたとしても、長期戦によってではない。必ず敵味方すべてを保全する形で天下に覇を競うことを考える。したがって軍の疲弊も少なく、戦利を完全なものにできるのだ。これが謀によって敵を攻略するやり方であると結論づけた。
 SDGsはまさに、謀攻の戦いである。国と国が戦闘によってではなく相手国を動かし、全世界を保全していく不戦の戦いなのだ。敵憎し、敵だからと殺し合うのではなく、敵をも貴重な資源と考えて、味方に取り込む方法を考える。勝者一人が全てを収奪するのではなく、勝者も敗者も良しとなるWIN-WINか、そもそも戦わず、勝者も敗者もなく全体を保全する。必ず全きを以て天下に争う。これが孫子の教えだ。
 目先の業績や株価、単年度の利益や報酬を考えれば、弱者を叩き潰して競合を壊滅させ、地球環境など考えずに資源を使いまくった方が良い。だが、人類の戦いは単年度で終わるわけではない。永遠に戦いは続いて行く。そこに戦国乱世が長く続くことを前提とした孫子が役立つ。
 ちなみに、敵をすべてなぎ倒し、中華統一を果たした秦は、短命で終わった。

ONE TEAMも孫子の教え?

2019-12-04

 2019年の「ユーキャン新語・流行語大賞」の年間大賞にラグビー日本代表が掲げた「ONE TEAM」が選ばれた。ラグビーW杯での日本代表の活躍を受け、ラグビーが盛り上がっている。とは言うものの、流行語にノミネートされた30候補のうち、ラグビー関連が5つもあって、ちょっと多過ぎな感じもある。最近のことだから記憶に鮮明なだけではないのか。
 「ONE TEAM」以外に、「ジャッカル」「にわかファン」「4年に一度じゃない。一生に一度だ。」「笑わない男」が候補として挙げられていたわけだが、まだ年間を通じて流行したという実感はないのではないか。まさに「にわかファン」状態。この「にわかファン」が定着するかどうかがラグビー界にとっては重要だろうが、来年はオリンピックもあるし、「にわかファン」が他の競技に流れかねない。
 さて、この「ONE TEAM」という言葉だが、ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチが就任して1カ月後の2016年10月28日に、欧州遠征メンバーの発表会見で初めて遣った言葉だそうだ。
 この時のメンバー構成が、前回の2015年W杯代表から12人で、初代表選出は17人という新旧メンバーが混在する状態だったということで、「一体感のある組織を目指そう」と選手らも加わって決めたものを、ジョセフヘッドコーチが発表したということらしい。
 今回2019年大会での日本代表は、7カ国15人の海外出身選手を含む31人。まさにダイバーシティ。日本国籍がなくても日本代表になれるというラグビー独特のルールが、日本人だから、日の丸を背負うからという分かりやすい求心力を使えなくしているだけに、より「ONE TEAM」であることに価値があったのだろう。
 「ONE TEAM」になった組織は強い。だから孫子の兵法にはこういう教えがある。

『古の善く兵を用うる者は、能く敵人をして前後相及ばず、衆寡相恃まず、貴賎相救わず、上下相扶けざらしむ。卒離れて集まらず、兵合して斉わざらしむ。』

 昔から戦上手な将軍は、敵の前衛と後衛の連携を断ち、大部隊と小部隊が協力し合わないようにし、身分の高い者と低い者が支援し合わないようにし、上官と部下が助け合わないように仕向けて、敵兵が分散していれば集結しないようにし、集合したとしても戦列が整わないように仕向け、戦闘が有利に進められるようにしたものだという教えだ。
 まさに敵を「ONE TEAM」にさせない、敵が「ONE TEAM」であったならそれを引き裂いて分断させよという教えである。
 すなわち、ラグビー日本代表の「ONE TEAM」というスローガンは、孫子の兵法の逆利用ということである。個々の能力が高く、個々が強くても、その連携が悪く、協力して動けないなら、組織として強くはなれない。孫子には、敵同士が協力する「呉越同舟」という教えもあるが、味方同士でも多種多様な人材が集まればベクトルもバラバラになりがちなところを、一つにまとまって「ONE TEAM」になった時、1+1が2ではなく、3にも4にもなるような結果を生むのだろう。
 皆さんの組織や会社も、2020年に向けて「ONE TEAM」になれるようラグビー日本代表に倣って合宿でもしてみてはいかがだろうか。

孫子であきない話

2019-10-03

 5月に「ラジオで孫子のプロパガンダ」と題して、文化放送のラジオで孫子兵法の流布活動を始めたことを書いたが、それがこの10月から、正しくは9月30日からだが、30分番組「長尾一洋 孫子であきない話」に拡大したことをご報告したい。
 番組の一コーナーから、独立した番組になったわけだから、時間も長くなって孫子の説明もじっくり出来るようになった。孫子のプロパガンダとしては良いことだが、聴いている側が「長いな・・・」と感じるようではダメだから、準備も大変だ。話してばかりでは飽きられてしまうから、音楽もかける。選曲も、私、孫子兵法家、長尾一洋。音楽に詳しいわけでもないのに、毎度選曲しなければならない。それも経営者やビジネスマンを元気づける曲にせよという条件付き。そのためにわざわざ曲を聴く時間もないから、知っている曲(すなわち古い曲)の中からセレクトするしかなし。
 まぁ若い人も、古い曲だからこその発見があるかもしれないし、同年代の人にとっては懐かしい曲が聴けて良かったということになるかもしれないから、それで良いことにしておく。
 孫子は、

『凡そ戦いは、正を以て合い、奇を以て勝つ。故に、善く奇を出す者は窮まり無きこと天地の如く、竭きざること江河(河海)の如し。』

 と、教えてくれているから、私にとって奇法である音楽という手段で、誰かしらを元気づけたり勇気づけたり出来たら、その分、私の引き出しが増えたとも言えるわけで、「窮まり無きこと天地の如く」打ち手が増えたと考えたい。
 「孫子兵法家がこんな曲を聴いているのか」というサプライズも良し。「さすが、孫子兵法家はこんな音楽を聴くんだな」と感心してもらえるのも良し。奇が正になり、正が奇になって、「竭きざること江河(河海)の如し」となる。
 ちなみに、放送は毎週月曜日の夜8時から。詳しくは、番組のWEBページもあるからそちらを見ていただいて、ラジオで聴けない人は、radikoで聴いていただきたい。文化放送のエリア外の人は、申し訳ないが、radikoの有料版でどうぞ。
 番組のお相手は、フリーアナウンサーの小尾渚沙さん。なんと、1989年生まれということで、親子ほど歳が離れている若い女性だ。普段、若い女性と話すのはうちの社員くらいだから、会話の話題もないのだが、趣味がラグビー観戦、ビールを飲むこと、資格をとることだそうで・・・、趣味も合わない(笑)。
 番組内に、コーナーが2つあって、一つは、「長尾一洋の“きまぐれ孫子”」。もう一つが「古今東西 お悩みコンサルティング」というものだ。
 気まぐれ孫子は、その時々の話題やトピックを取り上げて、私が孫子の兵法で斬る!!というもの。このブログみたいなものかな。
 お悩みコンサルティングは、リスナーから寄せられた悩み相談に孫子兵法家が答える!!というものなので、私にご質問のある方は、是非番組の方へメールをください。タダで回答いたします(笑)。いや、なんと、採用されたら1000円分のクオカードがもらえる!!コンサルティング料をもらうのではなく千円払うというのが悲しいが、そんな超お得なコーナーもあったりする。
 ということで、孫子兵法の普及啓蒙、企業経営への応用について、引き続き頑張ってまいります。文化放送の、「長尾一洋 孫子であきない話」是非お聴きください。

営業マンは売り子ではなく間諜である

2019-08-02

 かんぽ生命の不適切販売が問題になっている。保険料の二重徴収や顧客に不利益を与える契約乗り換え、自分達の評価のために無保険期間を作ったりと、「不適切」という言葉で許して良いのかと疑問に思う。一部の営業担当者が歩合給欲しさに過剰なトークで「不適切」な受注をしてしまっていましたという話ではなく、過去5年間で18万件以上の「不適切」販売があったというのは、組織的犯罪、組織的詐欺行為と言えるのではないか。かんぽ生命には全部で3000万件の契約があると言うから、そのうちの18万件など取るに足らないと思っているのかどうか分からないが、18万件という数字は決して取るに足らない数ではないだろう。
 経営陣の謝罪会見もあったが、営業現場の実態を知らなかったのであれば経営者として稚拙であり、危機感が無さ過ぎるし、実態を知っていたのであれば日本郵政という組織の成り立ちから考えても極めて悪質である。きっと日本郵政やかんぽ生命には、そんな悪人はいないだろうと仮定すると、孫子兵法家としては、経営層の甘さと認識違いを指摘しておかなければならない。(ここで、郵便局の人に悪い人はいないと思わせてしまうところがこの組織の罪なところだろう・・・)

 日本郵政やかんぽ生命に関心があるわけでもないし、内部を調べたわけでもないので、報道されているような公開情報を元にするしかないが、まずこの人口減少と高齢化が急速に進んでいる日本国内をメイン市場としているのに、新規契約(売上増)の目標が高過ぎる。経営層がこの目標を本気で達成しようと考えているなら、すでに全国津々浦々まで営業していて3000万件の既存契約があった上で、大した新規性・独自性のない商品をさらに売り込んで行く具体的な方策、戦略・戦術がなければならない。それもないのに、ただ目標を設定して部門や個人にノルマとして押し付ければ気合と根性で達成してくれるだろうと考えていたとしたらあまりに楽観的過ぎる。
 そこまで考えのないことはやらないだろうとなると、具体的な方策があり、戦略・戦術が練られていたことになるが、もしそうであるならかなり難しいチャレンジをしなければならないだろうから、その仮説検証すなわち現場の実態をつかんで適時適切に対応策を練る必要があり、もっと営業現場(戦略実行の最前線)に関心を持つべきだっただろう。
 その際に大切なことは、営業担当者を単なる商品を売り込む「売り子」と考えるのではなく、戦略実行の最前線で敵(競合ならびに顧客)と接しながら最新の情報を収集して来てくれる「間諜」(諜報員)と考えるべきだと言うことだ。これは郵政、かんぽ生命に限らず、多くの企業の経営者が出来ていない点だが、営業担当者を号令をかけ、指示命令したら後は顧客を騙してでも、自腹を切ってでも、売って来る「売り子」だと考えていては、今回のかんぽ生命、一昔前の朝日ソーラーのような事態に陥る可能性がある。
 そうではなく、営業担当者は自社の戦略を実行する最前線にいる「間諜」なのだから、そこから正確な情報をタイムリーに受け取って、スピーディーに戦略修正をかけるべきだと考えなければならない。そんなことをかんぽ生命やゆうちょのような大組織の経営者が出来るわけないだろうと考えるのも間違いだ。今やITツールがあって、郵政グループも某社のSFAを入れているはずで、まともに使われていれば、現場の一商談までオフィスにいながらにして「見える化」出来るはずだ。
 孫子は、

『惟だ明主・賢将のみ、能く上智を以て間者と為して、必ず大功を成す。此れ兵の要にして、三軍の恃みて動く所なり。』

 と、用間篇で指摘している。「聡明な君主や優れた将軍だけが、智恵のある優秀な人物を間諜として用い、必ず偉大な功績を挙げることができる。この間諜の活用こそが戦争の要であり、全軍がそれを頼りに動く拠り所となるものである。」 と言うのだ。
 どれだけ兵力、戦力があろうと、それをどう動かすかを決定する時に必要なのは現場の正しい情報だ。それをもたらしてくれるのが間諜であり、だからこそ優秀な人材をそこに投入する。何しろ、その情報に基づいて全軍を動かすのだから。
 少なくとも日本国内は人口減少でマーケットは縮小している。余程新規性があって新たなマーケットを創出するような商品でもない限り、大きな新規売上、多くの新規開拓は見込めない。そこを何とかこじ開けて自社を成長させたいなら、緻密な戦略立案と木目細かい現場の情報収集によって仮説検証を繰り返す経営力が求められる。気合と根性の営業力で押し切ろうと考えるようでは経営者失格である。
 これで間違いなし!という戦略立案が難しい時代である以上、戦略は常に仮説に過ぎず検証と修正を繰り返すべきものであるという認識が企業経営者には求められる。その時に孫子兵法の間諜に相当する役割を果たすのが営業担当者であり接客する販売員である。間諜からの情報を大事にするのは孫子兵法の基本である。

定石を知っていてこそ応用も利く

2019-07-15

 今年は、8月3日4日に中小企業診断士の一次試験が行われる。中小企業診断士とは、中小企業診断協会のホームページの説明によると、「中小企業の経営課題に対応するための診断・助言を行う専門家です。法律上の国家資格として、「中小企業支援法」第11条に基づき、経済産業大臣が登録します。中小企業診断士制度は、中小企業者が適切な経営の診断及び経営に関する助言を受けるに当たり、経営の診断及び経営に関する助言を行う者の選定を容易にするため、経済産業大臣が一定のレベル以上の能力を持った者を登録するための制度です。中小企業基本法では、中小企業者が経営資源を確保するための業務に従事する者(公的支援事業に限らず、民間で活躍する経営コンサルタント)として位置づけられています。」というもので、一般に「経営コンサルタントを認定する唯一の国家資格」と言われる資格である。
 だが、実際には経営コンサルティング業務を行うに当たって、中小企業診断士資格の有無は問われないし、中小企業診断士の有資格者でなければ出来ない業務というものもない。だから、一般に経営コンサルティング会社では、この資格があろうとなかろうと大して問題にはならない。
 しかし、孫子兵法家である私が経営する、NIコンサルティングでは中小企業診断士の資格取得を奨励している。なんと、合格者には合格祝い金として、100万円を支給する。もちろん、通信教育や通学講座などの費用援助もしている。中小企業診断士資格などなくても仕事はできるし、資格があったら仕事ができるというものではないのだが、中小企業診断士の勉強を社員にはしてもらっている。
 なぜなら、定石を知っておいて欲しいから。定石通りにやっていては勝てない。だが、定石も知らなければ応用も利かない。プロとして経営コンサルタントを名乗るなら、企業経営の定石を知っている証として中小企業診断士の資格くらいは持っているべきだと思うからだ。もし、実力があってそんな資格など必要ない、という人がいたとしても、それだけの実力があるなら、2日間は使ってもらわないといけないが、中小企業診断士の一次試験くらいは軽く合格してその実力を証明してもらいたい。それも出来ないようなら、経営コンサルタントなんて名乗るなよと言いたい。
 孫子も、定石の大切さを教えている。少々長いが引用しよう。

『孫子曰く、地形には通ずる者有り、挂かる者有り、支るる者有り、隘き者有り、険しき者有り、遠き者有り。 我以て往く可く、彼も以て来たる可きは、通と曰う。通ずる形には、先に高陽に居り、糧道を利して以て戦えば、則ち利あり。以て往く可きも、以て返り難きは、挂と曰う。挂かる形には、敵に備え無ければ、出でて之に勝ち、敵に若し備え有れば、出づるも勝たず、以て返り難くして不利なり。我出づるも不利、彼の出づるも不利なるは、支と曰う。支るる形には、敵、我を利すると雖も、我は出づること無くして、引きて之を去り、敵をして半ば出で令めて之を撃つは利なり。隘き形には、我先に之に居らば、必ず之を盈たして以て敵を待て。若し敵先に之に居り、盈つれば而ち従うこと勿れ。盈たざれば而ち之に従え。険しき形には、我先に之に居らば、必ず高陽に居りて、以て敵を待て。若し敵先に之に居らば、引きて之を去り、従うこと勿れ。遠き形には、勢い均しければ以て戦いを挑み難く、戦えば而ち不利なり。 凡そ此の六者は、地の道なり。将の至任にして、察せざる可からざるなり。』

 具体的な内容はあまり意味がないので、軽く読み飛ばしても良いが、最後だけは重要なので、現代語訳を記す。こういう意味だ。 「孫子は言う。戦場の地形には、四方に通じ開けたものがあり、途中に障害があるものがあり、途中で枝道が分岐しているものがあり、狭隘なものがあり、起伏のある険しいものがあり、両軍の遠く離れているものがある。
 我が軍からも行き易く、敵軍からも来易い土地は、通じ開けたという意味で「通」と言う。このような地形では、敵よりも先に高地の日当りの良い場所を占拠し、兵糧補給の道を確保しておいてから戦えば、有利になる。進むのは容易であっても引き返すのが難しいような土地は、途中に引っ掛かりがある「挂」」と言う。こうした場所では、敵に備えがなければ進撃して勝つこともできるが、敵が防御の備えをしていれば、進撃しても勝つことが難しく、退却も難しいので不利となる。我が軍が進撃しても不利となり、敵軍が進撃してきても不利となる場所を枝道に分かれて分岐している「支」と言う。道が枝分かれしているような土地では、敵がエサを撒いてこちらを誘い出そうとしても、それに乗って進撃せず、一旦退いて分岐を避け、敵をその分岐に半数でも進んで来させてから攻撃するなら有利に戦うことができる。谷間の道幅が狭まったような土地では、こちらが先にそこを占拠していれば、自軍でその場を満たして敵軍が来るのを待ち受けるようにする。もし、敵軍が先にその場を占拠し、兵員で埋め尽くしているようであれば、そこに進んではならない。敵が先にいてもまだ兵力を密集させていなければ攻めても良い。起伏の激しい土地では、先に自軍が布陣しているなら、高地の日当りの良い場所を押さえて、敵を待ち受けよ。もし敵軍が先にその場所を占拠していた場合には、軍を退いて立ち去り、敵軍に攻めかかってはならない。双方の軍が遠く離れている場合に、軍勢、兵力が互角であれば、自軍から戦いを仕掛けるのは難しく、無理に戦いを仕掛けようとすると不利となる。
 これら6つのポイントは、地形についての原理原則である。こうした道理を知ることは、将軍の最も重要な責務であるから、充分に研究し考えておかなければならない。 」

 地形の原理原則を知っておけという教えである。将軍にとって最も重要な責務とまで言っている。これと同じことが、経営についても言えるのだ。原理原則や定石も知らない者が、思い付きや自分の経験知だけで人さまに指図したり指導してはならない。
 もちろん、孫子兵法家である私も中小企業診断士の資格を持っている。孫子の兵法を知っているだけでは、それを企業経営に応用することなど出来ないのだ。

ラジオで孫子のプロパガンダ

2019-05-16

 孫子の兵法には、間諜を用いる諜報(インテリジェンス)活動について述べた用間篇があることはご存知だろう。紀元前500年に、すでに戦争は情報戦だった。ネットがあり、ITがあるから情報が大切なのではなく、人が動く時には情報が必要となる。
 だから孫子は、

『惟だ明主・賢将のみ、能く上智を以て間者と為して、必ず大功を成す。此れ兵の要にして、三軍の恃みて動く所なり。』

 と説いた。優秀なリーダーだけが優秀な間諜を用いて大成功をもたらす。なぜなら、その間諜がもたらす情報に基づいて全軍を動かすからであり、その情報こそが戦争の帰趨を決する要となるのだと。
 もちろん、間諜の働きは情報収集だけではない。情報が大切であればこそ、敵に間違った情報を与えたり、味方に有利に事を運ぶために情報流布活動も行う。プロパガンダだ。
 自らの戦略意図を実現するために、必要な情報を内外に流すことがある。それを私はラジオで始めた。孫子兵法家として、孫子の兵法を現代のビジネスに応用、活用していただくという戦略意図を実現するためには、そもそも孫子の兵法をより多くの人に知っていただき、孫子の兵法が現代のビジネスにも応用できるよということを知らしめておきたい。
 そこで、文化放送の番組内の、「孫子の兵法に学ぶビジネス・ワンポイント」というコーナーで孫子兵法の流布活動を始めた。週一回のわずかな時間だが、これを機に孫子の兵法に触れ、孫子のビジネス活用について知っていただくことが出来たら良いと思う。
 孫子は、

『相守ること数年、以て一日の勝を争う。而るに爵禄百金を愛みて、敵の情を知らざる者は、不仁の至りなり。民の将に非ざるなり。主の佐に非ざるなり。勝の主に非ざるなり。』

 と、決戦の時に備えた諜報活動を軽視したりケチったりしたらリーダー失格だと厳しく指摘している。諜報活動にはコストや手間もかかるが、それを怠っていては結局、兵や人民に苦労をかけることになってしまい「不仁の至り」となる。孫子兵法をより多くの企業に知っていただく活動は、私だけでなくNIコンサルティング全体でも取り組んでいることであり、そのリーダーとして、私が情報流布活動を行い、彼らの戦いがより優位に進められるなら、それもまた孫子兵法の実践ということになるだろう。
 そのプロパガンダにラジオというメディアが有効なのかどうか、今のところまだよく分からないが、それも検証しつつ、孫子兵法をより多くの人に知っていただくキッカケになれば幸いだ。

属人性を排除せよ

2019-02-12

 なんと、読むのではなく「見るだけ」で孫子の兵法が理解できるという本が宝島社から出た。「見るだけノート」シリーズというのが宝島社のヒット企画らしく、売れていると言う。そのシリーズの孫子兵法版「ビジネスに使える! 孫子の兵法見るだけノート」という本だ。


 なんと、その監修者が、孫子兵法家、長尾一洋。私だ。ここでは、なぜこの本の監修が私のところに来たかということについて考えてみたい。実際の意図はよく分からないが、推察するに、本書が孫子をビジネスに応用することを提案する本だからだろう。孫子のビジネス応用、企業活用とくれば、孫子兵法家だ。
 孫子は、

『我は専りて一と為り、敵は分かれて十と為らば、是れ、十を以て其の一を攻むるなり。我寡なくして敵衆きも、能く寡を以て衆を撃つ者は、則ち吾が与に戦う所の者約なればなり。』

 と教えてくれている。自軍は、一点に兵力を集中させ、一方の敵軍は、分散して10隊に分かれたとすると、敵の10倍の兵力(敵が自軍の10分の1の兵力)をもって攻めることができる。我が軍の兵力が全体としては少なく、敵軍の方が多かったとしても、その小兵力で大兵力を打ち破ることができるのは、個々の戦闘において、兵力を集約させ、集中して敵に当たるからである、と言うのだ。
 孫子の兵法を解説する人は他にもたくさんいる。だが、そうした人たちは単に古典としての孫子を現代語訳したり、まさに戦争のための戦略として解説したりで、ビジネスに結び付くものでなかったり、孫子だけでなく論語や老子や韓非子なども解説したりして力が分散してしまっている。孫子のビジネス応用にフォーカスした人は私しかいないのだ。いや、知らないだけでいるかもしれないが少ないことは間違いない。だからこうした依頼が来る。戦わずして勝てる。
 そして、今回は執筆したわけではなく監修だ。書かなくて良い。楽チンだ。要するに、編集スタッフの力を借りて本が出来上がり、孫子の兵法を世に広めるという孫子兵法家の目的が果たされたことになる。
 孫子は、

『智将は務めて敵に食む。敵の一鍾を食むは、吾が二十鍾に当る。』

 と、敵のリソースを利用することを勧めている。敵地に遠征する際に、優れた将軍は、敵地での食料調達を考えるものだと言うのだ。敵の穀物を一鍾食べることは、自国から運んだ二十鍾に相当するくらい価値があると説いた。
 「ビジネスに使える! 孫子の兵法見るだけノート」の監修を引き受けるということは、他の孫子専門家(要するに孫子兵法家の敵)が、この本を監修する機会を奪うことでもある。自分のリソースはあまり使わずに本を出し、それによって敵が進出、侵攻してくるのを防ぐという意味もあるわけだ。そもそも、宝島社と言えば、私の「マンガでわかる! 孫子式 戦略思考」を出してくれている出版社だ。こちらはマンガだが、孫子の入門書という点では同じ分野と言える。競合する領域に他の孫子専門家を入り込ませてはいけない。
 だから孫子は、

『善く戦う者は、人を致して人に致されず。』

 と言うのだろう。戦上手は、敵を思うがままに動かして、決して自分が敵の思うままに動かされるようなことはしないものだと。
 だが、見方を変えれば、監修ということは、本書の編集チームに私の名前がうまく使われてしまったとも言えるわけで、孫子の兵法は奥深い。何しろ本書を作るには孫子の勉強もしないといけないから編集チームも孫子の使い手だ。さて、これはどちらが「人を致して」どちらが「人に致されている」のか・・・。ふふふ、「兵とは詭道なり」。

属人性を排除せよ

2018-11-29

 日本国内は、2019年4月に施行される「働き方改革」関連法の影響が出る前に、人手不足感が高まっている。今でも人が足りないのに、さらに休みを増やし、労働時間を減らしたらどうなるのか・・・。パート・アルバイトの比重が高い職場やそもそも社員数の少ない中小企業では人のやり繰りもできなくなるのではないかと心配していたら、外国人労働者の受け入れ拡大という話が出て来た。出入国管理法を改正し、数十万人規模の受け入れをしようとしている。
 目先の労働力確保を考えれば移民受け入れ、外国人労働者受け入れの拡大という手段が手っ取り早いが、日本人がやりたくない、キツくてヤスくて夜オソいような仕事を外国人にやってもらおうなどと言う手前勝手な受け入れは、将来必ず問題を生じさせると思う。日本の景気が良くて円の価値も高いなら、多少我慢して頑張ろうと思う人間もいるだろうが、同じ「人」が同じ国で目の前にいるのに、自分たちがやりたくない仕事を押し付けられていると感じたら暴れ出す人も出てくるだろう。その数がまとまれば大きな社会問題になることは必定だ。今でも技能実習生の待遇問題や失踪問題が解決できないのに、この枠を広げてうまく行くとは到底思えない。

 と、まぁここまでは、理想論というか、あるべき論というか、キレイ事であって、この現実の中で戦わなければならない孫子兵法家としては、四の五の言い訳を言っている場合ではない。人もいない、外国人も使わざるを得ない、働き方改革もやるしかない、という状況の中でどう戦うかを考えるしかない。ここでブログを書いていても人口が増えるわけでも、素敵な外国人ばかりが日本にやってくるようになるわけではないからだ。
 孫子は、

『善く戦う者は、之を勢に求め、人に責めず。故に能く人を択びて勢に任ず。勢に任ずる者の、其の人を戦わしむるや、木石を転ずるが如し。木石の性は、安ければ則ち静まり、危うければ則ち動き、方なれば則ち止まり、円なれば則ち行く。故に善く人を戦わしむるの勢い、円石を千仭の山に転ずるが如き者は、勢なり。』

 と言った。個々の人間を取り上げて、あいつが良い、あいつが悪いなどと人のせいにするのではなく、組織全体の勢いを作り出せと言うのだ。丸い岩が坂を転がり落ちるような勢いがあれば、四角い岩も枝の張った木も土石流に巻き込まれて大きな力を及ぼすことになる。
 そもそも日本人の採用も、企業規模が小さくなればなるほど非常に厳しい。求人を出しても応募もない。時給や給与を引き上げても大手の求人はそれ以上の条件だったりするから効果なし。そんなことをしていると既存のパート・アルバイトや社員の時給や給与も上げざるを得なくなる。滅多に応募もないから、面接も形だけのもので即採用だ。働きが悪くても、物覚えが悪くても、仕事が遅くても、いなくなっては困るから文句も言えない。厳しい指導をしてパワハラだ何だと言われたら余計に面倒だ。そんなことならいっそ外国人を雇おうという話になるわけだが、そんな職場にビックリするような優秀な外国人が来ることはないし、少なくとも日本語でのコミュニケーションには壁があって意思疎通も図りにくい。安く雇えるかと期待しても、現状では中間で紹介するブローカーのような人もいてトータルコストが下がるわけでもない。
 誤解があってはいけないので触れておくと、優秀な外国人労働者がいないわけではない。弊社にも中国人の社員がいるが、日本人と同じ日本語の試験を受け、日本人でもかなり低めの合格率なのに合格して、面接も普通に日本語で受けて入社してくれていて、条件も同一だ。多少イントネーションがおかしかったりするが、日本語でのコミュニケーションに全く問題はないし、彼らには中国語が話せるというアドバンテージまである。それは、日本人が雇えないから仕方なく外国人を求めた訳ではなく、普通に採用していた枠に外国人が応募して合格しただけのことだからだ。
 ともかく、これから人材の量はもちろん質の確保が難しくなり、外国人労働者など多様性も増す。ダイバーシティなどとカッコいいものではなく、混沌としたカオス状態に陥る職場もあるだろう。そして働き方改革だ。休日を増やし、時間を減らせと圧力がかかり、その中で付加価値を上げて行かなければならない。
 今こそ、仕事の属人性を排除し、IT化を進め、AIを導入し、ロボット(自動作業機もしくはRPA)も使えるものなら使って、誰がやっても、どこでやってもいいような組織作り、プロセス改善、業務標準化を進めるべきである。ITやAIの活用については、拙著「AIに振り回される社長 したたかに使う社長」(日経BP社)を参考にしていただけば良いが、角ばった岩も、枝の張った木も、まるで丸い岩や丸太のように転げ落ちるようにするには、組織の勢いを作り出す仕掛けが必要なのだ。

GAFAと孫子兵法

2018-10-03

 Google、Apple、Facebook、Amazon――すなわちGAFAと呼ばれるIT業界の四騎士について書かれた本を読んだ。ニューヨーク大学スターン経営大学院のスコット・ギャロウェイ教授による本だ。

  GAFA

 話題になっているので読まれた方もいるだろう。GAFAがいかに世界を支配し、彼らは何をしようとしているのか、それに対して一般庶民はどうすべきかが書かれている。本書だけでなく、日経新聞を読んでいれば毎日のようにこのGAFAについて、またGAFAの中のそれぞれの会社についての記事を読むことになる。私は特にAmazonに興味があるから、Amazonについて書かれた本は結構読んでいたりする。GAFAが何を考えているのかを孫子兵法家として研究しているのだ。
 孫子は、

『用兵の法は、十なれば則ち之を囲む。五なれば則ち之を攻む。倍すれば則ち之を分かつ。敵すれば則ち能く之と戦う。少なければ則ち能く之を逃る。若かざれば則ち能く之を避く。故に、小敵の堅なるは大敵の擒なり。』

 と、説いている。戦うためには、まず敵と味方の兵力差を把握しなければならない。おいおい、GAFAと戦う気なのか?気は確かか?と突っ込まれそうだが、もちろん「若かざれば則ち能く之を避く」ことも有りであり、GAFAがナンボのもんじゃい!と無鉄砲に突撃しないように「小敵の堅なるは大敵の擒なり」という孫子の警告も忘れてはならない。
 だが、孫子兵法家たる者、そう易々と尻尾を巻いて逃げるようなことはしない。相手が如何に強大であろうとも、戦いようはあるからだ。それを導くのもまた孫子の兵法である。
 孫子は、

『上兵は謀を伐つ。其の次は交を伐つ。其の次は兵を伐つ。其の下は城を攻む。城を攻むるの法は已むを得ざるが為なり。』

 と、教えてくれている。最上の戦い方は、敵の謀略、策謀を読んで無力化することだと。そのためにはまずGAFAの謀略、戦略、思考を知らなければならない。間違ってもGAFAの城を攻めるようなことをしてはならない。GAFAが得意とし、強みとしている本丸に竹やりを持って突撃するようなことはしない。
 そして孫子は、戦わずして勝つ道もことを教えてくれている。

『百戦百勝は、善の善なる者に非るなり。戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり。』

 スコット・ギャロウェイも書いているが、強大なGAFAとて永遠ではない。すでにFacebookあたりは綻びを見せ始めている。スコット・ギャロウェイはAppleへの評価が高いようだが、そのAppleも一時は潰れかかっていたくらいだ。たしかにその危機を乗り切って、スティーブ・ジョブズがすでにいないという点で弱みが少ないというのは当たっているかもしれない。
 私は孫子兵法家として、Amazonを一番警戒しているが、警戒すると同時に、『智将は務めて敵に食む』 べく、AmazonのサービスはAWSなどかなり利用している。
 さて、貴社でも、GAFAと戦うか逃げるかを孫子の兵法に照らして考えてみてはいかがだろうか。

孫子兵法でパワハラを考える

2018-09-03

 体操、レスリング、ボクシング、バドミントン・・・と枚挙に暇がないほどスポーツの世界でパワハラが報道されている。急に増えたわけではなく、むしろ体罰などは以前と比べて減っているだろうから、表沙汰にする、もしくは表沙汰になる数が増えているのだろう。指導者側の保身のために選手を陥れるかのような所業は論外だが、選手のことを思うが故につい指導が行き過ぎ、言葉も荒くなってしまうことはあるのではないかと思ったりもする。
 それと同じことはビジネスの世界でも起こっているし、それで萎縮してしまって本来必要な部下指導も忌避しようとする上司が目につくのは残念なことだ。
 問題は、指導された本人が「愛のムチ」と受け止めるか「理不尽なパワハラ」と受け止めるかということだが、同じ言動でも、指導者と選手、上司と部下との関係性で意味合いが変わってくるところが難しい。
 実は、こうした点でも、孫子の教えが参考になる。孫子は行軍篇で、

『諄諄間間として、徐に人に言る者は、衆を失うなり。数々賞する者は、窘しむなり。数々罰する者は、困るるなり。先に暴にして後に其の衆を畏るる者は、不精の至りなり。』

 と指摘している。
 「上官が優しく丁寧な口調で兵士に話しかけているのは、上官への信頼を失い、兵士たちの心が離れてしまっているからである。頻繁に褒賞を与えるのは、士気の低下に苦しんで行き詰っているのである。やたらに懲罰を与えるのは、兵士が疲れて命令に従わなくなっているのである。はじめは、粗暴に扱っておきながら、後になって兵士たちの離反や反抗を恐れているようでは、部下を使う配慮がないことこの上ない。」という意味だ。
 ここで面白いのは、優しく丁寧に部下に接したり褒めたりするのは、部下から上司への信頼の欠如の現れであり、上司が部下に罰を与えるのは、部下が上司の言うことを聞かないことへの上司側の焦りや恐れがあるからだという指摘だ。
 選手や部下に優しく接しているから良いわけではなく、ただ遠慮して言うべきことを言えなくなっているだけだとしたら何の意味もない。パワハラだと言われるのを恐れて、指導すべきことを指導できないなら、選手や部下の側にもマイナスだ。
 選手や部下が言うことを聞かないからと感情的になって言葉で脅し、場合によっては体罰を下すような指導者も何だか情けない。自分の感情をコントロールできず、暴言を吐いたりしておいて、後になって訴えられるのではないかとビビっているようでは話にならない。
 要は、表面的な言動よりもそもそもの関係性、信頼関係が出来ているのかどうかが重要なのであって、教科書的に「パワハラNGワード」などを覚えて、それを避けるだけといったテクニカルな対応では、それもまた見透かされて逆効果ということになるだろう。
 だから孫子は、こうも言っている。

『卒、未だ親附せざるに、而も之を罰すれば、則ち服せず。服せざれば則ち用い難きなり。卒、已に親附せるに、而も罰行われざれば、則ち用う可からざるなり。故に、之を合するに文を以てし、之を斉うるに武を以てす。是を必取と謂う。』

 「兵士たちがまだ将軍に対して親しみや忠誠心を持ってもいないのに、彼らを罰したりすれば、将軍の命令に従わなくなる。心服して命令に従ってくれなければ軍隊を統率することはできない。反対に、兵士たちが既に将軍に対して心服しているのに、厳正な処罰が行われないようであれば、軍隊としての用をなさない。だから、兵士たちの心をまとめるのに、思いやりをもって交わり、厳正な規律をもって接していくことが必要である。これを目標必達の方法と言うのだ。」という意味である。
 信頼関係もなく、指導者や上司に対して心服してもないのに、厳しい指導をしてしまってはパワハラ確定だ。だが、選手や部下が信頼して指導を求めてくれているのに、耳の痛い、シビアな指摘も出来ないようでは、やはり本物の指導者とは言えない。
 普段からの関係性が重要なわけだが、その時は関係が良くて受け入れていても、後に関係が崩れてしまって、遡って、「あの時も・・・」とやられる可能性もあるので、指導者や上司は気をつけておかなければならない。それなら「やっぱり、何も言わない方が良い」と考えてしまいそうになるが、2500年前の孫子の時代からこうした指摘があるということは、人を動かすためには避けて通れない課題だと腹をくくるしかないだろう。
 人の上に立ち、組織を動かす立場になったら、孫子の兵法を学ぼう。

2018-08-06

 FIFAワールドカップ2018ロシア大会が終わって1ヶ月が過ぎたが、遅ればせながら孫子兵法家として、日本代表の戦いっぷりについて触れておかないわけにはいかない。この間、西日本豪雨(平成30年7月豪雨)があったり、あまりに暑い日が続いて夏バテ気味だったりして、テンションが下がっていたのだが、8月に入ったことだし、気合を入れ直して行きたいと思う。
 さて、W杯ロシア大会の日本代表だが、なんと言っても直前の監督交代で、西野監督が急ごしらえの西野ジャパンをどう戦わせるのか、代表選考も含め興味深かった。「ビッグ3」と呼ばれる本田圭佑、香川真司、岡崎慎司を招集したことで「おっさんジャパン」という批判も受けたが、やはり大舞台での安定感、途中交代でも存在感を示せたのは良かったのではないか。
 そして、孫子兵法的に押さえておきたいのが、そのハリルホジッチの下では代表から外されそうになっていたベテランたちが「やるしかない」「西野監督の期待に応えるしかない」「この批判を覆してみせる」と覚悟を決めたであろうという点だ。結果として、グループリーグで最もFIFAランキングが低く、直前のゴタゴタもあって3戦全敗だろうという予想を覆し、1勝1敗1分で決勝トーナメント進出を勝ち取った。
 細かいゲーム内容は、1ヶ月も前のことなので置いておくとして、孫子兵法的にもう一点、3戦目のポーランド戦で0-1で負けていながらボールを回して時間を稼ぎをしたことの意味を考えたい。ここでの本当の負けは、予選リーグで敗退することだ。要するに、西野ジャパンは「(無理に)戦わずして勝った(決勝トーナメントに進んだ)」。敵はすべて格上であり、孫子の兵法を単純に当てはめれば、戦ってはならない。それではW杯に出るなということになるので、出場した以上は戦うしかないわけだが、無用な戦いをする必要はないし、予選リーグでは全勝を目指す必要もない。
 どうしても日本では「正々堂々と戦うべきだ」「負けてもいいから潔く」といった意見が優勢になるが、高校生の部活動ではあるまいし、「全力を尽くしたのだからそれでいい」なんて無責任なことは言っていられない。恰好悪くても、潔くなくても、目先では負けていても、決勝トーナメントに進むという勝利を得るにはどうするかをシビアに考えるべきである。西野監督は批判されることも覚悟の上で、時間稼ぎを指示したはずだ。
 案の定、批判された。だが、この批判も決勝トーナメントのベルギー戦で「やるしかない」と開き直るパワーとして利用できたのではないかと考える。「時間稼ぎまでして決勝トーナメントに残ったのだから、日本代表はそれに見合った力を持っていたと世界に示さなければならない」「卑怯なままで終わればただの卑怯者だが、そこで結果を残せばそれも一つの戦い方だったとなるだろう」という意識をチームにもたらしたということだ。
 孫子は、

『凡そ客たるの道は、深く入れば則ち専らにして、主人克たず。饒野に掠むれば、三軍も食に足る。謹み養いて労すること勿く、気を併わせ力を積み、兵を運らして計謀し、測る可からざるを為し、之を往く所無きに投ずれば、死すとも且つ北げず。死焉んぞ得ざらんや、士人力を尽くす。兵士は甚だしく陥れば則ち懼れず、往く所無ければ則ち固く、深く入れば則ち拘し、已むを得ざれば則ち闘う。』

 と説いた。背水の陣の元となった教えである。「敵国に侵攻する場合、敵地に深く入り込むほど自軍は結束して強化され、防衛する側は対抗できなくなる。肥沃な土地を掠奪すれば、全軍の食糧確保も充分となる。そこで兵士たちに配慮して休養を与え無駄な労力を使わせないようにし、士気を高めて戦力を蓄え、軍を移動させながら策謀を巡らせ、敵にも味方にもこちらの意図をつかめないようにしておいて、どこにも行き場のない状況に兵を投入すれば、死んでも敗走することはない。これでどうして死にもの狂いの覚悟が得られないことがあるだろうか。士卒はともに決死の覚悟で力を尽くすことになる。兵士たちは、あまりにも危険な状況に陥ると、もはや恐れなくなり、行き場がなくなれば覚悟も固まり、深く入り込めば手を取り合い一致団結し、戦うしかないとなれば、奮戦するものなのだ。」という意味だ。
 あれこれ考えていても仕方ない、ここまで来たら戦って勝つしかないという状況に兵士を追い込む。それが将軍(監督)の役割である。ここまで意識してポーランド戦での時間稼ぎを指示していたとしたら、西野監督はなかなかの孫子の使い手である。
 結果はご存知のように、あのベルギーを2点リードするところまで追い詰めながら、悔しい逆転負け。最後は地力の違いを見せつけられた感があったが、途中までは互角どころか、リードしていたくらいだから良く戦ったと言えるだろう。
 次の代表監督に決まった森保監督にも、孫子の兵法をしっかり研究しておいてもらいたい。格下の日本が格上の敵に勝つには、背水の陣で「やるしかない」状況に選手を追い込むしかないのだ。

重版決定!!感謝!

2018-06-04

 前回、孫子関連本の第8作として、「AIに振り回される社長 したたかに使う社長」(日経BP社)の発刊をご紹介したが、書店に並び始めてからおよそ3週間で重版(増刷)が決定した。これも偏に、孫子兵法家を応援してくださる皆様のおかげです。厚く御礼申し上げます。
 おかげさまで、本書を読んだ方から、講演のご依頼が来たり、寄稿のご依頼が来たりしているので、内容的にも御評価いただけているかと・・・。
 とはいえ、まだまだお読みいただいていない方も多いでしょうから、まだの方は是非、お近くの書店かネット書店で。表紙はこういうデザインです。

AIに振り回される社長 したたかに使う社長

 しかし、重版が決まったからと言って、喜んでばかりはいられない。これだけ毎日のようにAIだ、IoTだ、ロボットだ、自動運転だと新聞記事やテレビのニュースで騒がれているわけだから、重版しなかったら困るくらいであって、もっと売れても良いはずだ。「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」なんてすごく売れている。やはり戦いは相対的なもので、敵と味方の両方をつかんでおく必要がある。
 孫子の定番、

『彼を知り己を知らば、百戦殆うからず。彼を知らずして己を知らば、一勝一負す。彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず殆うし。』

である。己の本が重版されたというだけで手放しで喜んでいては、「彼を知らずして己を知る」程度の話であって、一勝一負がせいぜいだ。
 さらに、

『彼を知り己を知らば、勝、乃ち殆うからず。地を知り天を知らば、勝、乃ち全うす可しと。』

を考えておかなければならない。敵と味方の相対比較だけではなく、地を知り天を知ることが必要になる。地とは競合とのポジショニング、天とは時流、トレンドだ。AIやIoTなど最新テクノロジーについてのトレンドは共通でも、それぞれの本のポジショニングが違う。当然、孫子兵法家の本は、企業経営に孫子兵法を応用するものであり、他のAI関連本と一緒にされては困る。だが、それがうまく伝わっているかどうか・・・。読んでくれたら分かるだろうが、読む前に分からなければそもそも読んでもらえない。
 反対に、これはAI関連本ではありません、他のAI本とは違うと言い過ぎても、今度はAIの時流にうまく乗れなくなる。「なんだよ、孫子かよ。最新の話が知りたいのに紀元前の話をするなよ」と言われてしまっては、これまた読んでもらえない。
 そこで、「歴史と古典に学ぶ最新テクノロジーの活かし方」というタイトルのセミナーを行うことにした。特別講師として、歴史小説家として有名な伊東潤先生をお招きし、基調講演「戦国と幕末のイノベーター 織田信長と鍋島閑叟」をお願いした。
 なぜ歴史や古典と最新のテクノロジーの話がつながるのかということが、このセミナーで解き明かされることになるだろう。日本IBMをはじめ外資系IT企業で最新テクノロジーを扱った経験を持つ歴史小説家、伊東潤先生だからこそ語れるテクノロジー活用の本質論だ。
 織田信長は言うまでもなく、鍋島閑叟(なべしまかんそう)の話にもご期待いただきたい。鍋島閑叟は、肥前佐賀藩主鍋島家の10代目。殖産興業や軍備の強化につとめ、公武合体を推進した維新の立役者の一人である。伊東先生の講演内容は、
 戦国武将は新しいテクノロジーをどう活かしたか
 長篠合戦の真相
 信長の夢と光秀の見ていた現実
 本能寺の変の真相(初公開最新説)
 幕末のイノベーター 鍋島閑叟
 IBMでの経験から言えること  他
となっている。
 もちろん、第二部では、孫子兵法家、長尾一洋がお話しさせていただく。歴史や古典から最新テクノロジーにどう向き合えば良いのかを学べる貴重な時間となるはずだ。乞うご期待。

AIも孫子兵法?

2018-04-23

 これも孫子兵法家による孫子本である。孫子の兵法を21世紀の企業経営に応用する。これが孫子兵法家のミッションであり役割なのだが、まさにそれ。そのための本が、「AIに振り回される社長 したたかに使う社長」(日経BP社)である。本のタイトルに孫子とは書いてないじゃないか、孫子がAIなんて語るわけないだろ、と突っ込みたい人もいるだろうが、文句は本書を読んでから言ってもらいたい。読めば分かる。
 もちろん、紀元前500年にいくら孫子がすごくてもAIについて直接語っているわけではない。だが、AIやIoTを活用して実現すべき「フィードフォワード」については間違いなく語っていて、2500年前の孫子の言葉をそのまま現代の企業経営に当てはめたら「フィードフォワード経営」になったと言っても過言ではない。「本当かな?」と思う人は、是非読んでみて欲しい。
 表紙はこんな感じだ。

AIに振り回される社長 したたかに使う社長

 ちょっとタイトルは長い気がするが、装丁のデザインはなかなか気に入っている。AIやIoT、ビッグデータなどに翻弄され振り回される社長や企業と、それらの最新テクノロジーをしたたかに使いこなす社長や企業との対比が本書のコンセプトだ。それをよく表した表紙になっているのではないだろうか。
 書名には孫子は入っていないが、第6章では直接、孫子兵法についても触れている。紛れもなく、「孫子の兵法で勝つ仕事えらび!!」(集英社)に続く、孫子兵法家、長尾一洋による孫子関連本の第8作である。
 孫子は、

『明主・賢将の動きて人に勝ち、成功の衆に出づる所以の者は「先知」なり。』

 と説いた。先に知り、先に情報をつかむことが成功の秘訣なのだ。
 そして、

『未だ戦わずして廟算するに、勝つ者は算を得ること多きなり。未だ戦わずして廟算するに、勝たざる者は算を得ること少なきなり。算多きは勝ち、算少なきは勝たず。』

 と、事前に「廟算」すべきであると教えてくれている。これを先に知り先に考える「先知先考管理」と呼ぶ。さらにそれによって先手を打つ。

『勝兵は先ず勝ちて而る後に戦いを求め、敗兵は先ず戦いて而る後に勝を求む。』

 というわけだ。こうした孫子の兵法を現代の企業経営に当てはめると「フィードフォワード経営」となり、それを実践する最新の武器がAIやIoTということになるのだ。
 死んだ兵士や滅んだ国は生き返ることはない。済んだこと、過ぎ去った過去を振り返って「フィードバック」しても時すでに遅し。そうではなくこれから先の戦いに備えて先手を打つ「フィードフォワード」が必要なのであり、命がけの戦いを制する孫子の兵法の真髄なのだ。是非、本書をお読みいただきたい。

宮原知子と孫子兵法

2018-03-05

 平昌五輪の女子フィギュアスケートで4位入賞した宮原知子選手は、孫子の兵法を愛読しているという。1998年生まれの若い女性が孫子を愛読しているとは!! 孫子兵法家としては大変嬉しいことである。
 だが、孫子の兵法をフィギュアに活かしているなら、オリンピックでメダルくらい獲れよと突っ込みたくなる人もいるだろう。4位だったということは孫子の兵法に価値がないのではないかと疑いたくなる人もいるかもしれない。
 だが、そもそも孫子の兵法は戦争の書であって、フィギュアスケートの書ではないのだから、孫子の兵法を読んだからと言ってオリンピックでメダルを獲らないとおかしいなどと突っ込む方がおかしい。4位と言っても学校で4位なのでも、県大会で4位なのでもない。世界の4位だ。素晴らしい成績だ。
 おまけにショートプログラムもフリーも自己ベスト。日本の歴代最高得点をマーク。銀メダリストの浅田真央選手よりも、金メダリストの荒川静香選手よりも、得点は上ということを忘れてはならない。失礼ながら小柄で華はないが、ニックネームは「ミス・パーフェクト」。ミスがなくて確実。すなわち守りが堅いスケートである。
 孫子は、

『昔の善く戦う者は、先ず勝つ可からざるを為して、以て敵の勝つ可きを待つ。勝つ可からざるは己に在り、勝つ可きは敵に在り。』

 戦いに巧みな者は、まず敵が自軍を攻撃しても勝てないようにしておいてから、敵が弱点を露呈し、自軍が攻撃すれば勝てるようになるのを待ち受けたものである。負けないようにすることは自分自身によってできることだが、自軍が敵に勝つかどうかは敵軍によって決まることであると言うのだ。
 ミスをして自滅してはいけない。予定した演技を確実にこなす。それを宮原選手は初のオリンピックでやり切って自己ベスト、日本歴代最高記録を叩き出した。そこまでは自分自身でできる。しかし、それで勝つかどうかは敵次第。今回は彗星の如く現れたアリーナ・ザギトワの出来が良すぎた。
 そこで孫子は続けて、

『能く勝つ可からざるを為すも、敵をして勝つ可からしむること能わず。故に曰く、勝は知る可くして、為す可からずと。』

敵にやられないように(ミスしないように)は出来ても、敵に負けさせるように(ミスさせるように)は出来ない。こちらがどれだけ完璧であっても、敵がそれ以上であれば、勝てないことがあると言うのだ。
 実は、宮原選手の戦い方は、孫子の兵法そのものだった。ライバルと自分との力を見極め、自分の力をパーフェクトに出し切った。ザギトワがいなければ銅メダルだったし、さらにケイトリン・オズモンドがミスしていれば、メドベージェワがいても銀だった。
 オリンピックだからメダルを獲らなければならないと気負って、ミスしてしまっては孫子の兵法を学んだ価値はなかったが、彼女は孫子の教え通り、勝ちに行かずに負けない戦いをした。
 孫子は、

『善く戦う者は、不敗の地に立ちて、敵の敗を失わざるなり。』

 と言って、負けない態勢をとっておいて、敵のミスを見逃すなと説いた。まさに宮原選手の戦い方である。今回の平昌は、敵がアッパレだった。その勢いに飲まれずに初のオリンピックで負けない戦いが出来た宮原選手は、孫子の兵法の使い手と言ってよいだろう。4位入賞おめでとう。さすが孫子の兵法を学んだだけのことはある。

千里なるも戦うべし

2018-01-30

 先日、ロボットが接客をするという「変なホテル」に泊まった。「初めてロボットがスタッフとして働いたホテル」として、ギネスにも登録されたというから、どんなに凄いのかと期待が膨らみ過ぎたのがいけなかったかもしれない・・・。
 こんな感じで、恐竜ロボットに出迎えられた。



 フロントにも恐竜ロボットがいて、多言語対応してくれるそうだ。外国人には良いのかもしれないが、日本語を話す人間にはあまりメリットなし。などと、「変なホテル」にケチをつけたいわけではない。むしろこうしたチャレンジングな取り組みを称賛したい。
 AIだ、ロボットだ、と言っても面白がる人ばかりではないだろうし、クレームも結構あるだろう。だが、近い将来、遅くとも10年、20年先にはこうしたロボットホテルが受け容れられるだろうし、必要とされるだろうと考えて取り組んでおられるのだろう。さすがHIS。今からやっておくからノウハウも貯まるだろうし、ロボット技術を持った人たちも集まって来るだろう。
 孫子は、

『戦いの地を知り、戦いの日を知らば、千里なるも戦うべし。戦いの地を知らず、戦いの日を知らざれば、左は右を救うこと能わず、右は左を救うこと能わず、前は後を救うこと能わず、後は前を救うこと能わず。』

 と説いた。戦闘地点も分かっており、戦闘開始の時期も分かっているなら、それが千里も離れた遠方であっても主導権を持って戦うことができる。千里なるも戦うべし。AIやロボット領域が戦場であり、時期としては5年から10年後、となったら多少先のことにはなるけれども、主導、先行してその戦場に向けて出発すべしだ。HISとしては、実績もノウハウもある旅行、宿泊、観光という領域とも絡む戦場だ。自社の強みも活かせて、時流にも乗っていける戦場を先回りして確保している感じだろう。
 それがビジョンとして示され、社内でコンセンサスを得ているから、今は苦労があっても、社員、スタッフがついてくる。まさに、孫子の兵法をビジネスで実践していると言える事例だ。ご苦労もあるだろうが、ホテルも増やしているようだし、是非頑張っていただきたい。
 孫子兵法家である私も負けずに、長期ビジョンを持ってチャレンジングに取り組んでいかねばと改めて思った。千里なるも戦うべし。

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