孫子の兵法

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孫子×DX DXの成果を実感させよ

2024-02-26

 DXは企業の存亡を左右する分岐点であり、避けて通ることはできない。しかし、デジタル人材もいない中小企業がDXに取り組む際には、経営者をはじめ、社員全員がデジタル活用に対して半信半疑であり、「うちの会社でDXなんてできるのか?」と不安に思っているものである。
そこで、孫子「作戦篇」に入る。
<作 戦 篇>
 『其の戦いを用うるや、勝つことを貴ぶ。久しければ則ち兵を鈍らせ鋭を挫く。城を攻むれば則ち力屈き、久しく師を暴さば、則ち国用足らず。』
◆現代語訳
 「戦争を遂行する際の一番の目的は勝つことであり、戦争を長期化させてしまうと軍を疲弊させ鋭気を挫くことになる。敵の本拠である城塞を攻めるようなことになれば、戦力を消耗させてしまうことになるし、長期間の戦争行動は国家財政の破綻を招くものとなる。」
◆孫子DX解釈
⇒ただデジタル化、ペーパーレス化を進めれば良いのではない。自社の競争優位を高め、勝たなければならない。長期プロジェクトでコストを浪費するのではなくまずは短期決戦でコストを抑え成果を上げよ。

 DXは、「製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」だから、単発のシステム導入やクラウド活用で、一朝一夕に実現するものではない。競争優位を確立するのはもちろん、企業文化や風土まで変えようと言うのだから、3年や5年かかってもおかしくない、企業変革の取り組みである。
 だがそれは、始皇帝が中華統一したり、信長、秀吉、家康とバトンリレーして江戸幕藩体制ができたり、といった一連のプロセス全体を捉えたものだと考えるべきだろう。プロセス全体を見れば、当然長期戦になるけれども、そこに至るまでに桶狭間があり、長篠があり、中国大返しからの天王山があり、関ケ原があったように、いくつかの戦いを積み重ねることになる。ここで孫子は、長期戦にしてはいけないと説く。
 DXに取り組む緒戦は、小さくてもいいので成功(勝ち)を社員に実感させるようにすべきである。DXという未だ全体像がつかめない、どうなるか分からない大目標だけを掲げて取り組んでいては、いつまで経っても戦いが終わらないことになリ、現場ではいつまで戦えばいいのかと厭戦ムードも高まって来る。
 まず、社員の多くが「DX、いいじゃないか」「なかなか便利じゃないか」「案外楽ちんになるな」と実感できるように小さな成功を目指すべし。織田軍が桶狭間の戦いで勝利して勢いづいたように。
 緒戦で勝利するために大切なことは、全員にIDを付与することである。全国民にマイナンバーを割り振るように、社員全員に識別情報を持たせる。全員がIDを持っているから社内業務をデジタルで処理できる。ここをケチって、IDを使い回しさせたりするから、デジタル化の効果が半減して業務効率も大して上がらない。
 高速道路のETCを考えてみれば誰しも納得するはずだ。すべてのクルマがETCを着けていれば有人の料金所は必要なくなる。すでに非ETC車は全体の7%以下である。たった7%のアナログ処理のために、レーンを分け、人を置いているわけだ。これと同様のことが社内で起こると考えれば良い。
 そして、「分散入力・即時処理」の仕組みにする。今やスマホも安価になって、ビジネスの現場にいるほとんどの人が持っているのだから、情報の入力を現場の個々人にやってもらう。その途端に処理は完了。これがデジタルの力だ。
 しかし、多くの中小企業が、システムを導入しても、特定の人や部署にアナログデータを一旦集めてから一括入力させているので、処理に時間もかかり、入力担当部署に負担がかかって、デジタル化の恩恵が得にくい。データをExcelやメールで送ったりするのでデジタル化しているような気分になっている人が多いが、やっていることはアナログだ。これは紙での処理プロセスをそのまま残しながらデジタル化しようとするから起こる。そうではなく、デジタルを前提にして、これまでの処理プロセスを見直すことが肝心だ。
 IDを全員に付与して、「分散入力・即時処理」ができたら、社内に「処理が速くなった」「案外簡単だね」「決裁が速くなって助かる」と言った実感が広がる。これで満足してはいけないが、小成功だ。
 そこに加えて、これまで郵送していたものをデジタル配信に変えてみるのも効果が実感できる取り組みだ。どこの会社でもあるのが請求書の配信。請求書を郵送するためには、郵便料金や封筒などの費用がかかり、三つ折りにして封入するなどの作業も必要となる。郵便料金も上がっているから一通あたり120円から150円くらいにはなるだろう。それをWEB配信にすると、件数にもよるがコストはおよそ半分から1/3にできる。もちろん人の手間も減り、さらには出社する必要性も減るから、テレワークなどにも対応できるようになる。もちろん、請求書を受け取る顧客側も出社せずに処理が可能となる。
 これで目に見えてコストも下がるから、社内には、「DX、いいね」「コストがかかるのではなくコストが下がるなら文句はない」と言った声が広がるだろう。これがDXだとは言えないが、小成功だ。天下は獲っていないが桶狭間での勝利で士気が高まった状態だ。
 こうして、小さな勝利を積み重ねることが天下を獲る(DX)のためには必要だ。小さな成功で、社内をその気にさせよう。

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