孫子の兵法

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孫子×DX 彼を知り己を知るDX

2024-04-22

 前回、DXを成功に導くための5つの条件を示したが、その5つの条件を成立させる土台となるのが、情報力・諜報力である。そこで、謀攻篇の最後は孫子の兵法において最も有名な一節で締められている。
 情報がなければ意思決定もできず、戦いようもない。情報があってこそ5つの条件が整っているのかどうかも分かる。その情報を伝える媒体が人であっても、旗や狼煙であっても、デジタルであっても関係ない。要は、正しい情報が、適切なタイミングで、適切な人に届くかどうかが問題なのだ。デジタルを使えばそれでDXになると考えてしまうのは、強力な武器さえあれば敵に勝てると考えるのに等しい。武器も必要だが、大切なことはその使い方、使うタイミング、使う相手であって、武器そのもので勝敗が決するわけではない。
情報を操る武器を使って何をするのか。彼を知り己を知るのだ。孫子はこう言った。

<謀 攻 篇>
 『彼を知り己を知らば、百戦殆うからず。彼を知らずして己を知らば、一勝一負す。彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず殆うし。』
◆現代語訳
 「相手(敵軍)の実情や実態を知って自己(自軍)の状況や実態をも知っていれば、百度戦っても危険な状態に陥ることにはならない。相手(敵軍)の実情を把握せずに自己(自軍)の実情だけを知っているという状況であれば、勝ったり負けたりが五分五分である。相手(敵軍)のことも知らず、自己(自軍)のことも知らないようでは、戦うたびに必ず危険に陥る。」
◆孫子DX解釈
⇒競合のことも自社の力量もよく見極めて戦いに臨むこと。DXは単なるデジタル化、効率化ではなく戦いである。

 戦うにせよ、戦いを避けるにせよ、まず必要なことは敵の戦力やその動向をつかむことだ。そして自軍の戦力や展開状況を把握しておく。それによって戦うべきなのか、避けるべきなのか、どう戦うのか、どう逃げれば良いのかといったことが判断できる。だから、百戦殆うからず。情報があるからと言って百戦百勝になるわけではないが、少なくとも百戦殆うからずとなる。孫子のこの一節を知るだけでも、DXが必須であることは理解いただけるだろう。要は情報をどうつかむかという話なのだ。呼び方はDXでもITでも何でも良い。
 そして、彼を知り己を知るためにまず取り組むべきは「営業DX」であることを知っておきたい。自社の最前線に立つ営業(販売)担当者は、現代の間諜であり、そこからの情報が素早く的確に適切な人に届く仕組みが必要であり、国王や将軍(経営者やマネージャー)からの指示もまた素早く的確に適切な営業(販売)担当者に届く必要がある。
 営業(販売)担当者を単に顧客に自社商品を売り込む人だと考えてはならない。顧客(マーケット)の動きや生の声を収集してくれる諜報員なのだ。この前提に立って「営業DX」を進めると、顧客ニーズを起点とした自社のビジネスモデル変革や戦略の見直しができるようになる。そしてその顧客情報を元に、自社内の業務効率を上げるDXを進め、仕入や生産といった商品力・サービス力を上げるDXを進めるべきなのだ。
 営業部門でデジタル活用しようとすると、どうしても営業担当者にデジタルツールを持たせる情報武装を考えてしまう人や企業が多いが、それはただ武器を持たせているだけで、武器をどう使うかが問題であり、そのツールで営業担当者を管理するようなことばかり考えていては戦うための武器になっていない。せっかく情報武装したのであれば、営業担当者の管理ばかりにその武器を使うのではなく、営業担当者がマーケットで戦う時に支援したり、顧客(マーケット)の情報を収集することに武器を使うことを考えるべきである。それがあってこそ、営業(販売)担当者も武器を使いこなそうと思うようになるし、その武器を使った顧客(マーケット)へのプロパガンダも適切に行えるようになる。
 営業部門のデジタル化は、「営業の見える化」ではなく「顧客の見える化」であること、営業DXを進めることで全社のDXが進み、自社の戦略の見直しまで進むことについては、拙著「売上増の無限ループを実現する営業DX」に書いているのでそちらも参考にしていただきたい。

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