孫子の兵法

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孫子×DX 情報共有と情報伝達

2024-05-27

 ここから、孫子兵法の勢篇に入る。DX推進プロジェクトを加速させ勢いを増していこう。
 DXに関与する人や部門も増えて来る。プロジェクトチームメンバーだけではなく全社に拡げて行かなければならない。
 関与する人が増え、部門を横断して全社に拡がれば拡がるほど必要になるのが、情報共有と情報伝達だ。孫子はこう教えてくれている。

<勢 篇>
 『衆を闘わしむること寡を闘わしむるが如くするは、形名是なり。』
◆現代語訳
 「大部隊を戦闘させるのに、小部隊を戦闘させているかのうように統制がとれるのは、旗を立てたり、鉦を鳴らしたり、太鼓を叩くなど、合図や通信、情報伝達がうまくいっているからである。」
◆孫子DX解釈
⇒組織を動かすには、合図や通信、情報伝達が重要である。その手段が、孫子の時代は旗や太鼓だったが今はデジタルである。

 組織を動かすには、まず情報が共有されて組織の全員が共通認識を持っていなければならない。自分たちは何者で、今どこにいて、どこを目指しているのかといったことが共有されていないと、各人がバラバラな動きをすることになり、組織は崩壊する。
 情報共有ができたとすると、次に動き出すタイミングを知る(知らせる)情報伝達が必要となる。いつ攻撃を開始するのか、どのタイミングで退却するのかといったことが分からないと、組織の力を結集できない。いくら大勢の人がいたとしても、力を出すタイミングがズレたらその力は半減してしまう。複数人が一緒に重い物を持ち上げる時には「せーの」とか「1,2の3」といった掛け声をかけて力を入れるタイミングを合わせるが、それと同じである。
 この情報共有や情報伝達の手段、道具が、孫子の時代には旗や幟、狼煙、鉦や太鼓だったわけだが、現代のビジネスではそれらがデジタルツールになっただけのことである。手段や道具に囚われてはならない。大事なことはその本質であり目的である。
 デジタル化、DXの推進に反対する人には、旗や幟、鉦や太鼓で仕事の指示をすることを想像してもらうといいだろう。部署毎に旗を立てて座る位置を示し、始業の合図は太鼓を鳴らす。電話がかかって来たら鉦を鳴らして取り次ぐ。狭いオフィスで、少ない人数ならできなくはないだろうが、オフィスが仕切られたり、階が異なったり、拠点が離れたりしたら、もう使えないだろう。狭いオフィスでも同時に複数の電話がかかって来たりしたら、あっちで鉦が鳴り、こっちでも鉦が鳴って、何が何やら分からなくなるだろう。
 現代のビジネスにおいて、デジタル活用は必須である。なぜなら情報共有や情報伝達が組織には不可欠だから。戦いに勝つためには、その時代、時代において最高、最強の武器を使うべきなのは、爆撃機の空爆に竹槍で立ち向かったかつての日本を考えれば誰もが理解できることだろう。
 情報共有や情報伝達にデジタルを使うようになると、人数が多くても、オフィスが仕切られていても、複数階に分かれていても、拠点が離れていても情報共有や情報伝達が可能になるということである。
 それによって、働き方や事業運営の可能性も拡がる。分かりやすい例が、テレワークだろう。アナログなツールしかなかった時には、仕事をするには出社するしかなかった。会議も同じ場所で顔を合わせて行うしかなかった。しかし、デジタルツールがあれば家であろうと外出先であろうとどこであろうと必要な情報が共有でき、タイムリーに情報伝達ができる。
 在宅勤務ができるなら、拠点が離れていても何の支障もないことになり、国外でも良いことになる。そして自社だけに限らず、他社とも同じように情報共有や情報伝達が可能となる。他社であっても自社と同じように情報共有でき、情報伝達ができるなら、企業間の協業・協調行動もより進化するだろう。それを前提としてビジネスモデルを組むことができるようになる。
 ここまで言えば分かるだろう。
 単なるデジタルツールの導入ではなく、働き方を変え、ビジネスモデルを変える。これがDXである。だが、何のことはない。孫子の教えを現代に応用しただけの話なのだ。

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