孫子の兵法

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情報やデータを活かさないのは不仁

2022-02-01

 新型コロナウイルスによるパンデミックが起こってからもう丸2年が過ぎているのに、相変わらず、人流抑制、外出自粛、接触回避を唱え、飲食店の営業を制限し続けているのは、いかがなものかと思う。このブログでもコロナ禍について何度か取り上げて来たが、最初は未知のウイルスが出現して、とりあえず接触を避ける、経済を止めてでも感染拡大を防ぐという対応も仕方なかっただろう。しかし、この2年間、世界中で知見が溜まり、治験が進み、データが集まり、症例が報告されて来たはずだ。「これさえ打てば日常に戻れる」と太鼓判を押していたワクチン接種も進んだではないか。感染拡大の波もすでに第6波だ。ウイルスは変異によって感染力が上がっても弱毒化していることは明らかだし、過去5回の波からいろいろと学んだこともあるだろう。
 にもかかわらず、結局やっているのは、営業自粛、テレワーク推奨、県外への移動制限・・・。そして、それに伴う巨額の補償。毎度、同じことの繰り返し・・・。
 国民を守るためにと言いながら、経済活動にダメージを与えつつ、膨大な支出を続けて、本当に国民のためになるのだろうか。甚だ疑問である。
 孫子は、戦争における膨大な出費と国民の疲弊に対してリーダーがどう向き合うべきかを説いている。

『孫子曰く、凡そ師を興すこと十万、師を出だすこと千里なれば、百姓の費、公家の奉、日に千金を費やし、内外騒動して、道路に怠れ、事を操るを得ざる者、七十万家。相守ること数年、以て一日の勝を争う。而るに爵禄百金を愛みて、敵の情を知らざる者は、不仁の至りなり。民の将に非ざるなり。主の佐に非ざるなり。勝の主に非ざるなり。』

 孫子が言うには、およそ10万の兵を集め、千里もの距離を遠征させるとなれば、民衆の出費や国による戦費は、一日にして千金をも費やすほどになり、官民挙げての騒ぎとなって、補給路の確保と使役に消耗し、農事に専念できない家が七十万戸にも達する。こうした中で数年にも及ぶ持久戦によって戦費を浪費しながら、勝敗を決する最後の一日に備えることがある。(数年にも及ぶ戦争準備が、たった一日の決戦によって成否を分ける)にもかかわらず、間諜に褒賞や地位を与えることを惜しんで、敵の動きをつかもうとしない者は、兵士や人民に対する思いやりに欠けており、リーダー失格だと言うのだ。そんなことではとても人民を率いる将軍とは言えず、君主の補佐役とも言えず、勝利の主体者ともなり得ないぞ、と。
 ここで大切なことは、数年に及ぶ緊急事態による国民の苦労と多大な出費を止めるためには、情報やデータが必要だということだ。そのために間諜を使う。今のコロナ禍においては感染症の専門家や厚労省だと考えれば良いだろう。だが、この専門家が機能していない。2年間の知見が活かされていない。仮に専門家が正しい提言をしているなら、それを活かさないのはやはりリーダーの責任だ。適切な専門家を使い、正しい判断をしなければならない。それが出来なければ、国民や現場で戦う兵士に多大な犠牲を強いることになる。まさに今のコロナ禍だ。
 そんなことが2500年前にもあったのだろう。孫子は続けてこう言った。

『故に明主・賢将の動きて人に勝ち、成功の衆に出づる所以の者は先知なり。先知なる者は、鬼神に取る可からず。事に象る可からず。度に験す可からず。必ず人に取りて敵の情を知る者なり。』

 優れたリーダーが勝利を収めるのは、如何に早く正確な情報を掴むかという「先知」ができているからだと。それは、鬼神に頼ったりして実現できるものではなく、祈祷や過去の経験で知ることができるものでもなく、天体の動きや自然の法則によってつかむわけでもない。必ず人間が直接動いて情報をつかむことによってのみ獲得できるものだと、孫子は教えてくれている。
 祈ったり、お願いしたり、現場の頑張りや国民の忍耐に頼るのではなく、プロを使って、正しい情報やデータを掴むべきである。リーダーは、それを活かして合理的に判断すべきなのであって、過去の踏襲や選挙のための人気取りや世間の空気に流されるようでは、結局そのツケを国民に払わせることになる。国民に対する「不仁の至り」である。
 そんなことは分かった上で、裏に狙いや陰謀があって敢えてやっているのかもしれないが、それはそれでまた「不仁の至り」だろう。データに基づかない情緒的な判断や人の恐怖心に訴える煽り誘導は、そろそろ終わりにしていただきたい。

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