孫子の兵法

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孫子×DX 孫子の要諦とは

2024-02-05

 孫子は、紀元前500年、中国春秋時代に呉の闔閭に仕えた兵法家、孫武によって著された最古にして最高の兵法書と言われる。2500年もの間、洋の東西を問わず、軍事だけでなく組織運営や企業経営においても指南書・参考書として読み継がれ、評価され続けて来たわけだから、時代を超えた珠玉の教えであることは間違いない。
 そんな珠玉の智恵を活用しない手はないだろう。
 しかし、ただ古典として現代語訳を読んで分かった気になるだけでは意味がない。それを応用し、実践に活かしてこそ価値がある。孫子兵法家である私の役割は、孫子兵法を企業経営に応用し、多くの人に分かりやすく紹介することだ。今回は、「孫子×DX」というテーマで、DXに活かす方法をお伝えする。DXは企業経営の一部だから、当然孫子兵法家の範疇に入るわけだ。敢えてDXに活かそうと考えるのには訳がある。それは孫子の要諦は何なのかを考えれば自ずと行き着くものである。
孫子13篇をどう読み解き、どういう視点でその要諦を引き出そうとするかによって、違うポイントを抽出することもできるのだが、私が孫子兵法家として、孫子の要諦を3つ挙げるとこうなる。

<戦わずして勝つ>
『百戦百勝は、善の善なる者に非るなり。戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり。』
 孫子の神髄と言っても良いのが、兵法なのに、戦わないことを勧めている点だ。戦争がなければ、兵法家の出番もないのに、戦わずに国益を得ることを第一に考えた。そういう意味では兵法というよりも帝王学に近いと言えるだろう。国を保全し、兵や国民を保持することを最優先させている。
 そして次に、

<勝てる戦いしかしない>
『未だ戦わずして廟算するに、勝つ者は算を得ること多きなり。算多きは勝ち、算少なきは勝たず。』
『彼を知り己を知らば、百戦殆うからず。』
 戦いを避けようとしていても、どうしても戦わなければならない事態となることもある。その場合であっても、勝てる戦しかしない。戦う前に勝敗を予想し、勝てる道筋が描けてはじめて戦いを始める。敵味方の兵力差を把握し、勝ち目がないと分かったら逃げる。もしくは近づかない。だから「百戦殆うからず」となる。「百戦百勝」ではないのだ。
 だからこそ3つ目に、

<そのためには情報が必要>
『惟だ明主・賢将のみ、能く上智を以て間者と為して、必ず大功を成す。此れ兵の要にして、三軍の恃みて動く所なり。』
 戦って勝つには兵力、戦力が重要となるが、事前に戦わないようにし、戦うにしても勝てる時しか戦わないためには、それを判断するための情報が必要となる。そういう意味では、この3つの要諦は一体となっていて孫子の根底にある基本の考え方であるとも言える。
孫子は情報を重視した。だから13篇の中に「用間篇」という間諜のための篇を設けた。間諜とはスパイのことだが、これは現代に置き換えれば情報のことだ。紀元前には、情報は間諜がもたらすものだった。間諜をどう使うかが情報戦略だったわけだ。群雄割拠の戦国時代において戦わずに勝つためには各国がどういう状況でその国王が何を考えているのかを知る情報力が必要だった。勝てる戦しかしないためには、敵の兵力や陣形、将軍の力量などを事前につかむ情報力が必要だった。その情報力、すなわち間諜力があってこそ、孫子の兵法は成り立つ。これが孫子の要諦である。
 それを現代の企業経営に応用すれば、DXが必須であり、急務であることが分かるだろう。孫子が今いれば、必ず「DXを急ぐように」、「情報力を強化するように」と、企業経営者に進言するはずである。それが「孫子×DX」である。
 次回はいよいよ、「計篇」に入る。

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