孫子の兵法

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経営は企業の大事なり

2021-01-19

 2020年は結局一年ずっと新型コロナ騒ぎだった。2021年になって気分一新!と行きたかったが、未だにコロナ禍が続いていて、緊急事態宣言もいつまで続くか先が見えない。他国と比べて感染者数も死亡者数も桁違いに低い日本で外出自粛と言うのだから、世界中から人を集めるオリンピックは今年もやはり出来ないのではないか。早々に中止と言えない大人の事情もあるのだろうが、それをアテにしている人や企業もあるだろうから、早めにアナウンスしてあげてもらいたい。
 こうした緊急事態、非常事態の時こそ、経営力というか経営者の力量が問われる。先が見えているなら誰でも先頭を歩ける。だが、先が見えない時にフォロワーを率いて先頭を歩くには相応の力が必要だ。非常時の典型例は戦争だ。戦争と言えば兵法。兵法と言えば孫子。やはりこういう時は孫子の兵法に学ぶべきである。
 孫子は、

『孫子曰く、兵は国の大事なり。死生の地、存亡の道、察せざる可からざるなり。故に、之を経るに五事を以てし、之を校ぶるに計を以てして、其の情を索む。』

 と、孫子兵法の冒頭で述べている。ここで言う「兵」とは戦争のことだが、これを「経営」と置き換えてみると良い。「経営は企業にとってその存亡を左右する重要事項であって、徹底して研究し考え抜くべきものである。その経営においては『五事七計』が重要となり、しっかり現状をつかむ情報力が必要である。」といった感じだ。
 同じ緊急事態でも、同じ戦時下でも、同じ不況下においても、経営者次第、経営次第で、企業の存亡は分かれる。不況になったらすべての企業が潰れるわけではない。コロナ禍で飲食店が苦境に陥っていると言ってもすべての飲食店が潰れるわけではない。経営次第、リーダー次第で勝ち残る企業と消え去る企業とに分かれるのだ。
 ここで有名な「五事七計」が出てくるが、企業経営を考える時に大切なのは「五事」である。「五事」に絞って考えてみよう。
 孫子は「五事」をこう説明した。

『一に曰く道、二に曰く天、三に曰く地、四に曰く将、五に曰く法。道とは、民をして上と意を同じくせしむる者なり。故に之と死すべく、之と生く可くして、民は詭わざるなり。天とは、陰陽、寒暑、時制なり。地とは、遠近、険易、広狭、死生なり。将とは、智、信、仁、勇、厳なり。法とは、曲制、官道、主用なり。凡そ此の五者は、将は聞かざること莫きも、之を知る者は勝ち、知らざる者は勝たず。』

 「五事」とは勝敗を左右する5つのポイントだが、その5つとは、「道」「天」「地」「将」「法」である。ここで差がつくとも言えるし、この5つのポイントを整備し強化すれば良いとも言える。順に説明しよう。
 道とは、民衆の気持ちを国王・将軍の意思に合致させる思想・理念・道理であり、これによって民衆全てが生死を共にする覚悟を持ち、国王・将軍の意向、命令に疑念を抱かなくなるというものだ。企業経営で言えば理念やミッションと考えれば良い。この緊急時・非常時に自社が存続する、生き残る、勝ち抜く意味は何か。そもそも存続に意義があるのか、を示せなければならない。それがなければ顧客も従業員もついて来てくれないだろう。「こんな会社潰れても仕方ないな、どうせなくなっても誰も困らないしな」で終わり。
 天とは、陰陽すなわち天地自然の理、季節の変化、寒暖の差であり、その変化への対応が適切であること。経営で言えば、時流、トレンド、タイミングの見極めである。冬になって気温と湿度が下がればウイルスの感染力が高まるのは自然の摂理であって、予め分かっていたことなのだから、そんなことで慌ててバタバタしているようではダメに決まっている。より重要なのは、このコロナパンデミックにより、顧客の購買行動や生活様式、働き方やビジネス手法がどう変化して行くかという流れを読むことだろう。コロナが収まってもウイルスはゼロにならないし、人々の動きも元には戻らないかもしれない。そうした時に自社はどうあるべきか、どう変化すべきかを考えられなければならない。
 地とは、地理的遠近、地形が険しいか易しいか、戦場の広狭、生死を分かつ地理的条件のことを指す。ビジネスにおいては競争環境、競合ポジショニングと考えれば良い。自社の置かれた状況は戦いに有利なのか、同業者が倒れていけば残存者利益があり逆にチャンスかもしれないといったことを考えてみよう。企業の競争は常に相対的なものだ。完璧でなくても、他社よりも相対的に上回っていれば勝てる。非常時には、どこで戦うかという戦場の選択(事業ドメイン)も重要となる。
 将とは、まさにリーダーのこと。リーダーの条件は、「智、信、仁、勇、厳」である。物事の本質を見抜く智、部下からの信頼、部下を慈しみ育てる仁の心、信念を貫く勇、軍律を徹底させる厳しさがあるかどうか。戦時下を乗り切るには勇気もいるし、時に厳しさも必要だろう。コロナ禍の緊急事態において非情な選択をせざるを得ないこともあるだろう。その時にも部下から信頼され納得してもらえるかどうか、リーダーの力量が問われている。
 法とは、組織編制、人事、兵站確保などの管理能力をいう。紀元前の組織でも、21世紀の組織でも、人の本質は変わらず、人事は重要である。どういう組織を作り、どういう規律を徹底させるか、リーダーの腕の見せ所である。兵站の確保は、資金調達と考えても良いだろう。非常時に精神論だけを振りかざして綺麗事を言いながら、肝心な金もないようでは誰も相手にしなくなる。
 この5つのポイント「五事」は、人の上に立つリーダーであれば、誰でも聞いたことがあり、知っていることだが、本当に理解して実践する者は勝ち、分かったつもりになって本当には理解していないようでは負けることになると孫子は説いた。
 2021年は始まったばかりだが、コロナ禍の緊急事態だ。年初に改めて自社の経営、経営者としての自分を振り返り、冷静に見て、この難局をどう乗り切るか考えてみていただきたい。

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