孫子の兵法

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定石を知っていてこそ応用も利く

2019-7-15

 今年は、8月3日4日に中小企業診断士の一次試験が行われる。中小企業診断士とは、中小企業診断協会のホームページの説明によると、「中小企業の経営課題に対応するための診断・助言を行う専門家です。法律上の国家資格として、「中小企業支援法」第11条に基づき、経済産業大臣が登録します。中小企業診断士制度は、中小企業者が適切な経営の診断及び経営に関する助言を受けるに当たり、経営の診断及び経営に関する助言を行う者の選定を容易にするため、経済産業大臣が一定のレベル以上の能力を持った者を登録するための制度です。中小企業基本法では、中小企業者が経営資源を確保するための業務に従事する者(公的支援事業に限らず、民間で活躍する経営コンサルタント)として位置づけられています。」というもので、一般に「経営コンサルタントを認定する唯一の国家資格」と言われる資格である。
 だが、実際には経営コンサルティング業務を行うに当たって、中小企業診断士資格の有無は問われないし、中小企業診断士の有資格者でなければ出来ない業務というものもない。だから、一般に経営コンサルティング会社では、この資格があろうとなかろうと大して問題にはならない。
 しかし、孫子兵法家である私が経営する、NIコンサルティングでは中小企業診断士の資格取得を奨励している。なんと、合格者には合格祝い金として、100万円を支給する。もちろん、通信教育や通学講座などの費用援助もしている。中小企業診断士資格などなくても仕事はできるし、資格があったら仕事ができるというものではないのだが、中小企業診断士の勉強を社員にはしてもらっている。
 なぜなら、定石を知っておいて欲しいから。定石通りにやっていては勝てない。だが、定石も知らなければ応用も利かない。プロとして経営コンサルタントを名乗るなら、企業経営の定石を知っている証として中小企業診断士の資格くらいは持っているべきだと思うからだ。もし、実力があってそんな資格など必要ない、という人がいたとしても、それだけの実力があるなら、2日間は使ってもらわないといけないが、中小企業診断士の一次試験くらいは軽く合格してその実力を証明してもらいたい。それも出来ないようなら、経営コンサルタントなんて名乗るなよと言いたい。
 孫子も、定石の大切さを教えている。少々長いが引用しよう。

『孫子曰く、地形には通ずる者有り、挂かる者有り、支るる者有り、隘き者有り、険しき者有り、遠き者有り。 我以て往く可く、彼も以て来たる可きは、通と曰う。通ずる形には、先に高陽に居り、糧道を利して以て戦えば、則ち利あり。以て往く可きも、以て返り難きは、挂と曰う。挂かる形には、敵に備え無ければ、出でて之に勝ち、敵に若し備え有れば、出づるも勝たず、以て返り難くして不利なり。我出づるも不利、彼の出づるも不利なるは、支と曰う。支るる形には、敵、我を利すると雖も、我は出づること無くして、引きて之を去り、敵をして半ば出で令めて之を撃つは利なり。隘き形には、我先に之に居らば、必ず之を盈たして以て敵を待て。若し敵先に之に居り、盈つれば而ち従うこと勿れ。盈たざれば而ち之に従え。険しき形には、我先に之に居らば、必ず高陽に居りて、以て敵を待て。若し敵先に之に居らば、引きて之を去り、従うこと勿れ。遠き形には、勢い均しければ以て戦いを挑み難く、戦えば而ち不利なり。 凡そ此の六者は、地の道なり。将の至任にして、察せざる可からざるなり。』

 具体的な内容はあまり意味がないので、軽く読み飛ばしても良いが、最後だけは重要なので、現代語訳を記す。こういう意味だ。 「孫子は言う。戦場の地形には、四方に通じ開けたものがあり、途中に障害があるものがあり、途中で枝道が分岐しているものがあり、狭隘なものがあり、起伏のある険しいものがあり、両軍の遠く離れているものがある。
 我が軍からも行き易く、敵軍からも来易い土地は、通じ開けたという意味で「通」と言う。このような地形では、敵よりも先に高地の日当りの良い場所を占拠し、兵糧補給の道を確保しておいてから戦えば、有利になる。進むのは容易であっても引き返すのが難しいような土地は、途中に引っ掛かりがある「挂」」と言う。こうした場所では、敵に備えがなければ進撃して勝つこともできるが、敵が防御の備えをしていれば、進撃しても勝つことが難しく、退却も難しいので不利となる。我が軍が進撃しても不利となり、敵軍が進撃してきても不利となる場所を枝道に分かれて分岐している「支」と言う。道が枝分かれしているような土地では、敵がエサを撒いてこちらを誘い出そうとしても、それに乗って進撃せず、一旦退いて分岐を避け、敵をその分岐に半数でも進んで来させてから攻撃するなら有利に戦うことができる。谷間の道幅が狭まったような土地では、こちらが先にそこを占拠していれば、自軍でその場を満たして敵軍が来るのを待ち受けるようにする。もし、敵軍が先にその場を占拠し、兵員で埋め尽くしているようであれば、そこに進んではならない。敵が先にいてもまだ兵力を密集させていなければ攻めても良い。起伏の激しい土地では、先に自軍が布陣しているなら、高地の日当りの良い場所を押さえて、敵を待ち受けよ。もし敵軍が先にその場所を占拠していた場合には、軍を退いて立ち去り、敵軍に攻めかかってはならない。双方の軍が遠く離れている場合に、軍勢、兵力が互角であれば、自軍から戦いを仕掛けるのは難しく、無理に戦いを仕掛けようとすると不利となる。
 これら6つのポイントは、地形についての原理原則である。こうした道理を知ることは、将軍の最も重要な責務であるから、充分に研究し考えておかなければならない。 」

 地形の原理原則を知っておけという教えである。将軍にとって最も重要な責務とまで言っている。これと同じことが、経営についても言えるのだ。原理原則や定石も知らない者が、思い付きや自分の経験知だけで人さまに指図したり指導してはならない。
 もちろん、孫子兵法家である私も中小企業診断士の資格を持っている。孫子の兵法を知っているだけでは、それを企業経営に応用することなど出来ないのだ。

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