孫子の兵法

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コロナウイルスとの戦い

2020-04-17

 新型コロナウイルスの感染がパンデミックとなり、世界中の経済活動も市民生活も停滞してしまっている。日本では緊急事態宣言が出て、外出自粛が叫ばれ、企業には休業か在宅のテレワークが求められている。直接的に休業を求められている業種はもとより、そうではない業種、業態であっても、この自粛・制限措置は回りまわって大きなマイナスをもたらすだろう。経営者は、嫌でも目に見えないウイルスとの戦いに挑まなければならない。
 さて、このこれまでに経験のない戦いにどう臨んだものか。
 孫子は、

『彼を知り己を知らば、百戦殆うからず。彼を知らずして己を知らば、一勝一負す。彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず殆うし。』

 有名な一節なので、解説の必要もないだろう。まず、目に見えない敵と戦うには、この敵のことを知ることだ。新型とはいえ、このコロナウイルスは感染拡大が始まってからすでに4ヶ月が経過していて、世界中のデータもある。このウイルスがどこでどう生まれたかは諸説あり、信じたくもないような話も多く、真相を知ることは出来ないが、そのウイルスによってもたらされているデータ、結果、研究成果は知ることが出来る。私は孫子兵法家であって、感染症やウイルスの専門家ではないので、ここに私の判断は書かないが、世間一般にテレビなどで言われているようなものとは違う判断をしている。様々な意見があり研究者も色々なので何を信じてどう判断するかは自分で考えるしかない。
 彼を知ったら、次に己を知ろう。果たして自社はこのコロナウイルスとの戦いに勝てるだけの戦力・体力があるかどうか。国や都道府県の指示や命令、また支援策によってどういう影響を受けるかを冷静に考えなければならない。
 孫子は、

『用兵の法は、十なれば則ち之を囲む。五なれば則ち之を攻む。倍すれば則ち之を分かつ。敵すれば則ち能く之と戦う。少なければ則ち能く之を逃る。若かざれば則ち能く之を避く。故に、小敵の堅なるは大敵の擒なり。』

 と言った。目に見えない新型コロナウイルスを十倍の力で封じ込めるだけの力がある企業はないだろうから、ここで考えておくべきは、場合によっては、逃げる、避ける、撤退、退却の判断も必要となるということだ。「ウイルスになんか負けないぞ」「コロナビールを飲んでアルコール消毒だ」などと根拠のない精神論で戦いを挑んではならない。小敵の堅なるは大敵の擒なりである。
 ウイルス感染がいつ収束するか、どういう状態になったら緊急事態宣言を解除するのか、見通せない。コロナウイルスそのものよりも、この時期が不確定という驚異が経営的には怖い。緊急事態宣言が仮に連休明けに解除となっても、ウイルスが完全にゼロになる終息にはならない。そうすると、人の動き、客の動きが変わって、商売として成り立たなくなる企業もあるだろうし、従来の業態のままでは存続できなくなるケースもあるだろう。一ヶ月耐えていれば元通りになるというなら良いがそうではないから、国や都がくれるという100万200万程度の一時金では焼け石に水だろう。
 コロナウイルスの感染ペースが低調になった後も、自社のビジネスの回復が見込めない場合には、無理して延命させずに早めに見切って撤退すべし。廃業も已む無し。従業員も会社都合の解雇になって失業保険がすぐに出る。どこかのタクシー会社が、「全員一旦解雇して、客足が戻ったら雇い直す」と約束して解雇したという話もあったが、それは失業保険詐欺だからダメ。それをやって良いのは、本当に廃業、撤退を決断した場合のみ。これを決断せずに、国の補助がどうなるのか、都道府県の救済策はどうなのかと、人からの支援をアテにしてズルズルと決断を遅らせてしまうと良くない。
 孫子は、

『先に戦地に処りて、敵を待つ者は佚し、後れて戦地に処りて戦いに趨く者は労す。故に善く戦う者は、人を致して人に致されず。』

 と教えてくれている。国や自治体に振り回されるのではなく、自分で考えて先回りせよ。それによって、人を致して人に致されずという状態にする。「国が~」「県が、都が~」「総理が~」「知事が~」と叫んでいても、助けてなどくれない。国や都道府県の言う通りにやっていたら必ず助かるというなら良いがそうではないだろう。要請や指示には出来る限り従うべきだが、生き残るかどうかの最後の一線は自分の頭で考えて線引きしなければならない。後になって「国のせいで~」「県のせいで、都のせいで~」「総理のせいで~」「知事のせいで~」と恨み言を言っても何にもならない。
 もちろん、コロナ騒動が長引いて、来年、再来年とウイルス感染が続いたとしても、生き残れるだけの体力、戦力、資金力があるという企業もあるだろう。だが、このウイルス感染の影響は広く遍く及ぶことになる。今はまだ影響を受けていなくても、広範囲に廃業、失業、倒産、失踪・・・・・が広がると必ず影響を受けることになるはずだ。ここは慎重に行きたい。
 孫子は、

『兵は多きを益ありとするに非ざるなり。惟だ武進すること無く、力を併せて敵を料らば、以て人を取るに足らんのみ。夫れ惟だ慮り無くして敵を易る者は、必ず人に擒にせらる。』

 とも教えてくれている。「戦争においては、兵員が多ければ良いというものではない。兵力を過信して猛進するようなことをせず、戦力を集中させ、敵情を読んで戦えば、敵を屈服させるに充分である。そもそも彼我の戦力分析もせずよく考えもしないで敵を侮り軽はずみに動くようでは、敵の捕虜にされるのが落ちである。」という教えだ。
 目に見えない敵を侮るべからず。ウイルス感染して肺炎になるよりも、目に見えない空気が、人の心や経済や社会生活を圧し潰すことになるのが怖い。
 これまでにない戦いだけに、孫子の兵法を活かしつつ、慎重に、油断せず、シビアに、経営判断をしていただきたい。

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