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宮原知子と孫子兵法

2018-03-05

 平昌五輪の女子フィギュアスケートで4位入賞した宮原知子選手は、孫子の兵法を愛読しているという。1998年生まれの若い女性が孫子を愛読しているとは!! 孫子兵法家としては大変嬉しいことである。
 だが、孫子の兵法をフィギュアに活かしているなら、オリンピックでメダルくらい獲れよと突っ込みたくなる人もいるだろう。4位だったということは孫子の兵法に価値がないのではないかと疑いたくなる人もいるかもしれない。
 だが、そもそも孫子の兵法は戦争の書であって、フィギュアスケートの書ではないのだから、孫子の兵法を読んだからと言ってオリンピックでメダルを獲らないとおかしいなどと突っ込む方がおかしい。4位と言っても学校で4位なのでも、県大会で4位なのでもない。世界の4位だ。素晴らしい成績だ。
 おまけにショートプログラムもフリーも自己ベスト。日本の歴代最高得点をマーク。銀メダリストの浅田真央選手よりも、金メダリストの荒川静香選手よりも、得点は上ということを忘れてはならない。失礼ながら小柄で華はないが、ニックネームは「ミス・パーフェクト」。ミスがなくて確実。すなわち守りが堅いスケートである。
 孫子は、

『昔の善く戦う者は、先ず勝つ可からざるを為して、以て敵の勝つ可きを待つ。勝つ可からざるは己に在り、勝つ可きは敵に在り。』

 戦いに巧みな者は、まず敵が自軍を攻撃しても勝てないようにしておいてから、敵が弱点を露呈し、自軍が攻撃すれば勝てるようになるのを待ち受けたものである。負けないようにすることは自分自身によってできることだが、自軍が敵に勝つかどうかは敵軍によって決まることであると言うのだ。
 ミスをして自滅してはいけない。予定した演技を確実にこなす。それを宮原選手は初のオリンピックでやり切って自己ベスト、日本歴代最高記録を叩き出した。そこまでは自分自身でできる。しかし、それで勝つかどうかは敵次第。今回は彗星の如く現れたアリーナ・ザギトワの出来が良すぎた。
 そこで孫子は続けて、

『能く勝つ可からざるを為すも、敵をして勝つ可からしむること能わず。故に曰く、勝は知る可くして、為す可からずと。』

敵にやられないように(ミスしないように)は出来ても、敵に負けさせるように(ミスさせるように)は出来ない。こちらがどれだけ完璧であっても、敵がそれ以上であれば、勝てないことがあると言うのだ。
 実は、宮原選手の戦い方は、孫子の兵法そのものだった。ライバルと自分との力を見極め、自分の力をパーフェクトに出し切った。ザギトワがいなければ銅メダルだったし、さらにケイトリン・オズモンドがミスしていれば、メドベージェワがいても銀だった。
 オリンピックだからメダルを獲らなければならないと気負って、ミスしてしまっては孫子の兵法を学んだ価値はなかったが、彼女は孫子の教え通り、勝ちに行かずに負けない戦いをした。
 孫子は、

『善く戦う者は、不敗の地に立ちて、敵の敗を失わざるなり。』

 と言って、負けない態勢をとっておいて、敵のミスを見逃すなと説いた。まさに宮原選手の戦い方である。今回の平昌は、敵がアッパレだった。その勢いに飲まれずに初のオリンピックで負けない戦いが出来た宮原選手は、孫子の兵法の使い手と言ってよいだろう。4位入賞おめでとう。さすが孫子の兵法を学んだだけのことはある。

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